ワザップ!フォーラム
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第二十章 ケットシー達の作戦
テントの隙間から差し込むわずかな光を感じ、ライト達は目を覚ました。
「おはよう、ライト!」
「……おはよう。」
ライトはあくびをしながら、コメットと一緒にテントの外へ出た。
「おはようございますニャ!」
「昨日はリオンを助けてくださってありがとうですニャ!」
ライトが外に出ると同時に、2匹のケットシーが岩影から飛び出してきた。リオンと呼ばれた1匹は、昨日の黒いケットシー。もう一匹はトラ柄の者だった。
「昨日は本当に感謝ですニャ。こちらはティガー。昨日、ワーウルフ王国に忍び込んだ仲間ですニャ。」
リオンが言うと、ティガーはかるく頭をさげた。
「よろしくですニャ。」
「僕はコメット。そしてこっちはライト。よろしくね!」
コメットは、ライトの肩の上に乗りながら言った。
「ところで、何か用でも?」
「そうですニャ。実は仲間が1匹帰ってきていないんですニャ。逃げ遅れて捕まってるんだと思いますニャ……。だけど僕達が様子を見に、ワーウルフ王国に行けば、絶対に捕まっちゃうですニャ。だから……」
リオンはそこで話を止め、ティガーと目を合わせた後、
「お願いします! 力を貸してほしいんですニャ!」
声を揃えてそう言った。
「ワーウルフ王国に行って、仲間の様子をさりげなく見てきてほしいニャ! 大丈夫ですニャ。ワーウルフは人間の事は警戒していないんだニャ!」
「仲間の名前はジャガーだニャ! お願いしますニャ。頼れるのはライトさんだけですニャ!」
リオンとティガーは交互に言う。ここまで頼まれると、さすがに断ることも出来ない。
「まぁ少し協力するくらいなら……。」
「やったぁ!お願いしますニャ!」
リオンとティガーは手を叩きあって喜んでいた。
「皆に知らせてこよう!」
「そうだね! 一回街に戻ろうニャ!」
「でも、具体的に俺は何をすれば……」
リオンとティガーはすでに街に向かって走り出しており、ライトの声は2匹には届かなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「協力するとは言ったけど、なんか不安だなぁ……。何すればいいか分からないし。」
荒れ地を歩きながら、ライトは呟くように言った。
「あんなにお願いされちゃ、断れないもんね。」
「あぁ……。それにしても、ワーウルフって、すごく凶暴なイメージがあるんだが……本当に大丈夫なのか?」
もちろん実物を見たのは昨日が初めてなのだが、物語などで目にするワーウルフというのは、人を襲う獰猛な人獣の場合が多い。
「きっと大丈夫だと思うよ。ワーウルフ一族に街の作り方を教えたのは、昔の人間なんだって。だから、ワーウルフは人間の事を慕ってるって聞いたことがあるよ。」
コメットは言った。その言葉で、ライトは少し安心した。しかし、ワーウフルの王国は、少し離れたこの場所から見てもずいぶん大きく、そして立派な町並みだ。おそらく、海辺のあの村の人達より、こちらのワーウルフ達の方がいい暮らしをしているだろう。人間の上を行く技術力をワーウルフ達が持っていると考えると、やはり少し恐ろしくなる。
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第二十一章 潜入
城壁の両側に、武装した2匹のワーウルフが立っていた。剣を腰に下げ、鎧に身を包んでいる。
「お、人間だ!」
「本物の人間だ!初めて見たよ!」
ライトが街の入口に近づくと、警備のワーウルフ2匹は同時に言い、少し近づいてきた。
「こんにちは! こっちははライト。そして僕は、ライトのパートナーのコメットです。街に入れてくれませんか?」
コメットは、ライトの肩の上からワーウルフの前まで飛んでいき、そう言った。
「まぁ、構わないんじゃないか?」
「念のため、グラウ様に確認取ってくるよ!」
右側のワーウルフはそう言うと、街中へと駆けていった。
数分後に、ワーウルフは戻ってきた。
「もちろんokだとさ。」
「という事で、ようこそワーウルフ王国へ。ゆっくりしていってくれよ!」
意外とあっさり、ライトはワーウルフ王国に入ることが出来た。しかし、ケットシー達が言っていた仲間、ジャガーは一体どこに居るのか。それは見当もつかない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ライトは街を眺めながらゆっくりと歩く。立派で大きな建物がたくさんあり、食料品店や雑貨屋まであった。ライトは自分が住んでいたあの街を思い出して、少し懐かしくなる。
「(俺をかくまってくれた近所の人達、皆元気にしてるだろうか……。)」
しかし、懐かしんだ所で、もうあの街には戻れない。ライトは魔法を使える異端者として、目をつけられてしまっているのだから。
もう余計な事は考えず、捕まったケットシー、ジャガーを探すことに専念する事にした。牢がどこかにあるとすれば、高確率でそこに居るだろう。町並みを眺めつつ、疑わしい建物を探す。
「いきなり探せって言われても、やっぱり難しいよね……。」
コメットが、周りに聞こえないように小声で言う。辺りにはワーウルフ達がたくさん行き交っている。そして皆、珍しい訪問客であるライトを眺めながら通り過ぎていく。あまり怪しまれる動きは出来ない。
町並みを眺めながらふと前方を見ると、重鎧に身を包んだ、長身のワーウルフが歩いてくる。身長はライトよりはるかに高い。190cmほどはあるだろう。顔には無数の傷跡があり、漆黒の鬣が風になびいている。
「こんにちは。私は軍事司令官、そして国王でもあるグラウと申す。ワーウルフ王国に人間がやって来たのは実に久しぶりだ。名は何と言う?」
「俺はライトです。こっちのホシモモンガはコメットです。」
「そうか。旅人のようだな。旅の疲れが取れるまで、ゆっくりしていってくれ。」
グラウはそう言うと、元来た道を引き返していった。
「威圧感が半端じゃないね〜……。」
「そうだな。」
身長の高さや顔の傷跡からくるあの威圧感は、まさにワーウルフ一族のリーダーにふさわしいものであった。そして軍事司令官という事は、ケットシーの街への攻撃に関しても詳しいはずだ。しかし、直接聞くというわけにはいかない。
「あとを追ってみよう。何か分かるかもしれない。」
コメットに耳打ちし、コメットがうなずいたのを確認すると、ライトはグラウと同じ方向へと歩き始めた。グラウが歩くのと同時に、鎧がガチャガチャと音を立てる。そして、通りかかったワーウルフ達は皆、端に寄り、グラウの為に道を開けていく。
グラウはある建物の前で立ち止まった。高い鉄柵をいとも簡単に飛び越え、建物の敷地内に入っていく。
「どうする?これじゃ、あとを追えないよ!」
コメットが言うように、敷地内はすべて鉄柵に覆われており、入口らしきものは見当たらない。乗り越えて入ることも出来なくはないが、それでは確実に怪しまれてしまうだろう。ライトは木の影から、グラウを目で追った。
「グラウ様。こちらが昨日、この王国に忍び込んだケットシーでございます。」
「離すんだニャ!アタシは何もやってないんだニャ!」
「忍び込んだという時点で、何か悪さをしようとしていたんだろう?」
「あんた達に言われたくないニャ!ケットシー一族の街を攻撃して、めちゃくちゃにしたのはあんた達が先だニャ!」
リオンとティガーが言っていたジャガーというのは、全身ヒョウ柄のあのケットシーで間違いなさそうだ。強く鋭い目つきで、自分より遥かに背の高いワーウルフを睨みつける。しかし、首輪と鎖を繋がれ、自由を失ってしまっている。それでも、相変わらず強い口調でジャガーは言う。
「あんた達は一体、ケットシーに何の恨みがあるんだニャ? アタシ達は何か悪い事でもしたのかニャ!?」
ジャガーは怒りを露わにする。ワーウルフ一族が、何の罪もないケットシー一族を突然襲ったのが事実なら、無理もない。
「うるさい。首を飛ばされたくなければ黙れ。」
グラウは、ジャガーに剣を向けて脅す。これにはさすがのジャガーも黙りこむしかなかった。ジャガーの鎖を持ったワーウルフも、グラウの迫力ある一声にただ茫然とする。
「さっすが軍事指揮官……怖いね〜。」
コメットは小さな声で言った。ライトも小さく頷いた。その時、数十メートル先のグラウと一瞬だけ目が合った。ライトはすぐに目をそらしたが、グラウは間違いなく、ライトが見ている事に気づいている様子だ。
「そのネコを牢に連れていけ。尋問は後で行う!」
グラウが言うと、ジャガーの鎖を持ったワーウルフは一礼し、ジャガーの鎖を引っ張った。ジャガーは全力で抵抗していたが、ワーウルフの力にはさすがに勝てなかったようだ。無理やり引きずられる形で、ワーウルフに連れていかれてしまった。
「見苦しいものを見せてしまったな。」
グラウは、柵を飛び越えてライトの前に着地すると同時に言った。
「ケットシー族と、何かあったんですか?」
ライトは、何も知らないふりをして、グラウにそう聞いた。
「……我々は月の光のエネルギーによって、この姿を保っている。だが、同じように月の光で人獣の姿を保つケットシーどもが、エネルギーを横取りしているのさ。我々が、ただのオオカミに戻ってしまう前に、奴らを排除しなければならない……。」
そう話しながら、グラウの目つきは鋭くなる。それはワーウルフ一族の危機を心から心配し、そして、一族の危機の元凶であるケットシーを恨んでいる事を表しているようだった。
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第二十二章 休息の時間
グラウがどこかへ去った後、ライトは人通りの少ない路地裏に入り込んだ。
「重要な事を聞き出せたのはラッキーだったが、ケットシーとワーウルフの言い分が、完全にくい違ってたよな。」
「ケットシーは、『何もしてないのにワーウルフが突然攻撃して来た。』ワーウルフは、『月の光のエネルギーを奪われているから攻撃した。』……どっちかが嘘をついてるのかも。」
「もしかしたらケットシー達が、無意識で月の光のエネルギーを多く取ってしまっているとかもあるかもな……。」
ライトとコメットはそれぞれの意見を交換し合うが、やはりどれもピンと来ない。結局、この後ケットシーの街に行って、またリオンとティガーに会ってみる事になった。
「それじゃ、夕方に出発するか。」
今はまだ昼過ぎだった。今すぐに出発してもいいのだが、やはり安全な場所に居る以上、少し休憩を取りたい。
路地裏から出ると、目の前に喫茶店があった。ライトが住んでいた街にあったような、おしゃれな雰囲気の小さな店だ。
「とりあえず、ここに入るか。」
休憩するにはもってこいの場所だ。ドアを開けると、ドアに取り付けられたベルが綺麗な音を立てた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ありがとう!僕の分も買ってくれて!」
コメットはリンゴジュースのコップに顔をつっこみながら言った。
「構わないよ。結構安かったし。」
ライトも、コーヒーカップを手に取りながら言った。
ライトとコメットは、その喫茶店でゆっくりと時間を過ごした。しかし、夕方までずっとこの店に居るというわけにもいかない。この後は一体どうしようか。
「ありがとうございました。またお越しくださーい。」
