ワザップ!フォーラム
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映画館爆破未遂事件から1週間が経過しようとしていた。
「ふぅ・・・・・・手がかりも何も無し!
イエドとかレイ絡みの事件は続発しているというのに!」
「証拠も何も残さないだなんて流石だよな・・・・・・」
突如会社のドアが開いた。
どうやら白沢が帰ってきたようだ。
「白沢!やっと完成させたのね!」
「ええ。一度襲撃に会ってしまい、余計に時間がかかりましたが
とりあえず我が社特製の銃、Aliver(アライバー)は完成しました」
「襲撃にあっただって?」
「まぁ簡単に対処できたので大丈夫です。
とりあえず説明させていただきますね」
白沢はアリスに銃を渡した。
「お嬢様のAliverはご希望通り
ドットサイト、グレネードランチャー、サイレンサーをつけました。
グリップの強化もしているのでそれなりに撃ちやすいかと」
次に俺に銃を渡してきた。
「前嶋様は連射時の正確さを求めるため、ベースをMP5にしました。
グリップを前方にも取り付けてより正確な射撃ができるようにしました。
また、フラッシュライトに加えてご希望通りホロサイトもつけました」
最後に前方がどう見てもSVDな銃を見せてきた。
「私のはオートマチックライフルという事でベースをM4参考にSVDを使いました」
「あ・・・・・・それで・・・・・・」
「社内費なので代金はいりませんよ」
「おっと、そうだった」
「これでこれからの仕事がより一層はかどるわ」
「ところでお嬢様、先ほど情報が無いと仰いましたか?」
「ええ。手がかりもなくて大変だわ」
「情報屋はお使いにならないのですか?」
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「はぁ?あの情報屋?使わないよ。あんなボッタクリ女」
「なんだ?折角情報屋があるのに?信頼性が無いとか?」
「そんなはずありません。彼女は日本一の情報屋です」
「うん。情報は的確だしほぼ全てを知ってると言ってもいい。
だが情報提供料金が異常だ。絶対に使わない」
「お嬢様、失礼ですが何のためにそれほどお金をためているのですか?
ざっと数えて1億はあるのでは?」
そんな莫大な資産があるのか!!!
「いや、ダメだ。これはもっと重要な事に使う。
それにまだ1億までいってない」
「重要な事ってなんだよ?」
「カズ、悪いけど関係のない事よ」
「行ってみるだけ行った方がいいのでは?」
「分かったわよ!行くだけよ!行くだけ!」
俺は一般人を(なぜか)装うため私服・・・・・・というかジーパンにYシャツで行き
せっかく俺は一般人風なのにアリスはHuman Alive迷彩で
白沢はメイド服のままその情報屋の所へ行く事になった。
武器は俺がレミントンを持っているだけ。
しかも——
「なぁ、山道が続いてるじゃないか」
「そうよ。あの女は山ん中の神社にいるんだもの」
「はぁ!?こんな格好しなくて良かったじゃん!」
「そんなに私服が嫌いなのか?」
「そういう訳ではないが・・・・・・」
「じゃあいいじゃない」
「前嶋様、どうしてもとおっしゃるなら私のメイド服と交換——」
「おっしゃらねぇよ!ていうかここで着替えるのかよ!」
「前嶋様・・・・・・あまり変な事は考えないでください」
白沢は真顔で同じトーンで話し続ける
「こっちの台詞だよ!」
・・・・・・こんな感じで俺らはひたすら山を登った。
山を上る事20分
短いようで長かったがなんとかどりついた。
そこは確かに神社だった。
扉が閉まっているため中の様子は見えない。
「辺紫苑(ほとり しおん)!出て来い!」
アリスが思いっきりその神社に向かって叫んだ。
すると扉の奥から声が聞こえてきた。
「むぅ・・・・・・?その声はアリスか?
今更なんのようだ?」
「情報屋としての仕事の依頼だ」
「なるほど。だが断る」
「はぁ!?とりあえず出て来い!」
あれ?アリス、行くだけって言わなかったか?
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「我は神にのみ従う。貴様のような下女には従わぬ」
「がぁぁぁ!もういい!こっちから行ってやる!来い!」
来いとかいいつつ、俺の腕を右手で引っ張る。
義手だから手加減無しで非常に痛い!
