ワザップ!フォーラム
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俺は社内を探り始めた。
確かに、物の配置等は同じだが棚に入っている物品が違っていた。
本がずらずらと並んでいてタイトルはどれも「人物名 ○○事件」
のように書かれていた。
俺は真っ先に「アリシア 毒鼠事件」と書かれた本を取った。
ページは真っ白で何も書いてなかったが、突如頭に当時の状況が思い浮かんだ。
目を見開いてアリスは俺に叫んでいる。
「アホか……お前は……!私を……殺すつもりか……!?
……もういい!白沢っ!!!」
彼女の腕はもうじき切り落とされる。
そう思って目を瞑った瞬間、また社内に風景が戻ってきた。
社内に記憶は戻ってきたがその後のアリスの台詞が勝手に思い浮かんだ。
「許してもらおうとは思ってないって言ったわよね?
そうよ。その通りよ。謝罪で許せるわけがないじゃない!」
「・・・・・・一度命の重さを知れ!」
「命の重さ……か」
俺はそう呟き、次は「シヅキ 元親子対決事件」と書かれた本を取った。
またしてもページを開くとあの時の状況が浮かんだ。
「前嶋様!危ない!」
シヅキはそう叫び、俺を突き飛ばした。
俺の銃は弾切れだ。
そうだ、俺はこの時もヘマしたんだ……
「グアアアアア!!!」
シヅキは目を押さえて倒れこんだ。
また社内に戻ってきた。
だがやはり続きが勝手に思い浮かんだ。
「病院になんぞ行っている間に・・・・・・
お嬢様は・・・・・・天国へ行ってしまうかも・・・・・・しれないのですよ!?」
「前嶋様も約束したのでしょう・・・・・・?
お嬢様がピンチな時は自分がどんな状況でも守ると・・・・・・」
「俺は……アリスを守れたんだよな……シヅキ……?」
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俺は次に「レイ ユートピア事件」を半分笑いながらも手に取った。
また情景が変わる。
「助けを求めたかったのよ。信頼できる女性に」
俺の口は勝手にどういう事か説明するよう言い出した。
「あんな目にあわせた男という人種は信頼できない。
だから、私の事を思ってくれる女性に私の心を知って、助けてほしかったのよ」
風景はまたしても社内へと戻った。
確かこの後はレイが服を脱いで、火傷の跡を見せてくるはずだった。
今思えば、男である俺に見せてくれたという事は
俺を男なのに信頼してくれた、という事だったのか……?
俺は今更気がついた真実に戸惑いつつ途中から気になっていた
「シオン ドール戦事件」と書かれている本を取った。
俺はこの時、シオンのキックをもろに受けて気絶していたのだ。
俺は本を開き、情景が変わるのを待った。
期待通り、目の前はあの病院の一室に変わった。
「いいか、レイは生きているぞ!
アリスも、志月も、みんな生きている!
こんな所で一人で死ぬだなんてどうかしてるぞ!」
「フフフ・・・・・・そうか、やはり君か。
ボクと同じニオイがするよ・・・・・・」
俺ははっとした。ドールは既に死んでいる……
同じニオイ……
「チッ!ブルータス、お前もか!
カズ、ちょっと寝てろ!」
記憶通り、シオンは俺にキックをしてきた!
あの時はここで気絶してしまったが今回はしっかりと意識が残っている。
だが、飽くまで記憶だからか体は動かせそうになかった。
「まさか君とこんな所で会えるとはね
てっきりあのまま墓地送りされていたと思ったよ」
墓地送り……?
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「確かに我はあの人間卒業試験で耐え切れず死亡した
だがドール、お前と同じように我は人一倍未練がこの世にある
だからこうして自分の死体を動かしてまでこの世にいるのではないか」
「君は天使、だけどボクは悪魔だ君と一緒にしないでほしい」
「我はお前がやっている事はいいことだと思う。
現に今の我の仕事の一つに似たような物があるからな」
「(選別の場の事か……)」
「それは一緒だとしても能力が違うだろう?
ボクは幽霊使い、君は預言者でしょう?」
「そこまで我と対立したいのか?