喫茶店の扉を閉め、入口のベルが音を立てる中、ライトはまた辺りを見回した。色々建物はあるのだが、だいたいは民家のようだ。あまりお金に余裕もない為、あちこちの店に寄るわけにもいかない。
大きな橋の上で、ぼーっと川の流れを見つめる。その時だった。
「お、いたいた!人間の旅人さん、ちょっといいか?」
右側から、マフラーを首に巻いたワーウルフが駆け足で近付いてきた。
「これからの季節寒くなってくだろ?俺の家、服屋やってんだけど、これ、大量に作り過ぎちゃってさ。好きに使ってくれよ!」
ワーウルフは、持っていたカバンから、自分が首に巻いているのと同じマフラーを取り出して、ライトに手渡した。
「本当にいいのか?」
「うん。このままじゃ捨てることになりそうだし……。それに、旅してるってことは、野宿だろ?寒さ対策はしっかりしなきゃな!」
今ライトが持っている防寒具は、一枚のコートと帽子ぐらいだ。ワーウルフがくれた、ふかふかのマフラーは、とてもありがたい物だった。
服屋と別れ、橋を渡り切った後、ライトは公園を見つけた。立ち寄ってみると、様々な色の花が、順に花壇に植えられており、綺麗な景色が広がっていた。ベンチに腰かけ、先ほど貰ったマフラーを首に巻く。そしてまた、景色を見ながらぼーっと時間をつぶす。
「そろそろ、出発するか!」
「そうだね!」
まだ夕方というには早いのだが、だいぶ日は西に傾いた。
来た時に居た入口の警備兵は、今は居なくなっていた。どこかへ出かけているのだろうか。
ワーウルフ王国を出た後、もう一度そびえたつ城壁を眺めてから、ライトはケットシーの街へ向かって歩き始めた。
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第二十三章 ケットシーの街へ
「ところで、ケットシーの街ってどこなんだ?」
場所も分からないまま出発してしまったライトは、地図を広げる。地図には人間が住む町や村だけでなく、ちゃんとケットシーの街も記されており、一安心だった。
「このまままっすぐ行けばいいみたいだな。」
「そうだね。ちょっとだけ見えてるあれかな?」
ライトは目を凝らしてコメットの指さす方を見る。まばらに木が生えた中に、よく見ると建物がいくつか立っている。
街の周りには木の柵があるだけで、建物の数も少なく、ごく普通の民家ぐらいしか見当たらない。ワーウルフ王国と比べると、本当に小さな街だった。
そのまま歩き続け、ケットシーの街にたどり着いた。開いた柵の間を通り、街の中へと入る。
「ライトさんだニャ!」
街に入ってすぐ、聞き覚えのある声が聞こえた。リオンが手を振りながら、こちらに近づいてくる。
「ありがとうですニャ! それで……ジャガーは見つかったかニャ? あと、奴らは何か言ってたかニャ?」
リオンはライトの手を引き、道の端の方に寄りながら言った。
「ジャガーって子は見つけたけど、やっぱり捕まってた……。あと、ワーウルフ達の言い分が、君達と完全に食い違ってて……ケットシー一族が月の光のエネルギーを横取りしているから、攻撃を加えたんだって言ってたぞ。」
「何言ってるんだニャ! 僕らは横取りなんてしてないニャ! むしろ僕らも、最近は月の光のエネルギーが足りてないニャ!!」
リオンは大きな声で言った。
「落ち着いて!」
コメットの一言でリオンは我に返った。通りかかったケットシー達が皆、何事かとこちらを振り向いている。
「す、すいませんですニャー……。つい、イラついてしまったニャ……。でも本当なんだニャ。僕らも月の光のエネルギーが足りてなくて、ワーウルフ達が奪ってるんだと思ってたニャ! このまま僕らをただのネコに戻して、そしてこの街を乗っ取ろうとしてるんだと、思ってたんだニャ!」
リオンは言った。ワーウルフとケットシー、どちらも月の光のエネルギーは横取りしていないのに、エネルギーが足りていない……。月の光が弱まっているという事なのだろうか。疑問に思ってライトは聞いてみた。
「多分そういう事になるニャ。でも、月の光が弱まるなんて、聞いたことが無いんだニャ。これは、ワーウルフ達とお互い話し合うしかなさそうだニャ……。まずリーダーに相談するしかないニャ! ついてきてくださいニャ!」
リオンはそう言うと、一足先に歩き始めた。
それから、ライト達はリオンの後をずっとついていった。その先の広場に居たのは、両手剣を構え、木で作った人形に向かって素振りを繰り返す、ヒョウ柄のケットシーだった。横にはティガーも居る。
「あ、ライトさんおかえりですニャ!」
ティガーは切り株に座ったまま言った。
「レパルさん、ライトさんが帰って来たニャ! そして相談があるんだニャ!」
リオンは言いながら、ヒョウ柄ケットシーに駆けよっていった。ライト達もその後を追う。
「あら。初めましてライトさん。私はレパル。ジャガーは知ってるわよね? 私はその子の姉よ。」
レパルは剣を下ろし、ライトに近づいた。リオンやティガーと違い、非常に人間の言葉を話すのが上手い。
「ライトさんがワーウルフ達から聞き出してきた事だニャ。ワーウルフ達は月の光のエネルギーを横取りなんてしてなかったらしいニャ!」
「何?だとしたら一体何故……?いや、奴らの言う事は簡単には信用出来ないわ。確認を取ってみましょう。」
レパルが言うと、ライトから向かって右側の方から、大きなフクロウのような鳥が飛んできた。鳥はライト達の上を旋回すると、レパルのすぐ隣に舞い降りた。
「この子に伝達を頼みましょう。一度、ワーウルフ一族のリーダーと、一対一で話がしたいってね。」
レパルは言い終わると、紙とペンを取り出し、紙を岩の上に置いて、手紙を書き始めた。大きなフクロウのような鳥は、手紙の内容を読んでいるかのように首を傾けながら、レパルの隣でじっと待っている。
「でも……それは危険だニャ! もしokだって返信が来たとしても、相手は嘘をついて、レパルさんを攻撃するかもしれないニャ!」
「大丈夫よ。私だってそう簡単にはやられないわ。何といっても、ケットシーのリーダーだからね。」
レパルがそう言い終わると同時に、手紙は書き終わったようだ。フクロウの足に手紙をくくりつけ、レパルが合図を出すと、フクロウは空に舞い上がった。見る見るうちにその姿は小さくなり、大空の彼方へ消えていった。
「これで後は返事を待つだけね。話し合いは一対一でやるけど……ライトさん、申し訳ないけれど、一緒に来てくれないかしら?ワーウルフ達も、人間が居ればうかつに私達に手は出さないと思うし、何より中立の立場として、その場に居てほしいの。」
「別に構わないが……話し合いはいつになるんだ?」
「それは相手に都合にもよるわね。こちらはいつでも構わないんだけど。……そういえば旅人さんだったわね。あまり先になるようだったら、私達だけで話し合いを進める事にするわ。まぁ、とりあえずは手紙に返事を待つしかなさそうね。」
レパルは言った。その後、岩の上に置いてあった両手剣を再び握り、木の人形に近づいていった。
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第二十四章 剣術の特訓
「そうだ! ライト、レパルさんに剣を教えてもらったらどう?」
コメットは言った。たしかにライトは、まだ剣を使い慣れていない。森での戦闘の時は何とかなったが、もしこれから、魔法が通じない上に動きの素早い魔獣が現れたら、今のままでは太刀打ちできないだろう。
「私は別にいいわよ。」
「ではお願いします。」
ライトはポケットの中の短剣を取り出し、レパルの元へと歩いていった。
「それじゃ、僕は見学してるね〜。」
コメットは背の低い木の上に飛び乗った。
「僕達も見学してるニャ!」
続いてリオンとティガーも、ジャンプして木の上に飛び乗った。ライトはレパルに誘導され、木の人形のちょうど前に立った。
「それじゃ、この木の人形を敵に見立てて、攻撃してみなさい。」
レパルに言われ、ライトは木の人形に向かって剣を振る。
「悪くはないけど、隙が大きいわ。敵に動きを読まれてはいけないの。もっと素早く!」
ライトは先ほどよりも早く、何度も剣を振りかざした。
「良くなったわ! でも、むやみに攻撃すればいいってものでもない。ほら、これを使って!」
レパルから投げ渡された木刀を、ライトは上手くキャッチした。そしてレパル自身も木刀を持ち、ライトの所へやってきた。
「次は私に向かって、その木刀で攻撃してみなさい。人形は動かないからね。」
そう言うとレパルは、大きくジャンプすると、ライトに向かって木刀を振り下ろした。
ライトはとっさにその攻撃を防ぐと、すぐに足元を狙って木刀を振った。しかしレパルも鋭い反射神経で、ジャンプして避けると、強い突きを、ライトの右腕に命中させた。
「動きは悪くないわ。手に攻撃を受けても、剣はしっかり握っておいて落とさないようにする。これもちゃんと分かってるじゃない!」
レパルは言うと、また木刀を構えた。ライトも、攻撃を受けた右腕をさすりながら、木刀を構えなおす。
木刀がライトの脇腹を狙って、斜めから振り下ろされた。ライトは素早く後ろにさがって避けると、さっきレパルがしたように、相手の手を狙って木刀をまっすぐ突き出す。少しだけかすったが、上手く命中したとは言えない感じだった。
「その調子よ! でも、もっと素早さを磨きなさい。ほとんどの魔獣が人間よりも素早いからね。」
レパルの特訓は続いた。休憩は無しだったので、なかなか大変なものだったが、時間とともにライトの動きは良くなっていく。見学していたコメットやリオン達から見ても、よく分かるほどに。
「よくなったじゃない! あとはあなたの練習しだいで、ぐんぐん伸びると思うわよ!」
レパルが言ったその時、上空から鳥の羽ばたきが聞こえてきた。あの大きなフクロウが、先ほどのようにライト達の上を旋回した後、くちばしにくわえていた紙を、レパルに向かって落とした。
「返事が来たようね。」
リオンとティガーが、真っ先にレパルに駆けよっていく。コメットも遅れて、木の上から滑空してライトの肩に飛び乗った。
皆で、レパルの持つ手紙を覗きこみながら、文字を読む。
{お前達ケットシーの言う事を完全に信用するわけにもいかないが、いいだろう。話し合いに応じよう。今からリザードマンの地下街に通じる三叉路で待つ。条件であるジャガーも連れていく。ただし、こちらも条件を出す。お前達の仲間の人間を連れてこい。 ーーワーウルフ王国 国王兼軍事指揮官、グラウより。}
「今からでもいいって書いたら、本当に今からになっちゃったわ。行ってくるわね。」
レパルはリオンとティガーに言う。
「気を付けてくださいニャ!」
2匹は同時に言いながら、レパルに頭を下げる。
「ライトさんも行きましょう。手紙の最後の一文からして、相手は怒ってるかもしれないけど……大丈夫。私が守るから。」
レパルは言うと、置いてあった両手剣を握り、背中に背負った。
グラウは、ケットシーの手助けをした人間が、ライトだと感づいているのだろうか。グラウがもし怒っていれば、どうすればいいのだろう。
「大丈夫だって! グラウさんだって、そんな事でライトを攻撃したりしないよ!」
ライトの不安が伝わったのか、コメットは言った。ライトもその言葉に頷くと、レパルの後に続いて、ケットシーの街を出た。
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第二十五章 誤解
