ワザップ!フォーラム
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〜プロローグ〜
・・・西暦2020年。地球は今までのような青い色ではなく、灰色かかった緑色の星となった・・・。
事の発端となったのは、大規模な人口爆発をおこした人類が、自分たちの私利私欲のために森を焼き払い、大量の資源を根こそぎ奪っていった。その影響で動植物は次々に姿を消し、緑豊かな大地は荒野と化した。そのため食料や資源が世界規模で不足し始め、残り少ない食料や資源を獲得するため、人類は争いを始めた。
その時人類は気付いていなかった。もっとも注目すべきは数少ない「資源」ではなく、自分たちの過ちが生んでしまった、「偶然の産物」だということを・・・。
人類が争いを繰り広げている中、事態は着々と進んでいた。
荒廃しかけた世界でも、数こそ少ないものの一部の動植物はこの過酷な環境を生き延びていた。しかし、人類はその数少ない動植物でさえも根こそぎ奪っていった。
生き残った動植物達は思った。「ナゼボクタチハコロサレナクテハイケナインダ?」
「ボクタチハタダシズカニクラシタイダケ」「ヘイワニクラシテイルダケナノニ?」
・・・やがて動植物たちの思いは怒りへと変わっていく・・・。
「モウ・・・ヤラレッパナシハイヤダ!!」「ジブンヲマモレルチカラガホシイ!!」
「ニンゲンヲヤッツケル・・・チカラガ!!」
その思いからか、数少ない動物たちは恐るべき変化を遂げる・・・。
・・・ある日、1匹の生き物が子供を産んだ。しかし動植物たちが目にしたものは親とはかけ離れた姿をしたまさに「異形の生物」だった。人類が生んだ「産業廃棄物」の中に「放射能」が大量に含まれており、生物の遺伝子を劇的に変えてしまったのだ。
数少ない動植物たちは生かすべきかどうか迷った。・・・しかし、着々と数が減少しつつある動植物たちは子孫を残すため、その子供に「ザギ」と名付け大事に育てることにした。
そして数年の月日が流れる・・・。
人類の争いは徐々に激しさを増していった。そして激しくなっていくたびに数少ない動植物たちが、狩られていく数も増えていった。
「オレタチニハナススベモナイ」
数少ない動植物たちは、生きる希望をなくした・・・。そのときだった。
これまで育ててきた「ザギ」が数少ない動植物たちを狩りに来た人間たちに襲いかかっていった。驚異的な跳躍力、スピード、そしてパワーで次々に人間たちを殺していく・・・。
そして「ザギ」は自分たちを狩りに来たすべての人間をたった1匹で殺してしまった。
数少ない動植物たちは恐る恐る「ザギ」に近付いていく・・・。
そして「ザギ」が振り返り、言った。
「オレハ・・・ニンゲンドモニ「フクシュウ」ヲスル。コノチカラガアレバ、ナニモオクスルコトハナイ。カクレスムヒツヨウモナイ。・・・オマエラ、コノチカラガホシクナイノカ?」
血まみれの顔で「ザギ」は笑う。
・・・動植物たちは一瞬戸惑ったが、すぐにうなずいた。
・・・・西暦2025年。人類は滅亡の危機を迎える・・・。
もはや争うほどの力も残っておらず、資源を捕りつくしてしまった人類・・・。
その時を待っていたかのように、「異形の生物」が人類を襲い始めた。
だが、人類には立ち向かえるほどの力が残っていなかった。ただ逃げまどうしかない人類に「異形の生物」はさらに追い打ちをかけていく・・・。
そして西暦2040年。人類は「異形の生物」によって制圧された・・・。
「チカラガホシイ」と願った、数少ない動植物たちの「意思と心」が
ついに、人類に勝った瞬間だった。
プロローグ 完
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初めまして。17旦那です。こういうのは初めてです。
・・・いきなしプロローグから始めたのは、まず本編に移るまでにどんな事があったのか説明がひつようだと思ったからです。
さて、この小説(もどき)の簡単な世界観と、登場人物のご説明をさせていただきます。
西暦2051年・・・地球は過酷な環境にむしばまれていた。荒廃した大地、汚れた海、高い放射能を排出する産業廃棄物の山が様々なところに積まれていた。