ならば仕方が無い!」
シオンはドールへ飛び掛り、マチェットで何度も切りつけた!
だが、ドールにはまるで効いていないようだった。
ドールは幽霊を誘導し、次々とシオンを苦しめた。
「ほぅら、もっと耐えないと他の幽霊がお前の体を奪ってしまうぞ?」
「そうか……4年前を思い出すな……
確か、我を置いて逃げたんだよな……?
爆破で顔は滅茶苦茶。他の人の顔の一部を移植し、口調を変えただけなのだがな……
失望した。お前の死なんて待たなくて正解だったようだな」
「あ……あぁぁあ!!!
お前は……お前はぁぁあっ!!!」
「我は疲れた、しばらく寝る。
自分の過ちにやっと気がついたならそこで寝ている男に殺してもらえ」
そしてシオンは近くの壁に倒れ、俺は突然体が動かせるようになった。
そしてドールは話し始めた。
「ボクの好きな人を守れなかった負け犬。
4年前にあの子を守れなかった幽霊さ・・・・・・」
「もう用は済んだ。
彼女はこの世にはもう居ないんだ。
ボクの事を待ってくれてなんかなかったんだよ。
あの子を守れなかったボクを彼女が許してくれるわけが無い」
目の前は突如社内へ戻った。
俺はしばらく立ちすくんだ。
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結局、俺はアリス、シヅキ、レイ、シオンに命を救ってもらっている。
(ジョンとは関わりが少なかったせいか個人的な命の危険を救ってもらった事は無いが)
そんな事を考えていたらシオンが部屋に入ってきた。
「時間だ、カズ」
「待ってくれ、一つ聞かせてくれ
シオン、お前は……ドールの——」
「残念だがその質問には答えられない。我からは察してくれ
としか言いようが無くてな。
——で、カズ、カズにとって生きる意味とは?」
「俺は、散々みんなに迷惑をかけた。
突然この会社に入って、アリス、シヅキにお世話になった。
シオンには予言って事でなんどか危険を回避できた事もあった。
レイにはどんな過去があっても前向きに生きるという強さを教えてもらって
ジョンは気がつかない所で活躍する裏の仕事という物を見せてもらった」
シオンは黙って聞いている。
なんだか不自然に思えたが俺は続けた。
「確かに今言った通りの恩もある。
だけど、みんな俺を助けてくれているし、沢山の事を教えてくれた。
精神的にも、肉体的にも、仲間の大切さも。
ただ、一つ、一つだけ俺は出来ていない事があるんだ」
「出来ていない事、とな?」
「ああ、感謝だ。
俺は感謝を言葉にも行動にもできていないんだ。
ここまで沢山の事をしてもらったのに俺は全く感謝ができてないんだ。
だから、俺はこんな所でくたばる訳にはいかないんだ!
みんなに、感謝を……お返しをするために……」
「それがカズの生きる意味、なんだな?」
「ああ、そうだ。
俺は元々軍に捨てられ、そのまま飢え死にするはずだったんだ。
だから、感謝できたらそれでいい。死んでも構わない」
シオンは目を瞑って頷いたり、首を振ったりを繰り返していた。
神やら天使やらと審議中って事だろうか?
「カズ、すぐに感謝しに戻るぞ」
「えっ?」
俺がシオンに何があったかを聞く暇も無く目の前が真っ白になった。
やっと風景が戻ったかと思えばそこはCyborg Soldier社の一室だった。
外からは銃声が聞こえる。
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「起きたか、カズ」
そう言って顔を覗き込んできたのはシオンだった。
「俺は戻って来れたんだな……?だが体は……どうして無事なんだ?」
「アリスだ。彼女の『力』が覚醒した。
回復<ヒール>のアリスと呼ばれていた彼女の本領発揮という所だな」
「それで……アリス達は……?」
「まだ外でカズの体を守るために戦っている。
相当自分を責めていたぞ?カズがこうなったのは私のせいだって。
だが心配するな、もう増援はなさそうだ」
そう言い終わると同時に銃声が止み、部屋にアリスが飛び込んできた。
続けてレイとシヅキとジョンも入ってきた。
「カズ!無事だったのね!