「……やはりお前だったか。ライト。」
ライト達が待ち合わせの場に着くやいなや、グラウが真っ先に言った。その横では鎖を繋がれたジャガーが不機嫌そうにしているが、レパルの姿を見て、わずかに安心の表情を浮かべる。
しかしライトはと言うと、グラウの言葉で不安が増してしまった。
「別に構わないさ。むしろお前のおかげで、真実が見えそうなんだから。
おい、ケットシー一族が月の光のエネルギーを横取りしていないというのは本当か?」
「もちろん私達はそんな事してないわよ。むしろ私達も、あなた達が横取りしてるんだと思ってたわ。」
「我々がそんな事するはずないだろう。オオカミは正義感が強いんだ。お前たちのような、ずる賢いネコとは違うんだ。」
「何言ってるのよ。突然攻撃してきたくせに。だいたい私達だって、他人に迷惑をかけるようなマネは絶対にしないわよ。」
2人はさっそく険悪なムードに包まれてしまっている。ライトが何か声をかけるべきなのだろうが、2人の気迫に押され、声がかけづらい。
「2人とも落ち着いて! 話し合うために来たんでしょ?」
ライトの代わりにコメットが言ってくれた。その言葉に2人は我に返る。
「そうね。今日はケンカしにきたんじゃないんだから。」
「そうだな。交渉が決裂した場合は別だがな。」
グラウもレパルと同じように、背中に両手剣を背負っており、万が一の時は戦える準備をしてここまで来ている。お互いを疑い合う険悪な空気は、やはり完全に取り払う事は出来ないのかもしれない。
「とりあえず聞きたい事があるわ。私達もあなた達も、月の光のエネルギーは横取りしていない。そうなると、月の光が弱まっていると考えるのが妥当だわ。でも、月の光が弱まるなんて事、起こりうるのかしら?」
レパルはしっかりグラウと向き合い、そう言った。
「そうそう起こる事ではないが……300年前にも一度、起こっているらしい。」
「300年前……。まだ私達の先祖は、人獣じゃなかった頃ね。その頃に、一体何が起こって月の光が弱まったのかしら?」
「そうだな。たしか……。」
グラウは少し考えてから、また話しを続けた。
「原因はハッキリしていないが、ブラックドラゴンの闇の力の解放の時期が重なっている。その為、おそらくブラックドラゴンが原因だろうと言われている。」
「ブラックドラゴンの闇の力……それなら聞いたことがあるわ。たしか、人間に命を狙われ、追い詰められたブラックドラゴンが、死の波動を放った。しかし、それによって大陸全体が暗闇に包まれ、太陽も月も、その光を弱めてしまった……。そんな感じだったかしら?」
「そうだ。その状態は一年続き、植物は枯れ、大陸全体が死に包まれたかのような、暗黒の1年だったらしい。まぁ、ブラックドラゴンのせいとは言え、ブラックドラゴンが悪いってわけではないんだがな……。」
レパルとグラウの会話は続き、お互いの誤解は解けつつあった。そして、新たに見えてきたのは、ブラックドラゴンが関係しているかもしれないという事実だった。
「ブラックドラゴンの闇の力がもう一度解放されつつあるとか……?」
「そう考えたい所だが、それらしい原因があるかどうか……。」
グラウはそう言い、考えているかのように首をかしげる。
「俺はむしろそうだと思うんだ。ホワイトドラゴン、ツィエーロが言っていたんだ。ブラックドラゴンは人間を滅ぼそうとしているって。」
「何? それは本当か?」
「もちろん本当だよ! ライトは嘘なんてつかないよ! それに、僕もその時一緒に居たしね。」
ライトが答えようとした時、コメットが横からそう言った。
「なるほど……。人間を滅ぼす為に、ブラックドラゴンは自身の闇の力を蓄えているとしたら……その影響が出ている可能性は十分にあるわね。」
はっきりと確定したわけではないが、その可能性が高い。その場に居た全員がそう思った。
「ライトの言っている事が正しければ、我々はケットシー一族に謝罪しなければならないかもな。我々の誤解により、街を傷つけてしまったと。」
「当然よ! 今すぐここで土下座してほしいくらいだわ。まぁ、過ぎたことは仕方ない。これからは協力して対策を練りましょうよ。」
レパルは言う。グラウも頷き、そして言った。
「そうするしかなさそうだ。ワーウルフ王国の皆には俺が説明する。だからケットシーの街の住民には、お前が説明してくれ。その後、俺が謝罪に行こう。」
「分かったわ。しっかり説明しておくし、あなたが来ても攻撃を加えないように言っておくわ。でも、今よりもっと月の光のエネルギーが足りなくなったとき、本当に横取りなんてしないでね。」
「そんな事しないさ。お前たちもするんじゃないぞ。」
グラウはジャガーの首輪と鎖をはずす。
「誤解して悪かったな。だが、許可なく忍び込むのはよくないぞ?」
「ごめんなさいニャ。でも誤解が解けてよかったニャ!」
自由の身になったジャガーは、真っ先に姉のレパルの元へと駆けよる。
「ジャガー……無事で何よりだわ。それじゃ、街へ帰りましょう。」
レパルはジャガーの頭を撫でながら言った。
「それでは、説明を頼んだ。」
グラウはワーウルフ王国の方へと去っていった。その後ろ姿をしばらく眺めていたレパルとジャガーも、同じように、ケットシーの街の方へと歩く。
「そうそう、ライトさん。御礼にプレゼントしたい物があるの。何度もあちこち歩かせちゃって申し訳ないけど、来てくれないかしら?」
「分かった。リザードマンの地下街に向かう前に、もう一度リオンやティガーにも挨拶したいし……。」
レパルとジャガーの後を、ライトも一緒に歩いていった。
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第二十六章 レパルからのプレゼント
レパルが元居た広場にたどり着いた。リオンとティガーは、この広場でレパルの帰りをずっと待っていたようだ。
「はい、これはプレゼントよ。短剣だけじゃやりづらいかもしれないからね。さっき木刀を上手く扱えてたから、すぐ使えるようになると思うわよ。」
レパルは、壁に武器が多数立てかけられている中から、ロングソードを選んで持ってきた。
「ちなみに、リザードマンの一族は鍛冶の名手。それを持っていけば、今より丈夫に改造してくれると思うわ。」
レパルが言い終わってから、ライトは剣を腰にさげた。
「うん! かっこいいニャ!」
「いい感じだニャ!」
リオンとティガーは、ライトを見て言った。
「剣ありがとう。それじゃ、そろそろ出発するよ。」
「お世話になりました!」
ライトとコメットは同時に頭をさげた。
「元気でニャ〜!」
リオンとティガーが、ライトに向かって手を振る。
「こちらこそ、色々とお世話になったわ。それじゃあ気をつけてね。この辺りは比較的安全なはずだけど、気を抜いちゃダメよ。」
レパルの言葉で、ライトは再度気を引き締めた。ライトは一度振り返り、リオンとティガーに向かって、コメットと一緒に手を振った。
木の柵を越えて、ライトは街の外に出た。夕焼けが空を真っ赤に染めていた。
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第二十七章 夕焼けの荒れ地
赤茶色の地面が、夕焼けに照らされてより一層赤く見える。何もない荒れ地を、ライト達はしばらくの間無言で歩き続けた。しかし、歩きながらライトは、妙な違和感を感じていた。
「何ていうか……前に進んでいる感じがしないな。」
ライトはつぶやいた。最初は、同じ景色がずっと続いているから、そう感じているだけだと思っていたのだが、どうも違う。上手く言えないのだが、たしかに真っすぐ歩いているはずなのに、同じ所を回り続けているかのようだった。
「僕も、何かがおかしいと思ってたんだ。僕の記憶では、ワーウルフ王国からリザードマンの地下街は、そんなに遠くなかったと思うんだけど、もうずいぶん歩いてるし……。」
どうやらコメットも、謎の違和感を感じていたようだ。
「通り過ぎたってことはないよな……?」
「それはないと思うよ。リザードマンは、地下街の入口を岩陰とか、分かりにくい場所に作るんだ。でも、今まで通ってきた道に、岩も木もなかったから……。」
「通り過ぎてはいないって事だな。」
ライトは一旦立ち止まってみた。そのまま辺りを見回してみる。どこを見ても、何もない赤茶色の大地が広がっているだけだった。
その時、ライトの右側を、何かが走り抜けていった。しかし、はっきりと確認出来ないまま、黒い大型犬のようなそのシルエットは、薄闇の中に消えてしまった。
「今のは何だ? 多分図鑑には載ってなかったぞ?」
「僕も分からなかったけど、今走っていった魔獣から、不思議なパワーを感じたんだ。空間を歪めて、幻の世界を作り出すタイプの魔獣と、同じようなパワーをね。」
ライトはその言葉を聞きながら、そしてコメットは自分で言いながら気づいた。今自分達が歩いている道は、さっきの黒い犬のような魔獣が、空間を歪めて作りだしたものなのだと。
「だとしたら、どうすればいいんだ?」
「えーっと……。」
コメットは頭を抱えて、必死に記憶を探る。そして約三十秒後、
「ダメだ、思い出せないや……。」
非常に申し訳なさそうに、コメットは言った。
とりあえずライトはカバンを地面に置いた。今歩いたところで、無意味なのはよく分かった。むやみにうろうろせずに、この場で対処法を考えるのが賢明なのだろう。
「あ、そうだ! たしかこんな言葉があったはず。『闇の火炎は赤い雨によって消える。』
これが、魔獣の作った幻を消す為のヒントになってるらしいんだけど……。実際に幻の中に迷い込む事なんてないと思ってたから、ちゃんと覚えておかなかったんだ……。」
コメットは相変わらず、非常に申し訳なさそうな顔をしながら言った。
「いいや、ヒントがあるだけで十分だよ。とりあえず考えよう。」
ライトはその場に座った。何故か地面が温かい。どちらかと言えば肌寒い季節なのだが、地面だけが不自然に熱を持っている。
「うーん……。闇の火炎って何だろう?……あ!」
「何か思い出したか?」
「うん! 幻を作り出すタイプの魔獣って、僕の知る限りでは皆、炎を扱う種族なんだ。そしてその幻は、弱い炎エネルギーによって作られるんだ! だからその影響で、夕焼けの赤い色がこんなに強いってわけ! でも、闇の火炎ってのが引っ掛かるね〜……。ただの炎じゃないわけだし。」
コメットは言った。たしかに少し引っ掛かるが、おそらく『闇の火炎』と言うのは、この幻を表す言葉なのだろう。それが分かれば、その意味を追求するより、『赤い雨』を解読する事が、幻から脱出する事につながるだろう。
「赤い雨……。」
ライトはつぶやきながら、ふと空を見上げる。夕焼けが、空、地面、雲、すべてを赤く染めている。
「今コメットが魔法で雨を降らせれば、夕焼けで染まって赤い雨になりそうが……。」
「なるほど! ちょっとやってみる!」
コメットは後ろ足だけで立ち上がり、空に向かって両手を伸ばした。すると、コメットの真上に小さな雲が出来た。よく見ると、コメットの手から発せられた小さな水滴が、雲を形作っているのだった。
十分な大きさになった雲から、ぽつぽつと弱い雨が降り始めた。ライトの読み通り、雨は夕焼けに照らされて赤い雫となり、次々と地面に落ちる。
「赤い雨にはなったんだけど……。何も変わらないね。」
コメットはずっと上げっぱなしだった手を降ろした。すると、雲は一瞬にして消え、雨も一緒に降りやんだ。しかし、景色は何も変わっていない。幻はまだ消えていないという事だ。