「おいおいおいおい!痛いって!離せって!」
アリスは力いっぱいに神社の扉を開いた。
中には巫女服を着た少女が正座で座っていた。
しかも・・・・・・猫耳が・・・・・・
「む!?神の・・・・・・神聖な場所に土足で入ってくるとは何事ぞ!?
今すぐ立ち去るべし!」
「なんだこいつ?」
ちなみに見た目10歳ぐらい
「こいつが情報屋兼巫女の辺紫苑よ。
ほら、紫苑、こいつが・・・・・・」
「前嶋一樹!そこのメイドが白沢志月!」
「フン!情報屋としての腕は変わってないみたいね」
「巫女なんて我にとっては副職業だからな」
あれ?さっき神聖などうとかこうとか・・・・・・
「と に か く 一体なんの用だ!?」
「ああ、情報提供だ。最近来てなかったから金欠スレスレだろ?」
「当たり前だ!定期的に来ないから一回の金額が跳ね上がるのだ!」
「ではこれはどうだ?情報提供をいつでも無償でする代わり
Human Alive社で住ませてやろう。飯も食わせる」
「な・・・・・・何をするつもりだ?洗脳か?実験か?」
なんちゅー被害妄想・・・・・・
「そうか。残念だ。じゃあ用はないわ。
さよなら。飢え死にして苦しめ」
「今日のアリスは鬼みたいだな・・・・・・」
「お嬢様は辺様に対していつもこのように接しておられます」
「ちょっと待つのだ!分かった!よし、行こう!行ってあげよう」
「いや、嫌々こられてもこちらとして困る。さっさと飢え死にしなさい」
「いやああぁぁあ!!ごめんなさい!住ませて下さい!」
「じゃあまずはそのふざけた猫耳をなんとかしろ」
「アリス!?これは地毛・・・・・・いや、自耳だ!」
「じゃあその顔の両サイドについてる物体はなんだ?飾りか?」
「これも我の耳だ!第一、我は天の遣い、すなわち天使であるぞ!?
そんな態度を取っていたらバチがッ!」
「おや、副職業って言ったのは誰だったかなぁ?
ていうか、天使って・・・・・・」
「・・・・・・うるさいうるさいうるさああい!とにかくこの耳は本物だ!」
「カズ、引っこ抜いてあげて」
俺はこのお遊びが早く終わって欲しいがために辺の猫耳を取ろうとした。
だが・・・・・・
「取れないぞ!?」
「イタイイタイいたああい!本物っていってるだろうがッ!
我に暴力とは・・・・・・いい度胸だ!」
「もういい。白沢、カズ、戻ろう・・・・・・」
「置いていくな!このひんにゅ○!」
「白沢、カズをつれて先に帰ってくれ」
「はい。前嶋様、行きましょう」
山を下り始めた頃、ゴンという鈍い音が聞こえたが後ろを見たら
すばらしい物が見えると思って振り返らなかった。
・・・・・・こういう訳でHuman Aliveにまた一人おかしな子が入社しました。
日本語的に俺もおかしな子になるが気にしたら負けかなと思ってる。
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「で、我の寝床は何処だ?」
「あるじゃないか。そこのダンボール」
「わっ・・・・・・我は捨て猫でもなければ蛇でもないぞ!?
ふざけるな!しっかりとした寝床だ!」
「捨て猫にはピッタリじゃないか。
潜入任務にも向いている。すばらしい寝床だ」
「辺様、一階にありますのでどうぞ」
「あ〜我の事はシオンでいいぞ」
「いえ、私の立場として呼び捨てなどできません。仕事ですから」
「ん、まあいい、我を連れて行ってくれ」
「では失礼します」
白沢は突然シオンをお姫様だっこで連れて行った。
「おおおお!?おお?おおお!何を!?」
極端だなぁ・・・・・・本当に・・・・・・
連れて行けとは言ったが・・・・・・
まさか猫扱いしているのか・・・・・・?
「ふぅ。これで様々な情報が無料で手に入る。
これほど楽な事は無いわね」
「だがヤツらは・・・・・・Cyborg Soldierは優秀な特殊部隊だぞ?