よかった……本当によかった……
このまま死なれたら、私……」
アリスが泣きそうになったので俺は焦って別の話題を持ち出そうと考えた。
「あー、それで俺の偽者が居なかったか?
そいつがここのボスらしいが……」
ここで全員の表情が固まった。
沈黙を破ろうとシヅキが話し始めた。
「彼の事はXと呼んでいます。
私達は皆Cyborg Soldier社に関わってますから彼の存在は知っています。
見つけては無いものの、居場所は大体把握しています。
行きましょう。これで終わりにするんです」
俺は黙って頷いてベッドから立ち上がった。
そして近くの机に置いてあった自分の装備を取って準備をした。
そういえばこいつらはXとやらの存在を知っているはずだったな。
Cyborg Soldier社の社員と子会社の社員な訳だし……
しばらく廊下を歩き続けると大きなスライド式ドアの前にたどり着いた。
近くのプレートには
「Human Ruin 用 人工血液生成プール」
と書かれていた。
ジョンがアリスのカードキーをカードキーリーダーに通すと
ドアは自動で開いた。
中には青い液体がたまっている25mプールがあり、奥にはXが立っていた。
「フン、全員揃っているようだな」
XはHuman Alive社の全員がいることを確認するとそう言い、笑った。
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「おい、X!これから水泳大会でもするのか!?」
「そうだな、お前らをここに泳がせてやる!」
Xがそう言った瞬間、プールのまわりにあったドアが開き
HumanRuinの兵士が入ってきた
「前島様、分かっているとは思いますがこの液体はHumanRuinの血です。
もし落ちれば、溶けて無くなりますよ?」
「わかってるさ、こいつらを返り討ちにしてやろう!」
俺がそう言うとシヅキは笑って兵士達に殴りかかった。
どうやら全員素手らしく、完全に格闘戦になっていた。
レイは心配も無く、ガンガンプール内へ投げ飛ばし
シヅキとアリスは二人で見事なチームワークをしていた。
シオンは自分のマチェットで余裕な状態だったが
俺とジョンに限ってはタイマン状態でも厳しい状況だった。
Xはどこかと見渡すと先ほどと同じプールの奥に立ってこちらの状況を
眺めているだけだった。
その時、取っ組んでいる最中の兵士とは違う兵士がどこからか飛び込んできて
俺はバランスを崩してしまった。
兵士は俺を押し倒してきてあと一歩で落ちる寸前まで来てしまった。
更にもう一人飛び込んできて俺はもうおしまいだと思ったが
どうやらその兵士はバカだったのか俺の上にいる兵士を突き飛ばし
一緒にプールへ落ちていった。
俺はそのバカな兵士に一声「ざまぁみろ!」と言ってやろうとプールを覗き込んだ。
だが、そこに居たのは俺を落とそうとした兵士とジョンだった。
「……!?嘘だろ……?ジョン!
シヅキ!ロープか何か無いか!?」
俺が突然叫んだためみんなが振り返った。
「無理ですよ!
ロープなんてありませんし、あったとしてももう……」
俺が再びプールへ目を向けるとそこには顔の皮が剥がれて
もはや原型を失いつつあるジョンの顔があった。
「私の……事は……放って……奴を……」
「そんな……!ジョン!しっかりしろ!
そもそも、なんでこんなに溶けるスピードが遅いんだ!?」
俺がこう言うといままで黙って見ていたXがようやく口を開いた。
「そうだ、このプールはわざと酸度を低くしているのだ。
お前たちが転落したとき、より苦痛を与えられるようにな」
俺の中で何かが切れる音がしたのを自分でも分かった。
「エエエェェェェェックス!!!この野郎ォォォォッ!!!」
俺は全速力でXの所へ走った。
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「ククク……かかって来い!前島一樹!」
俺は全力でXに向かってパンチを繰り出したがあっさり手で受け止められた。
「甘い!」
そう言ってXはパンチを仕返してきた!
俺は吹っ飛ばされてまたプールへ落ちそうになってしまった。
「カズ!無茶よ!……うわっ!」
アリスの声が聞こえ、振り向いてみると
アリスどころかシヅキもレイもシオンもHumanRuinに捕まっていた。
「さぁ、どうする?前島一樹
ここで全員沈めてやってもいいんだぞ?