「読みが外れたのか……。いや、もしかしたら、ここからさらに何かをしないといけないのかもしれないな。」
その時、ライトはある事に気付いた。さっきまで妙に温かかった地面が、冷えているのである。ライトが座っていた場所は、直接雨には濡れていないはずなのだが……。
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第二十八章 幻の炎
「そう言えばさっき、幻の正体は弱い炎エネルギーだって言ってたよな?」
「うん。何かひらめいた?」
「地面がさっきまで温かかったんだが、雨の後急に冷えたんだ。これは炎のエネルギーが弱まったって解釈でいいのか?」
「お! だったらもっと強い雨振らせてみよっか! 出来ればライトも協力して!」
「分かった。」
ライトは立ち上がった。それと同時に、何やら足元から熱を感じた。さっきまで冷えていた地面が、また温かくなってしまったようだ。コメットも気付いたようで、2人は無言で顔を見合わせる。
「どうやら、炎を弱らせるんじゃなくて、一気に消さないといけないみたいだな……。」
「じゃあ、全力でやってみるよ!」
コメットがもう一度、雲を作り出す。雲は先ほどよりも遥かに大きくなり、黒い雲が上空で渦を巻く。
「ライト、お願い!」
コメットに言われ、ライトは雲に向かって水の弾を放った。水の弾は雲にぶつかると同時に破裂し、大粒の雨となって降り注ぐ。その直後、雲からも、範囲はとても狭いのだが、豪雨が降り始めた。
ライトとコメットは、突き刺すような雨が降る雲の下から、慌てて避難した。雨は地面に穴を開けるほどの勢いで降り注ぐ。
再度、足元からの熱は消え、地面が冷えていっているのが分かる。豪雨はしばらく降り続き、辺りの景色が陽炎のように揺らいでいる。
「これで消せるかな……!?」
コメットが雲に向かって手を伸ばし、動かすと、コメットの手の動きに連動して、雲が広がっていった。先ほどよりも一回りほど大きくなっただろうか。相変わらず激しい雨粒は、土を弾き飛ばしながら降り注ぐが、それでも、景色が揺らぐだけで、幻が消える気配はまだ無い。
「ダメか〜……。」
疲れた様子のコメットは、手を降ろした。再び雲は消え、空は真っ赤に染まる。
「炎が水で消せないとなると、他に方法は……。」
ライトはつぶやきながら、地面に手をつき、その場に座った。赤く染まった土は、再び熱を発している。ライトは赤い土を少量手に取った時、ふとひらめいた。
「真っ赤な土……。もしかして……!」
「何かひらめいた!?」
「この赤い土を雨に混ぜて降らせるっていうのはどうだ?」
土は、弱い炎で出来た幻に照らされ、真っ赤に輝いている。この土を水に混ぜれば、それこそ赤い雨が出来上がるはずだ。
「なるほど! それじゃあ、ライトはその土を適当にばら撒いて!」
コメットはそう言い、宙に浮きあがった。ライトは足元の土を左手に掴み、それを宙に放り投げる形で、辺りにまき散らした。
コメットが作り出した水滴は、空中にばらけた土を取り込み、全体が炎のように赤く輝く。赤い水滴は、コメットの合図と同時に、目で確認出来るか出来ないかのスピードで四方八方へ飛んでいった。
水滴が当たった場所が、消えかけた炎のように揺れている。景色はどんどんぼやけていき、枯れ木や岩など、今まで見当たらなかった物の姿が、少しずつ浮かび上がってくる。そして、真っ赤な夕焼けの色が消えたと同時に、ぼやけていた景色がはっきりと姿を現した。
「幻が消えた! これもライトのおかげだよ!」
ライトが辺りを見回していると、コメットは肩の上に飛び乗ってきた。コメットはとても嬉しそうだ。しかし、炎の幻が消えた事により、辺りは一気に暗くなった。これでは、地下街に通じる道は非常に探しにくい。
「それじゃ、改めて地下街探そっか。暗くてよく分かんないけどね……。」
「ケットシー達に、リザードマンの地下街の入口の特徴聞いておけばよかったような気がするな。」
「たしかに……。でも、ケットシー達がそれを知っているかどうかも分からないし……。」
ライト達がつぶやきながら歩き回っていると、荒れ地の中に佇む大きな木が見えた。辺りには枯れ木や背の低い木しかないというのに、一本だけ、大木がそびえたっていたのだった。
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何やら失敗した感のある謎解きストーリーが出来ましたよ(・ω・`)
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※多少血が出るため、苦手な方はご注意ください。まぁそんなに言うほどではないと思いますが……。
第二十九章 ブラックドラゴン襲来
その一本の大きな木に近づいた時、ライトの持つ白龍石が輝き始めた。
「この木は……!」
石と同じように、木の葉が真っ白に輝き、夕闇を明るく照らす。
「魔術の木だ! ここからあの海辺の村の手前に帰れるよ!」
コメットは言った。
「もし真っ暗になる前にリザードマンの地下街が見つからなかったら、村に戻ってサザンの家に泊めてもらって寝るか。」
「そうだね!」
ライトは、地図に印をつけ、魔術の木の場所を書き加えた。その後、またライト達は地下街に通じる道を探し始めた。岩の裏はもちろん、木の根元や草むらの中なども入念に探す。
その時、突然大風が吹いた。草はザワザワと大きな音を立て、木の枝が大きくしなる。そして巨大な影が、ライトの上を通過した。
風を切るような巨大な翼を羽ばたかせ、巨大な爪が地面を掴む。夜の闇の中にとけ込む漆黒の鱗、腕から伸びた刃物状の赤い鱗が鈍く光り、首から背中にかけて生えた赤い鬣は、強風になびき、炎のように揺れる。そして、その竜が羽ばたくのをやめると、とたんに風は止んだ。
「ブラックドラゴン……!」
コメットはつぶやくように言うと、ライトの肩の上に乗ったまま身構えた。
「我輩はブラックドラゴン、名はインフェルノだ。お前が人間側に残されたただ1つの光か……。」
その赤い眼光は、ライトを貫くかのように鋭く光る。ブラックドラゴン、インフェルノは一歩前へ出て、ライトに近づいた。
その全長10mは越えているであろう巨大な竜。その恐ろしさに、ライトも動くことが出来ない。インフェルノが動く度、その左腕に巻かれた鎖が音を立てる。
「その白い石を持つという事は……正真正銘、白の魔術師の子孫のようだな。しかし、知っているか? 白の魔術師の子孫、それは世界中にお前1人しかいない。」
インフェルノが少し翼を動かしただけで、砂埃が激しく舞う。その強力な力は、ライトに十分すぎるほどの威圧感を与えていた。
「……俺の両親も魔法が使えた……。それなら両親も、白の魔術師の血を引いてるはずだ。」
やっとの思いでライトは言った。
「もちろん、お前の両親もその血を引いていた。しかし今は、お前一人しか居ない。どういう事か……分かるはずだ。」
インフェルノの言葉で、嫌な予感が頭をよぎった。さらにインフェルノは、追い打ちをかけるかのように、言葉を続ける。
「世界中で行われる魔女狩り……。その対象者の末路は、お前も知っているのだろう?それにしても恐ろしい。特別な能力を持っているという理由だけで、人間が人間を当然のように狩り続ける……。」
「やめてくれ。もちろん、魔女狩りの対象者の末路は知っている。それを逃れるために、俺はこの大陸にやってきた……。でも……」
ライトは言うのをやめた。頭の奥底では真実を理解しつつあるという事と、それを信じたくない気持ちが交錯してしまい、言葉が止まってしまったのだ。
「信じるがいいさ。親は死んでいないと。だが、現実は変わらない。我輩の目的のために、邪魔な存在であるお前を、今ここで始末するつもりだという事実もな。」
インフェルノの目つきが変わった。その口元が一瞬赤く光ったかと思うと、真っ赤な業火がライトに迫ってきた。
「そうはさせない!」
コメットがライトの肩から飛び降り、両手を広げて水のシールドを作り出す。しかし、炎は水をも突き破る勢いで迫ってくる。
「ダメだ、強い……! ライト、シールドの外に逃げて!」
コメットにそう言われ、ライトが横に逃げた瞬間、水のシールドが炎の勢いに負け、消え去ってしまった。その瞬間、ライトの顔を炎がかすった。
「コメット!」
コメットの方を振り向きながらその名を呼ぶ。コメットは上手く上空高い所まで飛び、何とか炎から逃れたようだ。
ライトはと言うと、どうやら顔をかすった炎によって火傷を負ってしまったようだ。右の頬が赤く腫れ、非常に痛む。
「残念だったな。星の祝福を得ていないホシモモンガなど、ただの小型魔獣にすぎない……。」
インフェルノが言っているその隙に、コメットは、その手からヘビのようにうねる水を発した。水のヘビはインフェルノの頭に巻きつき、強く締めつける。
ライトもそれに続き、剣の先から水の弾を連射する。ほとんどが上手く命中したのだが、たいしたダメージを与えられていない。やはり相手は、死を象徴する巨大な竜。今のライト達には、到底太刀打ちできる相手ではない。
「あきらめが悪いようだな。お前たちは、まだ我輩と対等に戦える戦力に達していない。そんなお前たちの前に何故我輩が現れたか……分かるだろう? 自身への脅威となる前に、早く始末するに越した事はないからだ。」
インフェルノの太い尻尾がライトを叩きつけた。跳ね飛ばされたライトに、さらに尻尾のトゲが追撃を加えた。
その瞬間から、トゲが刺さった左肩から全身へ向かって、ひどい痛みが回っていく。痛みのあまりしゃがみこんだライトに、インフェルノは近づいた。
「その毒はやがて、痛みと共に心臓を止める……。人間なら1分も持たないだろう。しかし、お前も苦しみたくはないだろう?」
インフェルノの尻尾が、地面を強く叩きつけた。ライトも、次のインフェルノの攻撃から逃げたかったが、毒がまわって上手く立ち上がる事ができない。
「冥界で両親と再会してくるがいい。」
インフェルノの尻尾が強く振りかざされ、そのトゲがライトの左胸を貫いた。その直前に、コメットが渾身の力を込めて水の弾を撃ったのが見えたのだが、それはインフェルノの動きを止めるだけの強さは無かったのか。
インフェルノがトゲを引き抜くと同時に、大量の血が噴き出した。そしてライトの全身の力が抜けた。かろうじて意識はあったが、目の前がかすみ、動くことさえも出来ない。
「ライト! 死んじゃダメ!」
ライトが意識を失う前に見たのは、全身を使ってライトの胸の傷を塞ごうとするコメットと、インフェルノの左腕の鎖の隙間から見えた、深くえぐられたような傷跡だった。
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第三十章 奇跡
「……。」
ライトはふと目を覚ました。辺りを見回してみると、どうやらここは病院のベッドの上のようだ。強い日差しが窓から差し込んでくる。
「ライト! 生きててよかった!」
そう言いながら、背後から飛びついて来たのはコメットだった。コメットはうれしさのあまり、涙を流していた。ライトもコメットを抱き寄せ、その頭をなでる。
「ライト……! お前は死なないって信じてたよ!」
ベッドの横にはサザンも居た。ここは、どうやら海辺の村の病院らしい。
「まったく心配かけやがって……。でも、本当に生きててよかった。医者だって半分諦めてたんだからな……!」