簡単に情報を取れるものなのか?」
「カズ、確かに彼女はろくでなしだ。
人としては結構終わっていると思う。
だが情報屋としての腕は間違いない。それは私にもわかる」
アリス、結構酷い事言ったぞ
「そうか・・・・・・ならいいのだが・・・・・・」
そして夕飯。
「お嬢様、夕飯の準備が終わりました」
「よし、行くわよ」
リビングに着くと座席は3個あった。
だが、食事は2人分しかない。
「白沢よ、我の分はどうしたのだ?」
「申し訳ございません。なんせ今日突然だったので準備が間に合いませんでした。
キャットフードならあるのでどうぞ」
「た・・・・・・食べる訳ないだろ!というかどうしてキャットフードがあるのだ!?」
「このような事が起こりうると思いまして——
あ、レーションがありますのでどうぞ」
レーション・・・・・・響きだけで良くないが・・・・・・
「タッパーに入れ替えてはありますが普通に食べられますよ」
予想外にもカレーが入っていた。
・・・・・・当然排出物では無い。
「それからお嬢様、お風呂沸かしますので食後、歯を磨いてからどうぞ」
「了解、ご苦労様」
「白沢が居ない一週間が嘘みたいだ。本当に楽・・・・・・」
「軍生活の方がもっと嘘みたいじゃないか?」
「まぁそうだな」
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食後は白沢の指示通りアリスが入った。
「あ〜、いい湯だったわ。次いいわよ」
俺はさっさと風呂に浸かった。
一人入ったぐらいでは温度は変わらない。
むしろ多少さめていた方が俺にとっては丁度良い。
扉の奥から誰かが来る音がした。
「あ?白沢?バスタオル念のためチャージ・・・・・・ってうわっ!!??」
なんと突然扉を開けてきた!
しかも白沢じゃなくてシオンだった!
よく見りゃ身長が低い・・・・・・
「ん?カズか。そんな驚かなくてもいいだろう」
堂々と浴場へ入ってきた。
「うわわ!勘弁してくれよ!」
「どうした?我と一緒に入るのが問題あるか?」
「あるよ!大有りだよ!ワザップ的にこれはまずいだろ!消されるっ!」
「あははは!轍みたいな反応をするなよ!」
「ちょっと待て、いろいろと整理しよう。
まず、轍(わだち)を知らない人はどうするんだ!?」
「ん?作者が↓らへんに解説を書くだろ」
※轍とはプサイ作の今は無き小説、原子番号27の主人公の名前。
シオンが書けというので書きました。
「というかこいつも3次元が見えてるのか・・・・・・」
「オマエモナー」
「うわっ!よく考えたらそうだ!俺も見えてる——
ってそれはどうでもいい!
どうしてシオンが入ってきたんだ!?」
「アリスが次いいわよって言ったから」
あ・・・・・・そういえばアリスはいつもそんな感じで合図出してるから
いつものように言ってしまったのか・・・・・・
「じゃあ、どうして俺がいるのに平然として風呂に入る!?
俺が入ってるんだから出てくれ!」
「ん?なんで出なきゃいけないのだ?」
「というかお前何歳だよ!?」
「我は今16歳だが?」
「えええぇぇええ!?この体でこの身長で16!?
俺と同い年じゃないか!?」
「ほう、カズも16歳か。
体・・・・・・変態!!!何見ているのだ!?」
しまった!思わず目線が・・・・・・
「変態ってなぁ・・・・・・まず、入ってくるのが悪い!
おいおい!髪洗おうとするなよ!話聞けよ!」
「まぁいいではないか。我のロリな体を見て喜ぶがいい」
「ごめんなさい!ごめんなさい!お願いしますから出てください!
ワザップ的に結構危険な所行ってますから!
削除対象ギリギリですから!」
ちなみにシオンは股をタオルで隠し、髪を洗っているため、胸が(自主規制)
「さりげなく実況しているではないか。↑みたいな文を入れるから——」
「それは作者のせいだ!とにかく、出て・・・・・・」
とき既に遅し。
シオンの髪はシャンプーで泡だらけになっていたため今更出ろとは言えない。
打つ手が無くなったため、俺が風呂を出た。
壁を見てできるだけシオンの方を見ないようにした。
「アリス・・・・・・あのシオンって子、いろいろと危険だな・・・・・・」
「だから言ったでしょ?人として結構終わってるって」
「ていうか16歳なのか?あの体で・・・・・・」
「全くよ。不思議なものね」
「ところでアリス、夕飯に何飲んでた?」
「へ?お酒だけど?」
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「やっぱりな。そういう物を飲んでるから成長が止まりっぱなしなんだよ」
「別にいいじゃない。わざと止めてるんだから」
「よくねぇよ!それに未成年が酒を飲むってまずいだろ!」
「ねぇ、本当によくなかったら白沢が止めるでしょ?」
「ああ・・・・・・まぁそうだな・・・・・・」
「カズには言えないけど理由ぐらいあるわよ」
俺に言えない理由・・・・・・?