そうだ、先ほどの『質問』の続きとしようか。
TTSの在り処は何処だ?」
「だから知らねぇって言ってるだろ!?
知らない事は知らないんだ!」
「さて……最初に誰を沈めようか……」
「(そうだ……ハッタリをかければ……)
フン……落としても知らないのだから答えは同じだぞ?」
「よし、アリスを落とせ」
俺のハッタリを完全無視してそう指示するとアリスを掴んでいた兵士は
アリスを突き落とそうとした。
その時だった。
突如その兵士が苦しみだし、そのまま自分からプールへと落ちた。
その謎な行動に全員がポカンとしているうちに
アリスは俺に護身銃として隠していたレミントン・デリンジャーを投げ渡し
シヅキはバックキックで兵士を蹴り落とし
レイは自分を捕まえていた兵士を大腰で投げ倒し
続けてシオンを捕まえていた兵士を首を捻じ曲げて倒した。
どうやらシオンの意識が無さそうな事から
兵士に乗り移り操った、という事だろう。
俺はアリスから受け取ったレミントン・デリンジャーでXを撃った。
1発目ははずしたものの、そこでXは姿勢を崩し
2発目は見事に腹に命中した。
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「グフッ……よくも……」
「もう終わりにしろよ……
この兵士達はCyborg Soldier社が誘拐した子供達だろう?
これ以上犠牲者を出さないでくれ……」
「お前なんかに何が分かるんだ?
TTSさえあれば、俺は俺の居るべき世界に戻れる
だがそのTTSが何処にも無い!
前島一樹、お前は在り処を知っているはずだ!」
「何を根拠に言ってるのか分からないからもう一度言う。
俺はTTSなんてものは知らない。見たことも無い。
お前は何か勘違いしてるんじゃないか?」
「クッ……時間が無いようだ……
いいか、前島一樹、俺はTTSを手に入れるまで何度でも追求してやる
たとえ、どんな手を使おうとも……」
そういい残してXは近くのドアから逃げていった!
「おい!まてクソ野郎!」
残念ながらドアは閉まったまま開かなかった。
「クソッ……逃がしたか……」
みんなの方を見るとみんな黙って俺を見ていた。
再び沈黙を破ろうとシヅキが話し始めた。
「TTS……ですか。
まさかこんな所でその単語を聞くとは……
ここで話すのもアレですから戻りながら話しましょう」
こうして入り口に戻りつつTTSについて説明してもらった。
シヅキによればTTSは少し前にXが話した通り
TimeTranscendencySystem(時空超越システム)俗に言うタイムマシンだった。
指輪型で時空を崩して使用者を過去、未来に飛ばすという
あまりにもファンタジー(笑)な物品だった。
どうやら、稀に誤作動でパラレルワールドにも飛んでしまう
という事があるらしく、Xはその誤作動に巻き込まれたため
再びTTSを手にして、元の世界に戻ろうと考えていたらしい。
「じゃあ、やっぱりあいつは別の世界の俺自身って事か?」
「そうですね。
ですが、私には彼がどうしてここまでして
TTSを手に入れようとしているのか理解できませんね」
「根本的な質問をしたい、TTSの在り処を誰か知っている人はいるのか?」
「非常に申しにくい話なのですが、私が知っています」
こればかりは皆が驚いた。
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「葉科瀬真理という裏の科学界ではかなり有名な研究者がいるのですが
彼女の研究所に保管されています。
あ、Aliverなんかはそこで作らせていただきました」
「なら、さっさと渡してXを元の世界に戻してやればいいんじゃないか?」
「先ほども話しましたが誤作動として時空ではなく
空間が崩れる可能性は非常に低いものです。
そして彼が本当に元の世界に戻るだけだとは到底思えません。
もし、過去に戻られて過去の前島様を殺したとすれば
世界はどう変わると思いますか?」
「いや、そもそも俺は軍に捨てられていた——」
「私達に出会わなかったとすれば?