コメットによると、騒動に気づいて近くにやってきたリザードマンと協力して、魔術の木から海辺の村までライトをつれてきたらしい。その後、村の住民達によって、すぐにライトはこの病院へ運ばれたが、呼吸は止まり、心拍も弱まり、後は死を待つだけの状態にまで陥っていた。医者も諦めかけていたのだが、その状態から奇跡的に回復したそうだ。
ぼーっとする頭をフル回転させ、ライトは昨日の事を思い出す。
ブラックドラゴン、インフェルノの襲撃。今のライトには到底太刀打ち出来ない、恐ろしき死の竜。ライトはその毒にやられ、さらに、尻尾の太いトゲが心臓を直撃した。それなのに、奇跡的に生きている。ライト自身も、今生きている事が不思議に感じていた。
ライトは体を起こそうとした。しかし、同時に左胸に激しい痛みが襲いかかってきた。インフェルノの毒のトゲが直撃した場所だ。
「安静にしておけよ。傷は相当深いんだから。」
サザンにそう言われ、ライトは体を起こすのをやめ、もう一度ベッドに横たわる。その時、病室に誰かが入ってきたのが見えた。
「おや、目が覚めたようですね。それにしても、本当に奇跡的だ……。」
それは白衣を着た男性で、見たところ医者のようだ。ライトが首だけを傾けてそちらを見ると、医者は思い出したかのように言った。
「そうだ。ライトさん、あなたを待っている方が居ます。今、病院の前に来ていますので、呼んできますね。」
医者は病室を出ていった。足音が遠くなっていく。
そして病院の扉が開く音が聞こえた。その直後、風が激しく扉を叩きつけるような、ガタガタッ!という音が聞こえてきたが、その音はすぐに消えた。
「この方が、ライトさんをこの村まで運んできてくださったんですよ。」
「……街の上で、ずいぶん激しい騒動があったから、様子を見に行ったら、死にかけてる君を発見したんだ。」
医者がつれてきたのは、鎧と兜をまとった、人程の大きさの恐竜のような魔獣だった。背中には弓矢を背負っている。その姿は、魔獣図鑑で見たリザードマンと一致していた。
「アードさん……本当にありがとう……!」
コメットはそのリザードマンに、泣きながら飛びついた。
「そしてもう一人来ているんですが、どうしてもこの中に入ってこれないそうで……。」
医者はそう言って、ライトのベッドのすぐ横の窓を開けた。すると、ホワイトドラゴン、ツィエーロが、窓から頭だけを入れてライトに話しかけた。
「申し訳ありません。翼が引っ掛かってしまい、入れないので、こちらから……。」
先ほどの扉を叩きつけるような音は、ツィエーロが引っ掛かって、もがいていた音だったのだろうか。
「私の守護魔法がかかっていなければ、本当に危ない所でした。しかし、あのままでは失血死していたかもしれません。コメット……。ライトが死なずに済んだのは、あなたのおかげですよ。」
「そんな事言われたら……僕もう涙が止まらないよ〜……!」
コメットは、ライトが目を覚ました時からずっと泣いていた。しばらく涙は止まりそうにない。
そして、どうやらライトは、ツィエーロの力によって守られており、それによってインフェルノの攻撃にギリギリで耐え、死の淵からの奇跡的な回復を遂げたという事らしい。ライトは、心からツィエーロに感謝した。
「それにしても……私の守護があっても、あれほどのダメージを受けてしまったとは……。確実にインフェルノは力を増している……。」
ツィエーロはつぶやくように言った。
「一つ気になってる事があるんだが。」
リザードマンのアードが手を挙げながら言う。
「ブラックドラゴンは、どこでライトさんの存在を知ったんだろ?しかも居場所まで特定するなんて……。」
言われてみればそうだ。何故インフェルノに、ライトの存在を、そして居場所を知られていたのだろうか。
「考えられる理由としては……側近の魔獣が、後をつけていたのかもしれません……。ですがインフェルノは、ライトは死んだものと思っているでしょう。しばらくは、インフェルノがライトを狙う事はないと思います。そしてこれから私は、彼の動きを探ってみます。もし何かあれば、すぐに知らせます……。」
「僕も、もっと強くなれるように頑張る!あの時、ちょっとでもインフェルノの攻撃をずらすことが出来れば、こんな事にはならなかったかもしれない……!」
コメットはライトの方に戻って来た。コメットは、あの時の攻撃が効かず、ライトを救えなかった事を悔やんでいるようだ。
「コメット、さっきツィエーロが言ってたけど、君のおかげで俺は死なずに済んだんだ。だから、後悔はしないでくれ。」
「……ありがとう……ライト!」
コメットの涙は勢いを増した。相当ライトの事を心配し、気にかけてくれていたのだろう。しかし、コメットを撫でようとして体を起こすと、やはり左胸の傷が痛む。
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第三十一章 ツィエーロの守護
「……私の回復魔法で、出来るところまで治してみましょう。しかし、インフェルノの死のエネルギーにより作られた傷、完全に治すのは難しいかもしれませんが……。」
痛みに耐えるライトを見て、ツィエーロは言った。ツィエーロは窓枠から右手を部屋の中に入れた。かなり狭そうだが、何とか頭と手が通るだけの隙間はあったようだ。
ツィエーロは、右手をライトの胸の傷の上にかざした。ツィエーロが念じるように目をつむり、力を込めると、その手から発せられた緑色の光が、ライトの傷を包みこんだ。それと同時に、痛みがどんどん引いていく。
「どうでしょう……?」
体を起こしても、今なら痛くない。痛みはほとんど引いていた。
医者がライトの左胸の包帯をはずす。すると、あれだけ深かった傷が、きれいに塞がっていたのだった。完全に治っているかのように見えるのだが、ツィエーロは続けて言った。
「外傷は治りましたが……完治は難しいようですね。奥深くの傷がまだ治っていません。今日中は、出来るだけ安静にしてください……。明日にはきっと、治っているでしょう。」
ツィエーロは、部屋の中に入れていた右手を外に出した。
「ライト、俺は一回家に戻る事にするよ。実は、作物の水やりも馬の世話も、まだやってないのさ……。」
サザンは言った。窓からの日の強さから察するに、今は昼過ぎのはずなのだが、サザンは、自分の仕事を放置してライトの元に駆けつけていたらしい。残った皆で、部屋から出ていくサザンを見送る。
「それでは、私も他の患者さんの様子を見に行ってくるよ。何かあったらそこのベルをならしてください。」
サザンに続き、医者も部屋から出ていった。
「僕はここに居るよ。あの時は君に触れていたから、魔術の木を介したワープが使えたけど、僕一人じゃ使えないからな。徒歩で帰るにも遠いし……。」
アードはそう言って、ベッドから少し離れた所にあるイスに腰掛けた。ライトももう一度、体を倒してベッドに横たわる。コメットも枕元でじっとしていた。
開いた窓から、外に居る人達の話声が聞こえてくる。ライトは目をつむりながら、その声を聞いていた。
「本物の神龍様だ!」
「何と美しい……!」
ライトの元に駆けつけたツィエーロを見に、どうやらたくさんの人が集まっているようだ。外はかなりざわついている。ツィエーロは一瞬窓の外を振り返り、少し戸惑ったような表情を見せた。
「はいはい静かに! ライトさんが寝てらっしゃるんだから。それに、神龍様も困ってるだろう?」
部屋の前を通り過ぎようとしていた医者が、窓から外の群衆に向かって大きな声で言った。喋っていた人達は、皆一斉に静かになる。人の気配はあるので、おそらく皆、黙ってツィエーロを眺めているのだろう。
「こんな風に歓迎されて、私も嬉しいです。ですが、私も少し前まで……インフェルノと同じように、極力人間を避けていたのです……。」
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ピアノ実技試験が終わりましたので、更新ペースを元に戻していこうと思います。
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第三十二章 2頭の竜
「300年程前でしょうか……。私は古代の竜族が絶滅した後に生まれた存在ですので、古代の竜族を滅亡に追いやった人間達を知らずにいました……。」
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天空高くそびえる神殿から、ツィエーロは勢いよく飛び出した。大きな翼をはためかせ、地上の世界へと降りていった。
「今日はどこへ行こうかしら……!」
ツィエーロが誕生した際、卵のすぐそばに置かれていた、魔術師からの手紙。それには、200年経つまでは絶対に地上の世界に行かないように。と記されていた。
ツィエーロは200年間、地上の世界を知らずにずっと天空に閉じこもっていた為、ここ数日は、毎日地上に降りていき、初めて見るものすべてに心を躍らせていた。
天空での暮らしも、決して悪くはなかった。真っ白な美しい雲の上を優雅に舞い、不死鳥、フェニックス達の歌声を聴く。しかし、『すべての生命に祝福を捧げる者』として、新たな生命が誕生する地上の世界へ、行きたくても行けずにいたのだ。
天空では見ることの出来ない、一面の緑の草原、大きな湖、地上に住む魔獣達。山や荒れ地、海など、自分の知らなかった世界を、ツィエーロは飛びまわった。
地上の魔獣達も、ツィエーロを歓迎してくれた。ツィエーロもそれに応え、まだ幼き命が健康に育つよう、生命の祝福を捧げ、各地を回った。
ある時見つけたのは、ひと際大きな街だった。森や山と違い、明らかに何者かによって作られた物。そこに居たのは人間だった。
大きな街の中、せわしなく働き、道を行き交う人々。魔獣達とはまた違う暮らしをする人間に、ツィエーロは惹かれていった。毎日、人間の様子を見に、街のそばまで飛んでいった。
しかし人間の方はというと、ツィエーロを、すべての生命に祝福を捧げる神聖な存在とは知らなかったのだった。
ある日、ツィエーロは街の中に降り立った。赤ん坊の泣き声が響きわたる一軒の家の前で、ツィエーロが両手を合わせると、そこから美しい祝福の光が漏れ出た。しかし、その時だった。
「あの怪物だ! 今日もやってきたぞ!」
多数の矢が、ツィエーロ目がけて放たれた。ツィエーロは尻尾を大きく振って、そのほとんどをはじいたが、はじきそこねた数本が、翼に傷をつけ、そして純白の鱗を赤くにじませた。
幸い翼の傷は、飛ぶのに支障はない程だった。ツィエーロはその場から逃げるように、翼をはためかせ、人間の街から離れたのだった。後ろから迫ってきた矢も、竜の飛ぶ速度よりは遅いものだった為、難を逃れることが出来たのだった。しかしそれによって、ツィエーロの心には、大きな恐怖が植え付けられてしまった。
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「その後すぐに分かったのです。私は人間には歓迎されていないと。そして手紙の、『200年、地上に行かないように』の意味が……。」
ツィエーロによると、200年……それは竜が大人になるまでにかかる年月。いくら強力な力を持つ竜とは言え、子供の竜なら、あの攻撃に耐えられるかどうか分からない。
だから、すべての生命に祝福を捧げるという使命がありながら、200年の間は、天空の世界にとどまるように、魔術師達は手紙に書き残したのだという。