「さて、明日からまた仕事頑張ろう」
次の日の朝食
「あ〜、今日は絶対に外出してはいけない」
「お?何か情報があるのか?」
「うむ。きっとすぐにニュースになるからテレビを付けていれば分かるだろう。
とにかく今日は社内でできる仕事をするがよい」
「このクソ巫女め、偉そうに・・・・・・」
「とりあえず全国の巫女さんに謝れ」
「お嬢様、これでしょうか?」
白沢はテレビを指している。
画面には研究所のネズミが脱走
と書かれている
「強い毒性を持ったネズミが研究所から脱走。
市民のみなさんは外出を絶対にしないでください
だって」
「おお!これだこれ!我が言いたかったのはこれだ!」
「強い毒性?」
「恐らく開発段階の毒をネズミで実験していたのでしょう。
私の情報ですとその毒は大変危険でして
万が一噛まれたら3分以内に正確な対処を取らないと死に至ります」
「3分だと!?救急車を呼んでも間にあわねぇな」
「シオン、このネズミは誰かが捕獲するのよね?」
「政府軍が対処するとは思うが恐らく我らも協力することになるであろうな」
その時だった。
会社の電話が鳴り響いた。
もちろん白沢がバッとすばやく取る。
通話が終わると——
「あ〜、お嬢様、やはり我々も協力しなくてはいけないようです」
「嘘でしょ!?死んだらどうするのよ!?」
「捕獲ではなく、その場で殺しても構わないそうです」
「アリス、仕方が無い。行こう」
「おい、巫女、お前もだ。来い」
「なっ!?なぜだ!?なぜ我までお前らに協力せねばならぬのだ!?」
「はぁ?お前もHuman Aliveだろうが」
「だ・・・・・・だましたな・・・・・・?」
「だます?何を言っているのだ?確かにここを無償で貸すとは言ったが
依頼に協力しなくていいとは言ってないだろ?」
「このクソアリスめ!覚えていろ!準備してくるっ!」
アリスを馬鹿にしつつもシオンは準備を始めた。
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まず、俺はHuman Alive迷彩にAliver
アリスもHuman Alive迷彩に手袋、そしてM1911(ハンドガン)
白沢はメイド服にバッグを背負っている。武器は無いようだ。
そしてシオンは巫女服のままで背中にマチェット(ナイフの一種)を鞘付きで背負っている。
「シオン・・・・・・巫女服のままで行くのか・・・・・・」
「その前にだ、シオン。国から許可は取っているのか?」
「許可?なんの許可だ?」
「銃刀法違反だ。刃渡りが明らかにオーバーしている。しかも戦闘用じゃないか」
「うむ。我は銃などつかわぬ。だが剣術に長けているから大丈夫だ」
「いや、答えになっていない。警察来たらパクられるぞ」
「アリス、お前はヤクザか」
「まぁいいではないか。警察がダメでも神が許可している」
「いいわけになってない」
「待て待て、神は言っていたのだ!刀を持っていけと!」
「あ〜そうですか。好きにしてください。刑務所入っても助けてやらね」
「白沢、いつもアリスはシオンに対してこんな素っ気ないのか?」
「はい。これが普通なので全く問題ないです」
こんなムードでネズミ捜索が始まってしまった。
「う〜ん・・・・・・手分けした方が良くないか?」
「ダメよ。万が一の事があったらどうするのよ。
おい、シオン、何か場所が分かりそうな情報は無いのか」
「知るわけなかろうが。
どうせドブネズミなんだから排水溝とかに・・・・・・うわっ!?」
突然シオンが尻餅をついたかと思ったら一匹のネズミが飛び出てきた。
「おっ・・・・・・おまいら!こいつだ!このネズミだ!」
俺たちはそのネズミからみんな2mぐらい離れて様子を伺っていた。
「どうする・・・・・・?捕まえるか?」
「やめた方がいいわ・・・・・・ここで始末しましょう・・・・・・」
俺がAliverをネズミに向けた瞬間、ネズミが襲い掛かってきた!