そのような過酷な環境の中、数少ない人類は「ある生物」から身を隠すようにほそぼそと暮らしていた。
「ある生物」・・・26年前人類の核戦争の終わりと同時に姿を現した異形の生物・・・人々はそれを「レヴァド」と呼んだ・・・。
同時期に人類はレヴァドを討伐する特殊部隊「レヴァター」を結成するも、12年前に部隊のすべての人間が死んで全滅したか・・・に思えた。
部隊の隊員の中で1人だけ死体がなかったのだ。そしてその男の名前は・・・。
登場人物
ヴォザ・・・この物語の主人公。12年前の「レヴァター事件」の生き残り。若いころにレヴァドに妻と子供を殺され、レヴァドに復讐するため「レヴァター」に入隊するも 12年前の事件で自分も重傷を負う。そのこと以来、東京で自分の姿を隠すように生活していた。しかし、とあるきっかけから自分にレヴァドの気持ちを把握する能力が目覚めた事を知る。その能力は何のためにあるのかを知るため、再びレヴァドを討伐することを決める。普段は明るく、誰とでも打ち解けやすい性格。44歳、本名は宜保遼太郎
ダイチ・・・本名島崎大地。15歳、10年前に両親と兄弟をレヴァドに殺された。
そして孤児となっていた所をヴォザに拾われる。それ以来ヴォザとともに東京で暮らしていた。だが、両親を殺されたというトラウマが10年たった今でも苦しめ、他人の血を見ると、たちまちその場から動けなくなってしまう。
普段はおとなしく優しい少年なのだが、多少怒りっぽい一面もある。
キーワード
レヴァド
西暦2025年を境に地球に大量発生した異形生物。その姿は動物のようなものから、植物に至るまで様々。放射能によるDNAの変化により、知能や運動能力などが爆発的に飛躍した。人類を「敵」と認識しており、姿を確認すると有無をいわさず襲いかかってくる。
レヴァター
大量発生したレヴァドを撲滅するために、生き残った人類達で結成した討伐部隊。
メンバーは軍人から一般人まで様々。結成当初は成果を上げていたものの、徐々にレヴァドに制圧されていき、そしてレヴァター事件にて、メンバーが全滅。そのことが誰にも知らされることなくレヴァターは消滅してしまった。
ハート・ブレイク
レヴァター達が、レヴァドを抹殺する際に行っていたとどめの一撃。強靭な肉体を手に入れたレヴァドはただ、傷を負わせるだけでは絶命するまでに至らないため、レヴァター達はレヴァドを行動不能まで弱らせたのちに、レヴァドの体の中心にあるハート(心臓)をブレイク(一突き)する。こうして初めてレヴァドを討伐したことになるのだ。
ハート・ブレイカー
レヴァターの中でも、もっとも優れた能力を持っていた人々の事をこう呼ぶ。
「レヴァドを弱らせる」という行動を省き、俊敏に動きまわるレヴァドの心臓を一発で仕留める能力の持ち主。
以上が補足説明です。新キャラ登場や、新しいワードに関しましてはそのつど紹介させていただきます。
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〜第1章の1〜 過去との決別
・・・・・・バシッ!!「ぐあっ!?」ヴォザは、ほおにかなりの衝撃を感じた。続けて「・・・とっとと起きやがれ、このぐうたらオヤジめ!!」という鋭い槍のような罵声がヴォザの耳に刺さる。(やかましい・・・。)ヴォザは名残おしそうにゆっくりと体を起こす。そして目の前にいる青年・・・ダイチを見た。ダイチは呆れた顔でヴォザを見ている。「やっと起きたか・・・このぐうたらオヤジめ。ほら、起きたんならさっさと仕事探しに行って働け〜!!」・・・ヴォザはうんざりした。この言葉をもう何年聞き続けてきただろうか。「あ〜、わかったわかった。そんな怒るなって・・・んで、飯は??」ダイチの言葉を軽く流し、逆に問いかけた。
「なっ!!!この・・・くそおやじがあああ!!!!!」ダイチの声が東京中にひびきわたった・・・。
「けっ・・なんだよ、あんなに怒ることねえじゃねえか。」
家を追い出されてしまったヴォザは集落の中心街を歩いていた。中心街とはいっても一番人が多く住んでおり、小さな掘立小屋のような商店が軒を並べているだけのつまらない場所だった。それでも自分の住んでいる所よりかは幾分にぎやかな場所であった。