「インフェルノも同じです。彼には一度だけ会ったことがあるのですが、それはもう、私のものとは比べ物にならないほど、ひどい怪我を負っていたのです……。あれこそ、200歳になっていなければ、確実に死んでしまっていたでしょう。そして彼もまた、死者の魂を冥界にいざなう為、街の傍に行っただけでした……。」
ライトは複雑な気持ちになった。村人達から崇められる神聖な存在であるツィエーロが、昔は人間からそんな扱いを受けていた。そして、昨日自分を襲った恐ろしき死の竜、インフェルノもまた、何の罪もなしに人間から攻撃を受けていたのだ。
「インフェルノが人間を嫌うのも、無理はないって事だな……。」
「あの時から数十年経った後、人間は死に対する恐れから、インフェルノの居場所を突き止めてまで、何度も執拗に、彼を殺そうと傷つけました。インフェルノ……彼はきっと、生涯人間を許すことはないでしょうね……。」
「あの時……鎖の隙間から見えた傷も、人間から受けたものなのか……?」
ライトはつぶやいた。しかしそれはずいぶんと生々しい傷で、比較的最近のものに見えた。
「私の知る限りでは、80年前を最後に、インフェルノへの攻撃は行われていないはずです。80年もあれば、竜の治癒力があれば、どんなに深い傷でも跡は残らないはずなのですが……。」
ツィエーロは言った。ならあの傷は、人間は関係していないのだろうか。
「じゃあ、あの傷はなんだったんだろうか……。」
よく分からないが、かなり深い傷だったのは確かだ。何より、何故あの死にかけた状況で、その傷だけがはっきりと見えたのかは、ライト自身にも謎だった。
「それでは、私はインフェルノの動きを探ることにします。なんとなくですが……彼が人間を消そうとする理由は、私的な復讐心だけではない気がするのです……。」
そう言ってツィエーロは、窓枠から頭を抜いた。ライトは、飛び立つツィエーロを、部屋の中から見送った。
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第三十三章 病室での時間
コメットは安心からか、枕元でいつの間にか眠ってしまっている。枕の上のコメットを、そっとベッドの傍まで動かし、ライトは枕の上に頭を置いた。
特にやる事も無く、ライトも少し眠ろうと考えた。しかし今は真昼間。窓から差し込む光が強く、寝付く事が出来ない。何もやることがないまま、時間が過ぎていった。
その時、病室の扉が開いた。
「よ! すっかり遅くなっちまったが……これは差し入れだ。」
戻ってきたサザンだった。サザンは紙袋から、フルーツが盛られたカゴを取り出した。
「俺ん家の色々採ってきたぜ。コメットにもちゃんと分けてやってくれよ。」
ライトはカゴを受け取り、机の上に置いた。すると、その匂いを嗅ぎつけたのか、コメットはぱっと目を覚ました。
「わー! おいしそう! 貰っていいの?」
「あぁ、もちろん。そのために持って来たんだから。でもライトの分まで取るんじゃないぞ?」
「分かってるよ! ありがとう!」
サザンはその後も、夜まで病室に居てくれた。サザンが来たことによって、退屈は紛らわされた。その場に居る皆で談笑し合う。
「明日には出発するのか?」
「そうだな。もう傷も治ってるし……。」
ツィエーロの治癒が効き、あの時はまだ少しだけチクチクと痛かった傷も、もう今では痛くない。ツィエーロも、今日一日休めば大丈夫だと言っていた。ならば、明日には出発するべきだろうと、ライトは考えていた。
「そうか、ちゃんと見送りに行くよ。モクバも連れてな。さて、暗くなってきたし、俺はそろそろ家に帰るかな。」
サザンはイスから立ち上がった。そして空になった紙袋を手に持ち、部屋から出ていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕飯を終えると、皆、すぐに就寝準備に取り掛かった。ライトは明日の為に備えて早めに寝るつもりだったのだが、コメットとアードも、やる事が無い為、早めに寝る事にしたらしい。コメットは机の上に飛び乗ってその上で、アードはイスを壁に寄せ、壁を背もたれにして、眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
窓から朝日が差し込む。一番初めに起きたのはライトだった。もう傷も痛みも完全に無くなっていた。一昨日、生死の境をさまよっていたのが嘘のように。
ライトが動き出したのを察したのか、コメットとアードも、すぐに起きてきた。ライトは、残ったサザンの差し入れをカバンの中にしまう。
「それではお大事に。くれぐれも無理をするんじゃないぞ。」
数人の医者に見送られ、ライト達は病院を出た。すると病院の前では、サザンとモクバ、そして魔獣図鑑をくれた女性が待っていた。モクバは真っ先に駆けよって来て、ライトの前に座り込んだ。
「久しぶりに会えてうれしいみたいだぞ。」
サザンが言うと、モクバは小さく鳴いた。少し見ないうちに、背中の新芽が少し成長している。緑色の若葉のような鬣も、少し茶色が混ざり、若葉と枯れ葉が入り混じった草むらのようになっていた。
「ライトさん、先日仲間から連絡があったのですが、湖の傍に行く事があったら、ベースキャンプに来てほしいそうです。私が渡した魔獣図鑑には載っていない魔獣の研究が終わり、新しい図鑑が出来たと言ってました。」
魔獣研究家の女性が言った。ライトは地図を広げ、場所を確認する。
これから向かうリザードマンの地下街を少し北に行ったところに、大きな湖がある。その畔に、研究家達のベースキャンプがあるらしい。
ライトは地図に印をつけると、モクバの背に乗った。モクバはサザンの歩くペースに合わせて、ゆっくりと進む。
出発の時同様、道行く人々が、ライトに向かって応援の言葉を投げかけ、通り過ぎていく。そして村の出口には、村人がたくさん集まり、ライトの出発を見送りにきてくれていたのだった。
「頑張るんじゃぞ。すべてはお前さんにかかっているんだから。」
その場には、村長も来ていた。ライトはモクバから降り、集まった村人皆に頭を下げた。
これ程の人が自分を見守ってくれている。逃れられない運命に巻き込まれ、不安に覆い尽くされたライトの心も、少し落ち着くのだった。
「行ってきます。」
ライトは村の柵の外から、もう一度群衆の方を振り返った。村人たちは皆手を振り、そしてモクバも、尻尾を振りながらライトをじっと見守っていた。
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第三十四章 鍛冶の名手
村の傍の魔術の木のワープを使い、ライトとコメット、そしてアードは、元居た荒れ地へと戻ってきた。
「地下街へは僕が案内する。ついてきてくれ。」
アードはライト達に言うと、木から向かって右側に歩きだす。ライトはそのあとをついて歩いていった。ほんの数十メートルほど歩いたところで、アードは立ち止った。
「ここだ。」
アードは、密集する岩の上に登った。そして、岩と岩の隙間にあった穴を指さした。
「なるほどこんな所に……。」
コメットがつぶやく。たしかにこんなわずかな隙間が入口だったら、あの夕闇の中では見つからないのも当然だ。アードは少しだけ岩を動かし、ライトが入れるだけの隙間を作ってくれた。穴に入ったアードに続き、ライトとコメットは順に穴に入った。
「足元、気をつけろよ。」
ライトはまだ暗闇に目が慣れず、足で地面を探りながら、ゆっくりと道を進む。徐々にわずかな光が見えてきた。近づくにつれ、だんだんはっきりと見えてきたその光は、石の壁にかけられたランプの明かりだった。
「アード、おかえりー。ホワイトドラゴンから聞いたよ。死にかけてた人間助けたんだって?」
アードと似ているが、鎧を来ていないリザードマンが話しかけてきた。鍛冶のハンマーを手に持っている。
「あぁ。こっちがそのライトさん。この地下街を探してたらしいから連れてきた。」
「ライトです。よろしくお願いします。」
「僕はコメット。よろしく!」
「そうか。あたしはレン。こちらこそよろしく。ところで、わざわざこんな所に人間が来るって事は、何か用事があるんだろ?」
レンはハンマーを段差の上に置きながら言った。
「リザードマンの一族が、古代の竜や昔の人間に詳しいって聞いて、ブラックドラゴンの手がかりを探して、ここまでやってきたんだ。」
「あと、この剣を強くしてくれたら嬉しいな!」
ライトが言い忘れてしまった剣の強化を、代わりにコメットが言ってくれた。
「言っとくが、皆が昔の事に詳しいわけじゃないからな。一番詳しいのはそうだなー……サラマンダーさんだよな? アード。」
「そうだな。むしろ、直接人間と関わりを持っていたリザードマンは、サラマンダーさんの家系だけだったしな。」
「ちなみに剣の強化だったら、あたしの師匠が得意だよ。サラマンダーさんの居場所はもっと奥深くだし、先に剣の強化を済ましてからどうだ? 師匠の場所までは案内するぞ?」
レンは再びハンマーを持ちなおした。
「じゃあ、先に剣の強化を頼むよ。」
「了解。じゃあついてきてくれよ。」
レンの後をついて歩いていくと、細い道の向こう側は、鍛冶台と炉が立ち並ぶ鍛冶場となっていた。レンと同じように鍛冶の修行をするリザードマン達が、台の上で鉄を叩き、熱い炉の前で製錬の作業を行っていた。
「師匠ー! この人が剣の強化を頼みたいそうでーす!」
「何だと?今から材料の調達に行こうと思ってたというのに……。」
奥の方から声だけは聞こえてくるのだが、誰がレンの師匠なのか分からない。しばらくその場で待っていると、背の高いリザードマンが、群衆の中から1人出てきた。兜の間から覗く目は鋭く、その手に持つハンマーは相当使い古されている。
「人間か。人間が鍛冶の依頼をしにくるなんて、何年ぶりだろうな。」
「相当久しぶりですよねー。」
「お前が弟子入りしたばかりの頃に1人来たのが、最後だったな。では君、剣を貸してくれ。」
レンの師匠は、ライトが渡した剣をまじまじと眺める。
「なるほど。初心者が作った物のようだが、普通に使う分には問題はないな。とりあえず少しだけ作りかえてみよう。こっちに来てくれ。」
案内された先には、大きな鍛冶台が並んでいた。ライトにとっては初めて見る物がたくさんあり、辺りを見回しながら歩いていく。
その間にレンの師匠は、ライトの剣を台の上に乗せる。
「さて、では始めさせてもらうが、レン、一つだけ頼みたい事がある。ワーウルフ達から鉄鉱を譲ってもらう約束をしていたんだが、レンが代わりに、ワーウルフ王国へ行って貰ってきてくれ。」
「分かりましたー。」
「そして君にも頼みたい事がある。」
レンの師匠はライトの方を向いて言った。
「レンは本物の方向オンチなんだ……。君は地図を持っているようだし、レンを案内してやってほしい。その間に剣の強化は済ませておくよ。」
ワーウルフの王国にはつい最近行った。案内するのはさほど難しい事ではないだろうし、強化が終わるまでここで待っているのも、おそらく暇になるだろう。
「分かりました。」
「頼んだぞ。レン、1人で勝手に進むんじゃないぞ!」
「はーい。」
ライトとコメット、そしてレンは鍛冶場から出て、また元来た道を戻った。出口に近づくにつれ、どんどん細くなっていく道を、背を低くしながら通り抜ける。上の穴から差し込む光が、地下から見るととても綺麗だった。