HumanAlive社は廃れていた、Cyborg Soldier社に襲われていたかも知れません」
「まさかそんな……」
「いいですか、前島様の存在はあなたが思っている以上に重い物になっています。
自分の価値をそう簡単に捨てないでください。
もうあなたは軍に捨てられた時とは全く違う物になっているんです」
俺が謎の責任を感じている内に入り口の大きな扉にたどり着いた。
俺は運ばれてきたため、入り口は見たことが無かったが
人口血液プールの時と同じようなスライド式の大扉だった。
突如、その扉が開いたと思ったら
白沢さんと警官隊が入り込んできた。
「全員突入しろ!徹底的に証拠を押さえるんだ!
やはりここにいたか、HumanAliveよ……」
挑発的な白沢さんのセリフに対してアリスが言う。
「白沢さん、証拠は出てこないと思いますよ?
HumanRuinは死ぬ際に溶けて無くなります。
ここのボスも既に逃げてしまっています」
「そうだな、そいつを捕まえるというのもあるが
お前達に逮捕状が出ているのも忘れては無いだろうな?」
そう言って白沢さんは俺達に逮捕状を見せ付けてきた。
逮捕状にはレイを匿っていた事、大量殺人を犯した事、公共物(高速道路)破壊
その他色々が書かれていた。
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それを見たシヅキが反論を始めた。
「意義があります。
まず、大量殺人ですが証拠はありません。
先ほどお嬢様も仰ってましたが兵士の死体は0です。
それから公共物破壊、こちらはHumanRuinの兵士から逃げるための最終手段です。
しかも、厳密に言えばロケットランチャーを使ったのは
HumanRuinであり、私達ではありません」
「どうやら本当に死体が見つからないようだな
フン、その2点については見直そう。
だが、そいつは?西村零については?」
「それは……」
俺は一つ賭けに出ることにした。
シヅキの前に手を出してこれ以上話させるのを止めた。
「俺らが彼女を捕獲しました。
HumanAlive社に居たのはその時、彼女の身元を確認し
本当に西村零か確かめていたんです。警察の手間が省けるようにね」
「そんな事、大きなお世話だ。余計な事をせず、さっさと引き渡せば——」
「お言葉ですが、警察から一種の依頼として重要人物捕獲は出ているはずです。
適当な情報を流し、警察を混乱させるのは懲罰物かと思うのですが?
白沢さん、彼女は西村零です。逮捕をお願いします」
シオン以外の皆が完全に驚いた顔をしていた。
俺のとんでもない裏切り発言にショックを受けているレイの顔が目に映った。
「そうか、ご苦労だった。西村、こっちへ来い!」
「裏切ったのね……最低……」
レイが完全に絶望の眼差しと言葉を俺に浴びせながら手錠をかけられていた。
俺はその瞬間を見て笑い、こう言った。
「で、白沢さん、俺の見間違いでなければ
西村零の確保協力は通常5000万でした。
ですが、我々HumanAlive社の会社として捕獲したため報酬は2倍
更に、逮捕に直結させる重要な情報提供をしたため更に2倍と書かれていました。
それから、彼女の犯罪の証拠はどれぐらいあるんでしょうね?
Cyborg Soldier社は証拠隠滅のスペシャリスト
彼らの証拠を見つけているのならともかく、無いですよね?
ならば法廷に出したとしても警察側の勝ち目はあるのでしょうか?
保釈金は最重要人物だという事を含めても証拠不十分で2億程度でしょう。
報酬金をすべて保釈金に回してください。これでいいですか?」
「く……フン、いいだろう。警察も全力で証拠を掴んでやる。
法廷で会おう!」
そう言い残して白沢さんは社内へと消えていった。
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結局の所、レイは警察に連れて行かれた。
「念のため」事情徴収をするということらしい。
「レイが保釈されたら、みんなで祝いましょう。
やっとCyborg Soldier社を追い詰められたわけだし」
アリスが落ち着いた様子でこう話したがみんな笑顔を見せなかった。
「……だよね、まずはこれをなんとかしないとね……」
アリスが落胆してこう言うのも無理は無い。
なぜなら、HumanAlive社は今にも崩れそうなぐらい
ボロボロになっていたからだ。
無事であるはずだと思われていたHumanAlive社だったが
どうやら警察とCyborg Soldier社の両方の襲撃を受けていたらしい。
「でもさ、逆に考えたら残っていたら俺達までボロボロだったって訳だろ?