「よっ!!ヴォザ、その様子だとまたダイチ君に追い出されたな??」顔なじみの野菜売りがヴォザをからかう。「へっ、ギャーギャーうるせーから俺から出てきたんだ!」
ヴォザは負けじと言い返す。「お〜お〜そりゃあ結構、それよりダイチ君のためにも早く仕事見つけなよ?」
「けっ、でっけぇお世話だ。」そう言い返しつつも、ヴォザは内心焦っていた。確かにダイチにこのまま生活費を稼がせるのも、「保護者」としての面目がたたない。(あいつを引き取った以上、俺にはあいつをちゃんと成人まで育てる義務がある。)頭ではわかっているのだが、具体的に何をすべきなのかヴォザにはわからなかった。
・・・結局今日も町をぶらぶらするだけで何もせず、ヴォザが気が付いた時にはすでに西の空が黄色に染まっていた。(・・・俺が子供のころは、真っ赤だったんだがな・・・ここ数十年でこの世界は何もかも変わっちまったな・・)昔の事を思い出しながらも、ヴォザは自宅へと戻った・・・。
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1−2
ヴォザが自宅に戻った時には、すでにまわりは暗くなっていた。しかし以前のように漆黒の空ではなく、濃い緑色の空になっていた。
なので周囲は夜だというのに明るく、月明かりが空の色を反射しているため集落全体を不気味な色に染め上げていた。
ヴォザも、若いころは不気味だと思っていたものの、年をとったせいなのか全く気にならなくなっていた。むしろ「これが普通」と思い始めていた。
しばらく物思いに老けていたヴォザだったが、このまま家の前に立っていてもしょうがないので、ヴォザは扉のドアノブを握り、ひねった。(ふぅ、鍵はかけられてねえな。)そのまま押しあける。ギィという派手な音が鳴った。
中では、テーブルの上で、ダイチが紙束を丁寧に仕分けしていた。どうやらよろずやの依頼内容が書かれた書類を整理しているようだった。
「いや〜若いのに仕事熱心だねぇ??」ヴォザはわざとからかうような口調でダイチに歩み寄る。「まあ・・・どっかの誰かさんがしっかりと働かないからね。」ダイチはヴォザを横目でみながら言った。「しっかし・・・すげぇ量だな。お前ひとりでこんなに仕事受け持ってんのか??」
「あ?・・ああ、俺が受けてんのは配達とかごみ処理とか、比較的楽で稼ぎがおおいもの。他のは別のよろずやにまわしてんだよ。んで、今はその書類の整理。」
(へぇ・・・。)ヴォザはダイチの向かいの椅子に座ると、自分の前に広がっている書類に目をやった。乱雑に散らばっている書類には、「産業廃棄物処理」「運搬」「植物栽培」など、様々な分野の仕事が記載してあった。「・・・あのさ、ボーッとみてるだけなら手伝ってよ、つか手伝え。」見かねたダイチが言う。
「あぁ?なんで俺が。第一これはお前の仕事だろうが・・・」「仕事してないやつにとやかく言われたくない。ほら!!この書類の束、分野別に仕分けして。あ・・っと配達とごみ処理があったらまた別にしといて。」ヴォザは言い返すが、ダイチにものの見事に逆襲され、仕方なくダイチの仕事を手伝うことにした。
ごみ処理・・・調理・・・配達・・・栽培・・・保育・・・栽培・・・ヴォザは言われた通り分野別に書類を仕分けしていった。
しばらくしてふとヴォザは、一つの書類で手が止まった。そこには「レヴァド討伐依頼」と書いてあった。「・・・ん?どうしたの?」ヴォザの手がいきなり止まったのを不思議に思ったダイチが声をかける。「・・・いや、なんでもねえ。」ヴォザはその書類を別の分野の場所に置く。その置いた書類をダイチが手に取った。
「ああ、これね。たまにあるんだこういうの。集落から集落に配達する時にレヴァドが襲ってくることがあるから、それを倒す。・・・まあ護衛みたいなもん・・・かな?もちろんそういう仕事は俺らの管轄外。全部別んとこまわすんだよ。」
そういうとダイチは、その書類をヴォザが置いたところに戻した。
「そういえばレヴァドで思い出したけど、最近ある集落がレヴァドの群れに襲われたそうだよ・・・詳しいことはよくわかんないけど。」ダイチはふと思い出したようにぽつりと言った。