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第三十五章 再びワーウルフ王国へ
「本当に申し訳ないよ。あたし方向オンチでさ……1人じゃ絶対道に迷うんだ。師匠もあたしが方向オンチな事知ってるんだし、他の奴らに頼めばいいのにさー……。」
レンは愚痴をこぼしながら、地下街から出るときにどけた岩を、元の位置に戻す。
「とりあえずワーウルフ王国には最近行ったから、場所は分かってる。俺についてきてくれ。」
ライトは方向を確認すると、後ろを歩いていたコメットを肩に乗せて歩き始める。
少し歩くと、すぐにワーウルフ王国の城壁が見えてきた。あの時はリザードマンの地下街の場所が分からずに歩き回った為、もっと遠くに感じたが、意外とすぐ近くのようだ。
「おー、こんな近くだったんだ。いつも道に迷うから、距離感が分からないな。」
そしてレンは、いつもそんな調子のようだ。城壁の傍まで行くと、警備のワーウルフ達は、ライトを見つけたようで、口々に言った。
「ライトさんだ!」
「また戻って来てくれた! やっぱり死んではいなかった! グラウ様にもご連絡を!」
「よかったよ……! ブラックドラゴンの毒にやられたって聞いて、心配で心配で……。」
「久しぶり……ってほどでもないかな。こっちはレンさん。鉄鉱を貰いに来たんだって。」
ライトは門番達に近づいて言った。いつの間にか、ライトがブラックドラゴンに襲われた事は、ワーウルフ達にまで知れ渡っていたようだ。
「どうも。師匠が急用なので代わりに受け取りにきましたー。」
レンも門番達に言う。ライト達はワーウルフ王国の門をくぐった。少し懐かしい風景が広がっている。
「えーと、鉱石商人はどこにいるんだっけ? 師匠に聞くの忘れてたな……。」
ライトも、レンを案内するようにしか言われていない。ワーウルフ王国についてからどこへ行けばいいのかは分からなかった。ひたすら探すしかなさそうだが、ワーウルフ王国自体がかなり広いので、中々苦労しそうだ。
その時だった。前方から歩いてくるのは見覚えのある姿、グラウだった。
「また会えるとはな。ちなみに鉱石商人はそこに居るぞ。」
グラウの指さす先には、大きなリュックを背負ったワーウルフが、辺りをキョロキョロしながら、大きめの声で叫んでいた。
「誰か呼びましたー!? 鉱石商人は私ですよー!」
それを聞いたレンは、同じように大きな声で言った。
「呼んだのあたしだよー! 師匠の代わりに来たんだ!」
2人はお互いを見つける事が出来たようで、小走りでお互いに近づいていった。
「あれからというもの、ケットシー一族との誤解も解けて、お互い平和なんだ。月の光のエネルギーも、ここから少し遠いが、月光の湖から調達することで、なんとか足りている。」
「そうか……。それはよかった。」
「我々ワーウルフも、少々喧嘩っ早い所があった事、そして誤解でケットシー一族を傷つけた事は反省している。お詫びとして、壊れた建物の修復をこちらが引き受けたりしているんだが、なかなか大変でな……。」
ライトが去った後、ワーウルフとケットシーの仲は急激に回復したらしい。グラウによると、月の光のエネルギーの調達も、大勢のワーウルフとケットシーが協力しているそうだ。
「レパルさん達も元気にしてるかなぁ?」
「つい3時間前に来ていたのだが……もう少し早めに来ていたら会えたかもしれないな。」
コメットの発言に、グラウはそう答えた。
「それは惜しかったな……。」
「だがレパルも元気にしているよ。そして次に会った時、ライトは無事だったって伝えておく。レパルはお前の事をすごく心配していたんだ。もちろん私もだ。本当に心配していたんだからな……。無事でよかった。」
レパルもグラウも、本気でライトの事を心配してくれていたらしい。ライトもこれには少し嬉しくなる。
「ライトさーん! こっちは終わったぞー!」
レンの声だ。ライトが振り向くと、来た時は空っぽだったリュックをパンパンに膨らませ、それを重そうに背負ったレンが、こちらへ向かってきていた。
「それでは私は警備に戻ろう。これからも気をつけて旅をつづけるんだぞ。」
グラウは重鎧の音を立てながら、大通に向かって去っていった。ライトとコメットはグラウを見送ると、レンと合流し、ワーウルフ王国を後にした。
「さて、重いし早めに帰ろっか!」
そう言ってレンは、門を出て一番先に歩きだす。
「そっち逆だぞ?」
「……ライトさん、あたしは後をついていくよ。」
レンは立ち止り、ライトを先に進ませて、後をついて歩いていった。魔術の木が生えていた場所を越えると、もう地下街はすぐそこだ。
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地下街に入ったライト達は、細い道をくぐり抜け、鍛冶場へとたどり着いた。
「師匠ただいま! いっぱい貰ってきましたよー。あぁ、重かった。」
レンはパンパンのリュックを背中から降ろし、師匠に渡した。
「助かったよ、ありがとう。さて、剣の強化もさっき終わったぞ。」
レンの師匠はリュックの中の鉄鉱を取り出して棚の上に置いた後、鍛冶台の上の剣を持ってきた。ライトは剣を受け取り、握ってみた。
「柄を君の手の形に合わせて削っておいた。おそらく握りやすくなっているだろう。」
その言葉通り、握るとしっくりくる。
「それじゃ、次はサラマンダーさんの所だな! いったんここから出るぞ!」
レンに言われ、ライトは頷くと、剣を腰にさげた。
「ありがとうございました。」
レンの師匠に頭をさげ、ライトはレンの後についていき、鍛冶場を出た。外で待っていたアードが、ライト達を見つけて立ちあがる。
「お、おかえりー。それじゃ、サラマンダーさんの所に向かうか。ここからは僕が案内するから、レンは鍛冶に戻っていいぞ。」
「いいのか? それじゃ、頼んだぞ!」
レンは今通ってきた道を引き返し、鍛冶場へ戻っていった。
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第三十六章 真実を知るために
レンを見届けたライト達は、地下街の奥深くへと進んだ。少し進むと壁にかけられた電灯はなくなり、また地下街は、暗闇に包まれた洞窟のようになった。
「道、見えるか?」
「僕は見えてるけど、ライトは……。」
「一応、かろうじて見えてるんだけどな……。」
アードとコメットは、人間より暗所で目が効くのか、意外と大丈夫なようだが、ライトはまだ目が慣れず、地面の小石を足で確認しながら進むのがやっとだった。
「仕方ないな。」
アードは右手を上に向けた。するとその手に、ロウソクのような柔らかい火が灯った。
「まだ僕の魔法は不完全だからこんな程度だし、たまに再詠唱しないと消えるんだが……まぁ無いよりはいいだろ?」
アードの言うとおり、火は小さくて弱々しいものなのだが、暗闇を照らすには十分なものであった。ライトはアードの近くへ行き、その明りを頼りに暗闇を進んだ。
「ここは住宅街だ。」
そこは多くのリザードマンが行き来していた。壁の穴から、料理を作る母、遊ぶ子供など、人間と変わらぬ暮らしをするリザードマン達が見える。しかし、まだ目的地は少し先らしい。数分間住宅街で休憩した後、また一行は洞窟の奥深くへと歩き始めた。
「大きな段差があるから、気をつけろよ。」
アードが照らす先には、段差というよりは崖に近い、大きな溝があった。よく見ると、安全に降りる為か、ロープが吊るされている。
「ロープ握ってれば大丈夫だし、万が一落ちても、この高さなら死なないさ。」
アードはそう言って、ロープを伝って下に降りていった。コメットもそれに続き、滑空して下に降りていった。
たしかに落ちても死にはしないだろうが、意外と高い。ライトは恐怖心を押さえてロープを握った。足を壁につけながら、ゆっくりと下に降りる。
「よく頑張ったな。怖かっただろ? 僕も最初は泣きそうになりながら降りてたからさ。」
アードは少し笑いながら言う。しかし、たしかにこれは怖い。ライトも、今降りてきた段差を見上げながら、自分がもう少し子供だったら、絶対に降りる事が出来なかっただろうと思った。
「さて、ここまで来たから、あとちょっとだ。」
結構長距離を歩いたが、旅の出発後はずっと歩き続けるような日々だったので、意外と足は大丈夫だった。ずっと一本道の洞窟を進んでいくと、徐々に明かりが見え始めた。アードが矢を放ち、道を塞いだ岩を壊して、岩のかけらを尻尾で端に寄せる。その時だった。
「アードじゃないか。何か用か?」
岩を壊した事で現れた空間から、声が聞こえた。そこから姿を現したのは、アードよりも身長が高く、そして長い赤髪を持つリザードマンだった。
「こちらはライトさん。ブラックドラゴンの手がかりを探してて、古代の竜の伝説に詳しいサラマンダーさんに、話が聞きたいんだって。」
ライトはアードに背中を押されながら、その部屋に入った。それと同時にサラマンダーもライトを見るが、その鋭く赤い眼光に、ライトは一瞬ひるんで足が止まってしまった。
「誰かと思えば人間じゃないか。久しぶりだな、直接人間に会うのは。とりあえずそこに座っててくれないか?」
サラマンダーの目線の先には、イスがいくつか並んでいた。ライトが端のイスに座ると、ライトの後をついてきていたコメットも、ライトの隣のイスの上に乗った。
「たいしたおもてなしが出来なくて申し訳ない。とりあえずこれを。」
サラマンダーが差し出した石のお椀には、野菜のスープが入っていた。
「こんな奥深くまでご苦労さまだった。疲労回復の効果のある野菜を入れたスープだ。」
サラマンダーは、コメットにも、小さめのお椀に入れたスープを渡した。
「僕にまで……ありがとう!」
「いやいや。君も立派なお客さんだ。ところでライトさん、君が噂の、ブラックドラゴンに立ち向かえる、ただ1人の人間か?」
「はい。」
最初は、どうすればいいのかも分からずに旅に出たのだが、旅先で様々な仲間に出会い、支えられ、今でははっきりと言えるようになっていた。自分はブラックドラゴンに立ち向かう為に旅に出たのだと。
「なるほど。しかし……どうすればいいのだろうか。私はファイアドラゴンの霊魂を宿す者として、君の味方をする事は出来ないのかもしれないな……。」
「どういう事だ? ファイアドラゴンとは……?」
「そうだな。ファイアドラゴンを説明しない事には、まったく話が進まない。それ以外の事は後で考えるとして、これだけ話しておこう。」
サラマンダーは、本棚から一冊の本を取り出した。
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第三十七章 古代竜と移民達
古代の竜は次々と滅びていった。雷の竜、大地の竜、海の竜、森の竜は大陸から消え去ってしまった。そしてただ一頭だけになってしまった氷の竜、空の竜、火の竜は、人間に追われ、長い間逃げ続けた。
最初、移民がこの大陸にやって来た時、竜は彼らを敵だとは思わなかった。前に漂流してきた魔術師達のように、仲良くなれるものだと思い、不用意に近づいてしまったのだ。
元々、竜の数はさほど多くなかった。一種5,6頭程、七種類揃っても、40頭程しか居なかった竜に、何百という人間に抵抗するのは難しい事であった。勿論、全員が揃って団結して戦えば、勝ち目はあったかもしれない。しかし、もうすでに竜は3頭である。逃げる以外に、生き延びる道は無かった。
しかしある時、残された竜に救いの手が差し伸べられた。