まぁ……ジョンの件はあるが肝心なみんなは無事なんだし……」
ジョンの件——という言葉が無ければいくらかマシだった。
「お嬢様、この際リフォームしましょうよ。
この会社も最初と比べてかなり成長しました。
リフォーム代でしたら十分あるはずですし——」
「違う、違うのよ、志月。
私達さ、またこうなるんじゃないかって……」
みんなが顔を見合わせた。
「Xは逃げたし、結局ドラインもいなくなった。
Human Ruinの兵士は絶対あれだけじゃない。
もしかしたら、レイを有罪にできる証拠だって出てくるかも……」
この発言でみんなが下を向いてしまった。
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だが、俺はもうアリスのマイナス発言に耐え切れなくなっていた。
「アリス、だから俺達がいるんじゃないか。
俺はなぁ!この会社に救われたんだぞ!?
くどいほど言ったが、軍に捨てられた俺をこの会社は救ってくれた!
俺に……もう一度、家族をくれた」
アリスの目がハッとしたのがわかった。
「もし……もし、バラバラになってしまうような事が起きたら
その時は俺が全力で阻止する!
もう二度と、家族を失いたくないから……」
そうだ。
俺がこうなったもの家族を失ったから。
軍に入るきっかけである孤児院に入ったのも
家族を失ったから……
「みんながそう思わなくても、俺は思ってるんだ。
みんなは、Human Alive社っていう家族なんだ、と」
次、家族を失えば今度こそ俺に未来は無い。
仮に家族があってもHuman Alive社を失うぐらいなら死んだほうがマシだろう
「俺は、それぐらいここが大切なんだ」
アリスの目には涙が出ていた。
そして、飛びついてきて俺を叩きながらも叫んだ。
「バカ!カズのバカ!
知らないわよ?後悔しても……!」
「もう後悔してるよ。
軍では死にたくなるほどあった
筋トレする時間もないぐらい忙しくてね」
俺はなんとなく、つまらないジョークを言ってみた。
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「ふぅ……やっとリフォーム終わったか……」
早朝からの荷物の整理だとか眠たく、忙しい仕事を終えて俺は呟いた。
リフォームは大掛かりなもので、まず本社を2階から1階に
そして階の移動はわざわざ外に出なくていいように社内に階段をつけた。
……これが普通なのだが。
「さて……一息ついてる暇もないわ。
私はこの事件の報告書だとか書かなきゃいけないし……」
「お嬢様、私も手伝いますよ」
そう言ってアリスとシヅキは早速中へ入っていった。
「我らも中に入ろうぞ。
外に居たって仕方が無いだろう?」
シオンのこの発言により、俺らも中へ入った。
リフォームが終わるときには既にレイも保釈されていた。
中はもう過去のHumanAlive社とは違うキレイさがあった。
2階は社員のプライベートスペースとなった訳だが
ついに個人個人に部屋ができていた!
「アリス、やっと部屋が分かれたか」
「ええ、貯金していた分、かなり出したわ。
でもやっぱりリフォームしてよかったわ。
これで客も増えればいいんだけどね」
そう言ってアリスは再び手元の書類に視線を戻した。
シヅキはアリスの隣でPCを使って文章を打ち込んでいる。
「そういえばシヅキ、タバコはもういいのか?」
「はい。この戦いの中で思ったんです。
物に頼らず、自分の能力で戦おうと。
それに、いくら電子タバコだとしてもタバコはタバコです。
19の私が吸うには早すぎたようですね」
シヅキもアリスと同じくすぐに視線をPCへ戻した。
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「あれ!?我の段ボールはどこに行ったのだ!?」
と突然叫びだすシオンに対し、アリスは
「ああ、捨てた」
とそっけなく返した。
「なぁに、やっとシオンのベッドも調達したんだし
もう段ボールは必要ないだろ?」
「本当かアリス!?