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「うわっ!このっ!」
連射したがいくら命中精度が良くてもネズミの回避能力が高ければ意味が無い。
そしてネズミは俺の腕めがけて飛びついてきた。
「カズッ!危ない!」
アリスは義手の右腕で思いっきり俺を突き飛ばし
左手でネズミを片手で捕らえようとした。
当然ながらネズミは避け、アリスの左手の中指に噛み付いた。
「ぐわあああああ!」
アリスが噛まれた瞬間を見ていたのは分かったものの
とんでもない叫び声をあげたので不覚にも驚いてしまった。
だが、実際のところネズミに噛まれるとホッチキスでバチンと止めたような痛さであり
言葉で表しきれないほどの苦痛を伴う。
しかも今回は毒入りだ。
「お嬢様!
・・・・・・辺様、マチェットを貸してください」
無表情で呼びかけ、無表情で物事を頼む白沢に
ポカンとしつつシオンはマチェットを貸した。
「前嶋様、この布でお嬢様の腕の付け根を締め付けてください」
「うぐ・・・・・・待った、マチェットはカズにやらせろ・・・・・・」
・・・・・・!
アリスは腕を切断するつもりだ・・・・・・!
「では辺様、お願いします」
「ふぇ?ああ、うん・・・・・・」
シオンはまだポカンとしつつ腕を締め付けた。
「お嬢様、麻酔打ちますよ」
バッグに入っていた例の戦闘用麻酔薬を打ち込んだ
「カズ、私はお前の命を助けてやったんだ。
次は私の命を助けろ・・・・・・!
それでお互い様だろ!?」
「ばっ・・・・・・馬鹿言うなよ!んな事できるわけねぇだろ!」
苦痛にもがくアリスを目前にして俺は立ちすくんでいた
「アホか・・・・・・お前は・・・・・・!
私を・・・・・・殺すつもりか・・・・・・!?
・・・・・・もういい!白沢っ!!!」
「・・・・・・分かりました」
白沢は俺の目の前に置かれたマチェットを取り
勢いよくアリスの腕の付け根よりすこし手前めがけて振り下ろした。
できれば見たくない光景だった。
アリスの右腕は地面に落ち、切断面からは大量の血があふれていた。
「辺様、もっと強く締め付けてください!」
「あわわわ・・・・・・わかったのだ・・・・・・」
「何をしているんですか!?前嶋様!?救急車を!」
「ゴフッ!白沢・・・・・・カズに・・・・・・まかせるな・・・・・・」
白沢は救急車を呼んだ。
アリスの意識は半分飛んでいた。
俺は何もできなかった。
ただこの悲惨な状況を見ているだけしかできなかった。
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結論から言えばネズミはあの後政府軍により、射殺された。
アリスは一命を取り留めたものの、左腕をなくした。
それではHuman Aliveがやっていけないという事でついに左腕も義手にすることを決意した。
それでもリハビリで2週間は病院に入院する事になった。
事件の次の朝
当然ながらいつもよりものすごく暗いムードだった。
「・・・・・・前嶋様、おはようございます」
「ああ・・・・・・おはよう・・・・・・」
「カズ、あまり気にすべきではない。アリスは生きているのだ。
死んだわけじゃない」
「だが・・・・・・」
「無力だったといいたいのですね。
ですが前嶋様、それを引きずっているのが一番いけないことです」
「え・・・・・・?」
「引きずっていたら何も変わりません。
それを反省し、次にどう生かせるかですよ」
「なーなー、アリスにお見舞いへ行くってのはどうだ?
我も一応心配であるし、社長が居なきゃ仕事なんぞできぬ!」
「それもそうですね。当然前嶋様も行きますよね?」
俺は無言でうなずいた。
朝食後、Human Alive迷彩を着て、装備は無しで行く事にした。
白沢はメイド服、シオンは巫女服でとんでもない服装3人組で行く事になった。
バスも電車も使うため、正直なところはずかしい・・・・・・
病院に着いても患者さん達の視線は鋭かった。
「お嬢様の病室はここですね」
白沢がドアを開け、俺らが入っていくとすぐにアリスはこちらを向いた。
「アリス!我は貴様のためにわざわざ——」
「本当にカズは馬鹿ね!」
笑顔が一つも見えず、本気で怒っているようだった。
流石のシオンも黙って引き下がった。
「折角白沢が手際よく行動していたのに・・・・・・
あの流れで進んでいれば私は手を失う程度でよかったのよ!?