「・・・ふぅん。・・あ〜疲れた・・・シャワー浴びてくるわ。」
ヴォザは手に持っていた書類を机の上に置き、浴室へと向かう。「あ・・・こら、せめて一束ぐらい終わらせてからいけ〜!!」ダイチの言葉は、むなしく家の中に響き渡った。
ヴォザは上にきていた白黒のシャツを脱ぐ。その下からは筋肉質の肉体が姿を見せる。しかしそれよりも目を引くのは、胸部からわき腹にかけて斜めについている3本の傷跡だった。ヴォザはこの傷をダイチにみせたことがない。いや、正確には見せないようにしてきたのだ。
ダイチはどんどんたくましくなっていく。しかしダイチにはやっかいなトラウマが残った。本当の両親を目の前にレヴァドに殺され、その返り血を大量に浴びたのからである。いまだに他人の血を見るとたちまちパニックを起こし、その場から動けなくなってしまう。「何がその引き金となるかわからない。」そのためヴォザは、この傷をダイチに見せないように生活してきたのだった。
衣服を脱ぎ終え、浴室に入り蛇口をひねる。ぬるいお湯がノズルから勢いよく噴射する。
しばらく頭から湯をかぶる。そして傷跡を自分の指先でなぞった。(レヴァド討伐・・・か。まあ俺にはもうできねえよ。はは・・・。)
ヴォザの肉体を生ぬるいお湯が全身を伝っていく。まるで今の自分を直接見ているような感覚をヴォザは感じた。
あまり長く浴びていると風邪をひいてしまうので、ヴォザは早々にお湯を止め浴室から出た。濡れた体をタオルで拭き、衣服を着こんだ。
そしてリビングへと戻るとダイチが椅子の上でぐったりとしている。テーブルの上にはきれいに整理された書類の束が並んでいた。ヴォザは横目見ながら通り過ぎ、冷蔵庫の中に入っていた缶ジュースと水を取り出し、缶ジュースをダイチの頭の上に置いた。「・・・冷たい」
ダイチは頭に上にある缶ジュースを持ち、プルタブを開けた。そして一気に飲み干す。
ヴォザはダイチの向かい側に座ると、手に持っていたペットボトルの水を口にふくんだ。「・・・やっと終わった。でも俺ができそうな仕事あんまし無かったな・・」
ダイチはため息をつく。「てかあんたが働けば俺も・・・。」
「おい・・・ダイチ。」ダイチの言葉をさえぎり、ヴォザが声をかけた。
「あ?なんだよ。」ダイチはぶっきらぼうに答える。「・・・いや、やっぱいいや。さてと、年寄りはもうねますかねぇ。」ヴォザはそう言って立ち上がると、寝室へと足を進めた。「・・・んだよ、まったく。いいか、明日こそ仕事見つけてこいよ!?」
「あ〜あ〜、わかったわかった、んじゃあお休みな。」ダイチの言葉を軽く流し、ヴォザは自分のベットに横になった。(仕事・・か、今の俺には一体何ができるんだろうな・・・。)
思えばダイチが幼かったころは周りに親切な人たちがたくさんいた。ヴォザが仕事に出ている間、隣の老夫婦が幼いダイチの面倒を見てくれていた。料理が作れないヴォザを見かねて向かい側に住む女性が、料理を作りに来てくれた。とにかく周りの人間すべてがヴォザ達を手助けしてくれていた。
だが、そういった周りの人たちはレヴァドに襲われ徐々にいなくなり、最終的には誰もいなくなってしまった。ヴォザは必死だった。ダイチの世話をしつつ、なるべく家から離れないように近場で仕事をしていた。時には稼ぎが足りず、盗みを働いたこともあった。とにかく毎日を生きるのに精一杯だった。
(今は・・・もう苦労することもねえんだよな・・・。)
・・・ヴォザは徐々に眠りにおちていった。
「・・・セナイ。オレ・・・エオユルセナイ・・。」
>どこかから声が聞こえる・・・・。
「オマエラニンゲンヲオレタチハイッショウユルサナイ」
>なんだ・・・この声は・・・?
>この世のものとは思えない声が、ヴォザに聞こえてきたが空耳だと思い込み、ヴォザは再び眠りに落ちて行った。
1−2 終
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1-3
「・・・んんん、くわぁぁぁぁ・・・・。」
ヴォザは、体をゆっくり起こす。そして時計をみると時刻は午前7時を回っていた。
(あ〜あ、やだねぇ年寄りは朝はこんなに早く目がさめちゃって・・・。)もう一寝入りしようとしたヴォザはふと思った。いつもと何かが・・・違う??