あの漂流者達が……魔術師達が大陸に戻ってきた。魔術師達は、変わり果てた竜の姿に嘆き悲しみながらも、まだ少しでも竜が生き残っている事を喜んだ。
しかし、竜の味方となった魔術師達は、竜と同じように、移民である人間達に追われる生活を強いられた。この大陸のバランスを保つ竜が居なくなってしまえば、大陸は壊れ、死の大地となるだろう。しかし、それを知らない移民達は、自分達の脅威となりうる巨大生物、竜を、徹底的に排除しようとしていた。
すでにバランスの崩壊は起き始めている。砂嵐によって大地は荒れ、森は次々と枯死していく。海もまた荒れ狂い、大きな波が大地を叩きつけ、そして激しい雷が毎日のように発生する。
このままでは大陸は死んでしまう。新たに大陸を支配する存在を、魔術によって作り出さなければ。
竜と魔術師達は、どんどん追い詰められていった。今まで何回、命からがら逃げたかもわからない。全員が傷だらけだった。
魔術によって新たな命を生み出す。それは禁じられた魔術であった。一つの命を犠牲にし、その肉体を基礎として新たな命を作り出す、恐ろしい魔術であった。魔術師達も、この魔術を使わなければならない日が来るとは、思ってもいなかっただろう。
空の竜と火の竜は、自らの肉体を差し出すと言った。そして氷の竜は、魔術が完了するまでの間、必ず皆を守ると言った。
空の竜は、生命を象徴する存在の基となるため、白の魔術師と共に天空へと昇っていった。
火の竜は、死を象徴する存在の基となるため、黒の魔術師と共に冥界の入口へと向かった。
魔術は成功し、新たな二頭の竜の卵が完成した。しかしその後、冥界の入口は人間達に攻め入られ、黒の魔術師も、かけつけた白の魔術師も、皆殺しにされてしまったのだ。しかし、氷の竜の最後の力で、死を象徴する竜の卵は守られた。
深く傷ついた氷の竜も、まもなく絶命した。そして七種の古代竜は絶滅を迎えた。
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第三十八章 インフェルノの悲劇
「以上が、古代の竜の絶滅に関する話だ。そしてこれ以上の事を話すべきか話さないべきか、それはファイアドラゴンの意思が決める。」
サラマンダーが言った直後、サラマンダーの背後から赤黒い影が現れた。赤黒い影は巨大な赤い竜の姿となり、部屋を覆い尽くす。その影の姿ははっきりとしていないが、湾曲した角や背中の鬣など、どことなくインフェルノを連想させるシルエットであった。
「サラマンダーよ、この白の魔術師の子孫に、お前の祖父から聞いた事、すべて教えてやれ。ブラックドラゴンと人間の間に何があったのかをな……。」
半透明の赤い竜が静かに言う。
「白の魔術師の子孫よ、聞こえるか?」
竜に言われ、ライトは頷いた。
「いつでも構わない。ブラックドラゴンに立ち向かう前に、夢幻の火山へ来い。しかし一つだけ言っておく。私はブラックドラゴンの基礎となった存在。お前の味方はしない。」
そう言い残すと、赤い竜の影は静かに消えていった。
「なるほど……古代竜も認める魔術の子孫か。いいだろう。話す事にする。これは私の祖父から聞いた話だ。」
サラマンダーの祖父は300年程前、人間とリザードマン一族の交友を深めるために、人間の街に滞在していたそうだ。その頃起こった事らしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
海辺には広大な街が広がっていた。移民達はどんどん街を大きくしていき、街は200年もの間栄え続けた。しかし、その街に不穏な影が近づいていた。
竜の出没。ここ数日間だけでも、街のすぐ傍で竜を見たという人が後を絶たない。
「化け物だ! 撃て!」
街の中に降り立った白い龍に、人々は矢を放つ。数本が翼や体に刺さり、痛みで苦しみながら白い龍は空の彼方へと消えていく。それ以降、白い龍は人の前に姿を見せなくなった。
しかし別にもう一頭、黒い竜がいた。その黒い竜が現れると、必ず街の中で死人が出るのだ。
「あの竜が死を運んでくるんだ……! 次に現れたら、必ず殺せ!」
街の誰もが、死を運ぶ黒い竜を恐れた。竜を殺そうとする政府に、誰も反対はしなかった。
またある人は見たという。山の中で魔獣の死肉を貪り回る、黒い竜のその恐ろしき姿を。
唯一反対したのは、サラマンダーの祖父を含む、その街に滞在する少数のリザードマンとワーウルフ達だけだった。しかし、そこは人間の街であり、しかも独裁者が仕切る街。人間の決めた事に従うしかなかったのだ。逆らえば、人間は恐ろしい武器を使い、他種族である自分達を傷つけるのだろう。
「きっとあの竜は、死を運んでいるわけじゃないんだ。死を予知してやってきたんだと思う。」
「俺もそう思ってた。」
街中のリザードマン達は皆、同じ意見だった。皆は、人間達が竜の襲来に備えて武器を備えているのを見ながら、黒い竜が街に来ない事を祈るばかりだった。しかし、黒い竜は再び街へやってきてしまった。
黒い竜が見つめる先には、一軒の家があった。ベッドの上で、眠るように横たわる幼い少女。しかし、いつまでも泣き続ける親や兄弟の姿から、少女がただ眠っているわけではない事は、誰にでも分かる。それをただじっと見つめていた竜が、一歩歩み寄った時だった。
「今だ! 取り囲め!」
体中に刺さった矢に苦しむ竜に、剣が振りかざされ、槍が足に深く突き刺さった。足や尻尾の鱗は切り裂かれ、漆黒の鱗が鮮やかな赤に染まる。竜は傷ついた翼で空に舞い上がり、強風で砂埃を巻き起こしてその姿をくらました。
砂埃が消えた時、すでに竜の姿はなかった。あったのは、折れて地面に落ちた矢と、竜の負った傷を表すかのような、大量の血痕だけであった。
それ以来、黒い竜が街に現れる事はなかった。しかし、それから数十年経ってから、人々はまた、死を象徴する竜の命を狙い始めた。
死を恐れ、不老不死を求める人々。そして、死を象徴する存在であり、魂を冥界へと誘う者。いつまで経っても両者が相容れる事は出来ないのだろう。
人々は黒い竜の居場所を突き止めた。そして、先祖達が魔術師達から奪い取った魔術書から魔術を学び、武器に恐ろしき術をかけた。
数日後、竜を倒そうとする軍隊が、その住み処に攻め入るため、街を出ていったのだった。
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第三十九章 人間の罪
「私の祖父が知っているのはここまでだ。」
その後、リザードマンやワーウルフ達は、あまりにもやりすぎだと抗議したが、やはり聞き入れられなかった。自分がすべて正しいと思い込む人間に絶望し、そしてそんな人間が恐ろしくなり、皆、自分の街へと戻ってしまったそうだ。
「しかしその後、追い詰められたブラックドラゴン、インフェルノが死の波動を放った事で、大陸の気候は荒れ、連日の嵐で人間の街は壊され、光が届かず作物も育たなくなった結果、一年間で人間の数が一気に減ってしまった事は有名だ。それは君も知っていただろう?」
「いや、インフェルノの死の波動で、大陸が一年間、闇に包まれたのは知っていたが……それで街が壊滅したのは知らなかったよ。」
グラウとレパルも、ブラックドラゴンの闇で、月の光が弱まったとしか言っていなかった。それ以上の事はライトはまだ知らなかった。
「今ある海辺の村……あれがその街の跡地だ。あの村の住民は、あの一年を生き残った人間の子孫達だ。巨大な街だったのに、あれだけ小さい村で全員が暮らせる程になってしまったのさ。」
ライトは海辺の村を思い出す。神龍祭りの時はそれなりに人が居たが、しかしライトが育った街に比べると、あの群衆もほんのわずかなものに過ぎなかった。全員の顔と名前を覚えようと思えば、覚えられる程度の人数だった。
「それは恐ろしいな……。でも、話を聞いてた以上、悪いのは人間なんだろな……。」
ライトはつぶやくように言った。インフェルノが人間を嫌うのも無理はないと、改めて思った。
「そうだ! ライトが言っていた、インフェルノの左腕の傷って……!」
コメットに言われ、ライトは思い出した。あの深い傷はおそらく、恐ろしき術とやらがかけられた武器で攻撃を受けた為に出来たのだろうと、ライトもコメットもそう思った。確実にそうとは決まったわけでもなく、そうだと分かった所で、さほど必要な情報でも無いのだが……。
「これ以上の事は、私には分からない。ただ、ここから北へ向かった所に、大きな湖がある。そこに、おそらく探検隊だろう。人間達がベースキャンプを作っている。行ってみたら何か掴めるかもしれないぞ。」
サラマンダーに言われてライトは思い出した。海辺の街でも、魔獣研究家の女性から、湖の傍のベースキャンプに行くように言われていたのだった。
「そしてこれを持っていけ。ファイアドラゴンの鱗だ。これがなければ夢幻の火山には行けない。」
サラマンダーが棚から取り出したのは、ルビーのように赤く、光沢をもった鱗だった。
「ありがとう。ところで、夢幻の火山というのはどこにあるんだ……?」
「それは私にも分からない。夢幻の火山は、ファイアドラゴンの住み処だったのだが、ファイアドラゴンが居なくなってしまった事で、幻のように、時空の彼方に消えてしまったそうだ。空間を移動する術がなければ、行く事は出来ないだろう。」
空間の移動……何者かの力を借りなければ、不可能だ。ツィエーロなら出来るだろうか。
「それでは気をつけて。もし武器や鎧が必要になった時は、またこの地下街に戻ってくればいいぞ。」
サラマンダーに見送られ、ライトとコメットは元来た道を戻り始めた。小岩の上で、アードは居眠りをしている。ライトはアードの肩をそっと叩いた。
「あれ?……いつの間に寝てたのか自分でも分からないな。とりあえずお疲れ。いい情報掴めたか?」
「そうだな。有力な情報掴めたし、次に行くべき場所も分かった。」
「それはよかった。じゃ、戻るか。」
アードの後ろを歩いてついていき、また鍛冶場の近くまで戻ってきた。あの高い段差や真っ暗な道も、一度通って慣れたため、帰りは問題なく通過する事が出来た。
「よ! おかえり!」
レンの声だ。鍛冶のハンマーを握ったまま、ライト達を見つけて鍛冶場から抜け出してきたらしい。
「いいのか? 師匠に怒られるぞ?」
「大丈夫だって! 師匠も、ライトさんがこの街を出る前に、一言挨拶してこいって言ってたからさ!」
「そうか。ところでライトさん、今は夜だけど……出発はいつにするんだ?」
アードに言われるまで、今が夜だとは分からなかった。地下街はずっと暗い為、昼夜の感覚が分からない。
「今は夜なのか……。なら、出発は明日にするかな。」
「それじゃ、僕の家の横に空いてる小部屋があるから、案内するよ。レンも、鉄叩きながら居眠りして、自分の手を殴るんじゃないぞ!」
「何言ってんのさ。さすがにそれはしないって!」
レンと別れ、アードに案内された小部屋にたどり着いた。洞窟の壁に穴を開けただけに近いものだったが、意外と中は温かい。折りたたんだテントを布団の代わりに、地面に敷く。
サラマンダーの話を聞いた以上、悪いのは明らかに人間の方だった。インフェルノが人間が滅ぼすつもりなのも当然かもしれない。
複雑な気持ちになったが、それでも、今この大陸に生きている人々に罪はない。海辺の村で出会った人達を思い出しながら、再びインフェルノに挑む決意をし、ライトは眠りについた。
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