もし私があの場面で白沢に任せなかったら毒は体まで行ってたのよ!?
そうなったらどうするつもりだったのよ!?」
「あの・・・・・・謝って許してもらおうとは思ってない。
だが、しっかりと言葉で言っておきたい。
申し訳ない、本当にごめん!」
俺はその場で土下座してした。
「許してもらおうとは思ってないって言ったわよね?
そうよ。その通りよ。謝罪で許せるわけがないじゃない!」
「あの・・・・・・お嬢様・・・・・・」
「会社の件でしょ?全部任せる。
私が居ない間、白沢が代理社長よ」
「でさ・・・・・・アリス・・・・・・」
「シオンは白沢の補佐。
何かあれば私に情報をよこしなさい」
「アリス・・・・・・俺は・・・・・・」
「・・・・・・一度命の重さを知れ!」
結局話が持たなかったため、これで帰る事になった。
文が長くなるからとかじゃなく、本当にこれで会話が途切れた。
帰り道、もっと暗いムードで帰る事になった。
他の人の視線などこれっぽっちも気にならなかった。
だが、アリスの言った「一度命の重さを知れ」という言葉が何度も脳内で再生された。
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アリス退院まで残り10日
俺らは社内でできる仕事しかやらなかった。
というか、やれなかった。
白沢が緊急の電話の対応をしていて、その白沢の対応が
「申し訳ござません。『爆弾解体技術』を持った社員が居ませんので受けられません」
なんて言う始末だった。
間違いなくイエド絡みの事件なのに・・・・・・
「アリスか?我だ。我。何?我々詐欺?ちげーよ、シオンだよ。
イエドとかいう奴が仕掛けた爆弾の解体依頼があったけど断った。じゃあね」
正直これを聞いて俺は更にショックを受けた。
アリスが居ないだけでこれほど酷い事になるとは・・・・・・
ちなみに、病院内でトランシーバーだとか電波を飛ばすなんて
とんでもない事なので、普通の電話を使っていた。
結局、シオンはゴロゴロして白沢は電子タバコを吸いながらパソコン作業
俺はプライベートルームで一人反省会をし続ける毎日だった。
アリス退院まで残り5日
「あ〜、暇だぁ!カズ、何か無いのか!?」
「何かってなんだよ!?それこそ情報の何か無いのか?」
「おし、アリスに聞いてみる——
あ、もしもし、アリス?我だ。だから我々詐欺じゃねぇっつてんだろボケ!」
なんか5日前よりかなりヒートアップしているが大丈夫なのか・・・・・・?
「ん、そう。何か依頼があればなぁって・・・・・・ん?
そういえばそんな依頼あったな。じゃあね。さっさと病院抜け出せ」
普通そこはお大事にだろ・・・・・・
「そんな依頼あったなって・・・・・・?」
「あまりに暇すぎて今駐留してる依頼を一通り探してみて
ちょっと心当たりのある依頼があってね、それの事かなぁって・・・・・・
あ、探してくるから待っててくれたまえ」
にしてもシオンのキャラはいつになったら固定するんだ?
「あった。コレだよコレ」
シオンは依頼書をヒラヒラさせている。
それを取って内容を確認してみた。
「どれどれ・・・・・・えぁっ!?子作りを手伝って欲しい!?
なんなんだ!?この依頼はっ!?」
「ああ、それでしたか。依頼者が女性のため処分に困っていたのですよ。
ちょうど良かったです。是非お願いします」
「おいおい!?それはおかしいだろ!?」
「カズ、おかしくはなかろう。
第一、暗殺以来みたいに人殺しの依頼じゃなくて
人作りの依頼なのだからいい仕事ではないか」
「うまい事言ったつもりか!」
「それにお嬢様が仰っていた命の重さを知る事もできますよ」
「白沢も白沢でキレイにまとめたつもりにするなよ!」
「ついでに童貞も卒業できるから一石三鳥だな!