今すぐ確認する!」
と言って、ドアから飛び出そうとしたため
「おい!もう階段は家の中だぞ!?」
と言った。
その階段の横でレイがこちらを見ていた。
「レイ、裁判はあるが俺達が必ず勝つさ。
心配するなって」
「そうね、なんせ証拠も残さないCyborg Soldier社だもんね。
さて、愛しのアリスの手伝いでもしようかしら」
結局、レイのアリス好きはそのままのようだった。
飛びついてくるレイにアリスは今日も抵抗しているようだった。
その隣にいるシヅキが突然言う。
「おっと、そろそろ依頼を取りにいかないといけませんね……」
「待った!今日は俺が行くよ。
忙しいだろ?」
「恐縮ですがお願いします」
俺は軽く頷いて外へ出た。
晴天、雲一つ無い青空だった。
日は昇り始めてはいたが十分暑い。
ポストの中には依頼がいくつか入っていた。
追跡、相談、犯行予告……
Cyborg Soldier社が動かなくても毎日事件は起きている。
事件が起きれば被害が出る。
当然、そのような事で自分と同じ境遇に立たされる人がいる。
俺達は被害を最小限に抑え、悲しむ人を少なくする
そのためにこうして活動しているのだ
そう言い聞かせて社内に戻ろうとした。
俺は社内に入る前にもう一度この空を目に焼き付けようと思って空を見上げた。
先ほどと変わりない青空だった。
「人間の生存……か」
そう呟いてドアを閉めた。
———END———
-
プサイ:はいはい、という訳でやっと終わりました。
カズ:現時点でワザップ!小説フォーラムNO.1の長さだな・・・
プサイ:ここまで完璧に読んでくださった人が一体何名なのか・・・
カズ:そして意味不明かつ説明不足な文章でどこまで理解できたか・・・
プサイ:そこは言わんでよろしい。
カズ:さて、これからどうするつもりか?小説は終わったわけだし・・・
プサイ:えっと、ゲーム作り(体験版まで)はいよいよ終盤に!もうすぐです!
カズ:その告知はどうでもいい。
プサイ:何を言うか!?楽しみにしてる人がいるんだぞ!?
カズ:「数名」ね。
プサイ:とりあえず、次の小説は
「特殊諜報部隊HumanAliveの真実に迫る!HA解説」か
「特殊諜報部隊HumanAlive G」か
「原子番号27+」のどれにしようかと悩んでます。
ちょこっと解説
・特殊諜報部隊HumanAliveの真実に迫る!HA解説
本小説の一回読んだだけでは分からないこの小説の隠された真意
これをしっかり説明しよう、という企画
・特殊諜報部隊HumanAlive G
G=外伝 という事で世界観は同じのパラレルワールドで話を続ける
(ゲームが2なので先の話を書くわけにはいかなくて・・・)
・原子番号27+
特殊諜報部隊HumanAliveの原点である今は無き原子番号27をリメイクして
新たに書き始める。(登場キャラの一部、全体的なストーリーの改変)
原作は明らかな屑だったので、ちゃんとストーリーを組んで書きます・・・
プサイ:どれに対して需要があるのかわからないので
小説の感想フォーラム、プサイへメールにより確認したいと思ってます。
(どれも新規に小説ページを立てる予定です。)
カズ:作者も見ての通り需要が不明ですのでご協力お願いします・・・
最後に作者より
始めの方に書きましたが(このコーナーを除いて)134スレと現時点で小説フォーラム
最大級のボリュームになってしまって、非常に読みづらかったと思います。
この小説はよさげ・・・
と思っても134という莫大な数字を見て萎えた人もいるかと思います。
とにかく、最後まで読んでくださってありがとうございました。
ゲームも現在急ピッチで作ってますのでもうしばらくお待ちください。
予定通りに作成が進めば今年の7月19日から行われる
ウディタコンテストに出品する予定です。
(↑訂正:7月19日じゃなくて7月29日〜一週間でした・・・)
小説に興味を持っていただき、もしよろしければ
ARPG(アクションロールプレイングゲーム)特殊諜報部隊HumanAlive2を
よろしくお願いします。
では、また次の小説で...
(1スレ目にあるゲームの作成状況は完成まで更新を続けます)