ヴォザは窓から外を眺める。いつもと変わらず静かな朝・・・いや・・・異様なまでに静かすぎる。
普段であれば、ここで生活している住人が動き出す時間帯であるため、普段は騒がしいくらいなのだが・・・今に至っては物音ひとつしなかった。
(どういうことだ・・・?)
胸騒ぎがしたヴォザは、寝巻を着替え表へとでた。「ダイチはすでに働きに出ているはずだ。とりあえず周辺を回ってみるか。」
ヴォザはなんとも言えない心境で町を回り始めた。
中央通り、裏路地と様々な場所を回ってみるヴォザだったが、どこを探しても人がいなかった。そしてとある裏路地の角を曲がった所で、ヴォザは「うっ・・。」と思わず声をを漏らしてしまった。ヴォザが見たもの・・・それは男性の死体であった。
首をかっ切られていて、胸に大きな爪痕が残っていた。その傷跡は間違えなくヴォザの胸部についている爪痕にそっくりだった。
「こ・・これは、いったいどうなってやがる・・・!!」
ヴォザはさらに町を散策してみた。すると次から次へと見るも無残な姿になった人の死体が放置されていた。そして同じように、胸に爪痕と首をかっ切られている。
ヴォザは確信した。この集落・・・東京はレヴァドに集団で襲われたのだ。そしてすぐにヴォザの脳裏にダイチの姿が浮かんだ。
「・・・ダイチを・・あいつを探さねえと!!そんでもって早くこの街をでねえとまじじぃ!!」ヴォザは町中走り回った。あいつが仕事の依頼を受けそうな場所から、普段は行かなそうな所まで全て探したが、結局ダイチは見つからなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・くそ・・・毎日ジョギングくらいはしとくべきだったな。」
ヴォザは道の真ん中に膝をつき肩で息をしていた。(どこにいっちまったんだ・・・)
そして、再び探し始めるため立ち上がろうとしたその時、ヴォザは体に力をいれた。
そしてヴォザは、全身の神経を周囲に張り巡らせた。(・・・この殺気は確実に俺へのもんだな・・・・・・俺の右斜め後ろにある建物の裏に1体・・・左斜め前にある商店の屋根の上に1体・・・そして正面の建物の屋上に1体・・・計3体・・・か?)
ヴォザは深く息を吸い、体制を低くして気づかれないよう身構えた。そして吸った息を思い切り吐き出すと同時に、正面の建物へと向かって走り始めた。
走り始めると同時に正面の建物から、黒い影がヴォザをめがけて突っ込んでくる。
黒い影が鋭い爪をかざして突っ込んでくる。
ヴォザはそれを最小の動きでかわすと、ダッシュの勢いを利用して黒い影の腹部に拳を入れる。「ぐぎゃあああああ・・・。」
黒い影・・・レヴァドは叫び声をあげながら建物の壁に叩きつけられた。
すぐさまヴォザは後ろを振り向く、そして足元に落ちていた錆びた鉄パイプを拾い上げると今度は道の中央に向かって走り出した。それと同時に二体のレヴァドがヴォザに襲いかかる。
ヴォザに向かって二つの爪が迫ってくる・・・だがヴォザはそれを紙一重で避けた。
「そうらこっちだ!!」
ヴォザの声に反応したレヴァドはヴォザのほうを向く。だがレヴァドの目に映ったのはヴォザの姿でなく目の前まで鉄パイプだった。顔に激しい衝撃が走る。
「ぐ・・おおおおおおおお・・・。」
叫び声をあげるレヴァドの後ろからもう一体のレヴァドが襲いかかる。
ヴォザはレヴァドに刺さっている鉄パイプを強引に引き抜くと、引き抜いた時の反動を利用し、攻撃を避ける。
そして飛び込んできたレヴァドの脳天に血まみれの鉄パイプを叩き込んだ。
脳天に攻撃を喰らったレヴァドは体ごと地面にたたきつけられた。
レヴァドは再び襲いかかろうとヴォザの姿を確認しようとするも見当たらない。
と、後ろにヴォザの気配を感じたレヴァドは振り返ろうとする。その瞬間、胸にドシュという衝撃が走る。その衝撃が鉄パイプと感知するまでそう時間はかからなかった。
ヴォザの声が聞こえる、「悪いがチェックメイトだ。まあ、運がわるかったと思え、」
声が聞こえなくなった瞬間、胸の衝撃が激痛に変わった。
Heart・break。レヴァドの叫び声が周囲に響きわたった。