やったね!カズちゃん!家族が——」
「やめてえええええ!!!コロちゃんは流石にまずい!」
「ワザップだから?」
「そう!ワザップだから!
本物のライトノベルとは訳が違うんだよ!
アレな内容はNGなんだよ!」
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「ど・・・・・・どうして・・・・・・どうしてこうなった・・・・・・」
結局俺は行く事になりました\(^o^)/オワタ
「はい。電話で確認も取れました。
恥ずかしいので一人で来て欲しいそうです」
俺は既に半分放心状態になりつつもHuman Alive迷彩を着て出発した。
依頼者のいるマンションに到着すると入り口で依頼者と思われる人物がいた。
「Human Aliveの方ですね?よろしくお願いします」
普通に20前後のお姉さんだった。
なぁ、この展開大丈夫なのか?
部屋に案内され、ベッドルームまで案内される。
とりあえず、ワザップ的にここは逃げ出した方がいい気がするのだが・・・・・・
「恥ずかしいので脱ぐ間だけ後ろを向いててもらってもいいですか?」
「え?ああ・・・・・・はぁ・・・・・・」
俺は指示通り後ろを向いた。
その時、突然ロープが俺の首を絞め始めた。
「ウグっ!やめろ・・・・・・!」
「まさかこうも簡単に捕まえられるとは思って無かったわ!この変態が!」
クソ・・・・・・ワザップ的には安心したが本能的にはかなり危険だ!
それに手足まで縛り付けやがった!
てか俺は変態じゃねぇよ!
「さぁ、死にたくなかったら答えなさい!
アリシア・シルヴェールは何処にいる!?」
「アリス?そんな事聞いてどうするんだ!」
「質問に答えろ!」
更にロープをきつくしてきた。
「こっちの質問に答えたら教えてやる!」
「フフフ・・・・・・立場が分かってないのかしら?」
その女は包丁を取り出した。
「俺を殺すつもりか?残念ながら脅しは効かない」
「あら?脅しで終わるとでも思った?」
突然女は俺の右足を切りつけた!
「クッ!だから言ってるだろ・・・・・・お前は何者なんだ?」
「しぶといわね・・・・・・」
更に女は左足まで切りつけてきた!
「うごっ!!!へへ・・・・・・馬鹿か?傷つけようが殺そうが何も出ない」
「この頑丈野朗が!」
ついには銃まで取り出して、俺の眉間に突きつけた
「アリシア・シルヴェールは何処だ!?」
「日本語分かってるのか!?」
「もういいわ。ここで死になさい!」
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突如ドアが開く音がした。
「教えるも何もここにいるからね」
「アリス!?」
扉に立っていたのはAliverを構えたアリスだった。
「クソッ!2人まとめてここで死ね!」
女はアリスめがけて発砲した。
・・・・・・俺めがけてだったら間違いなく死んでた。
「所詮下っ端は下っ端か・・・・・・」
アリスは3発ほど打ち込み、見事女の足にヒットさせた。
そのうち一発は俺のロープにあたり、ロープが解けた。
「ク・・・・・・よくも・・・・・・!」
「そぉい!」
俺は女に全力で殴った。
女は殴られた反動でそのまま壁に激突して気絶した。
「ふぅ・・・・・・クソッ!足が・・・・・・」
「最初から最後まで馬鹿丸出しね・・・・・・全く」
「アリス・・・・・・どうして分かった?病院は?」
「感謝するなら情報屋に感謝しなさい。
シオンが『早く病院抜け出せ』って言わなかったら気がつかなかったわよ」
「ああ・・・・・・あれって俺が危ないって言う意味だったのか・・・・・・」
「それに病院は精密検査があったらしい。
もし残っていたら酒飲んでる事ばれちゃうところだったわ」
ちなみに現在アリスの左腕には義手がある。
「あの・・・・・・それでさ・・・・・・」
「そうね。私はカズのせいで左腕をなくして両腕義手になっちゃったからね。
それに今回も更に借りを作っちゃったからね。
どう責任をとってもらおうか——」
「どんな事でもかまわない」
「・・・・・・じゃあ、これでどう?
どんな事があっても私を必ず守る」
「それでいいならOKだ」
悪魔で『この時は』こんな軽い事でよかったのかと思っていた。
「じゃあ決まりね。
・・・・・・この女は警察に出しましょうか」
「なぁ、このハンドガンもらっていいかな?」
「証拠物品・・・・・・にもならないか。
別にいいんじゃない?戦利品って事で」
俺は床に落ちている女の使っていたGSR(ハンドガン)を拾った。
「.45ACP弾を扱う装弾数8のタイプか・・・・・・まぁバックアップにはいいだろう」
「レミントンだけじゃあ対処できないわよね?」
「そりゃそうだろ!第一あれは護身用だし、戦闘にはちっとも向いていない!」
こうして俺たちは警察に通報し、会社に帰った。
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「そういえばお嬢様、病院から電話がありましたよ?」
落ち着いた様子で話す白沢。落ち着くも何も常に無表情だし・・・・・・
「ああ、抜け出してきた。あそこはいろいろと危ないわ。
酒が飲めないとか私にとっては一大事よ」
「それもそうですね。それなら仕方が無いですね」
白沢まで酒を飲んでいる事に同意しているようなので俺は酒の件は触れない事にした。
「シオン、今回はなかなか役に立ったじゃないか」
「フフン!我と神の連係プレーを見たか!」
「神だ神だってお前私より2歳年上だろ!?いい加減中ニ病は卒業しろ」
「嘘じゃない!本当に我は神のお告げを聞いてお前らに伝えているのだ!」
突如会社のドアを叩く音が聞こえた。
「こんな時間に誰だ・・・・・・?」
話が飛んでいるので解説するが、俺たちが会社に着いたのはおよそ午後の6時。
夕飯を食べ、会社で今日の反省と明日について話し合っている最中であった。
現在時刻は午後の8時。通常こんな時間に会社を訪れる人は少ない。
・・・・・・そもそもここに来る人自体少ないが・・・・・・。
俺がドアを開けると、そこには全身黒のスーツに手袋
夜だというのにサングラスをした銀髪の背の高い女性だった。
俺はとりあえず
「あ〜、申し訳ありませんが今日の営業は終わってます」
と言った。だが——
「悪いな、病院から抜け出した患者がいて、しかも誘拐犯らしいので来た」
「誘拐犯?患者は私かもしれないけど誘拐犯ではないわ」
その女性はあたりを見回す。
俺を見て、シオンを見て
(巫女服に猫耳というスタイルが気になったのか多少顔が引きつったのが分かった)
アリスを見て、白沢で目が止まった。
「・・・・・・志月か?志月なのか!?」
アリスを見ると気まずそうな表情と焦った表情が混じっていた。
「白沢?知り合いなのか?」
「知り合い?知り合いなんて物じゃない!この子は私の娘だ!」
え・・・・・・?
-
「私は県警の白沢聖那だ。4年ほど前、私の娘が誘拐された。
だがここにいる!どうしてだ!?お前が誘拐したのか!?アリシア・シルヴェール!」
「ゆ・・・・・・誘拐だなんて人聞きの悪い事言わないでよ!」
「白沢・・・・・・さん?志月さんはメイドじゃあなかったのですか——」
「メイド!?ふざけるな!この子は警察になるはずの優秀な子なんだ!
誘拐されてからずっと探し続けていた!」
「なーなー、どうして居ると分かったのだ?」
「病院に同僚の見舞いに行ったら患者リストにアリシア、貴様の名前に
付添い人に志月の名前があったからだ!」
「アリス、知り合いなのか?」
アリスの表情は怒りに移ってた。
「知り合い・・・・・・?違うわよ・・・・・・敵よ・・・・・・私の・・・・・・敵・・・・・・
私のママを奪った・・・・・・最低な裏切り者・・・・・・」
「裏切る?スパイを捕まえるのなんて警察として当然のことだろう?」
俺には話しの流れがサッパリだった。
多分読者にも分からないと思う。
「あの・・・・・・お嬢様、この方が私の母だという事でしょうか?」
「お嬢様!?アリシア!貴様は志月にお嬢様と呼ばせているのか!?
それにどういうことだ!?私の事を忘れているようではないか!」
「ちょっと待ってください、あなたがお母様なのですね?
少しばかりお嬢様とお話させてください。時間は沢山あります」
「フン、好きにしなさいよ」
「お嬢様、あと読者様を代表して前嶋様、一階で詳しく話し合いましょう。
辺様はここで待機していてください」
シオンは黙ってうなずいた。
俺たちは一階のリビングに行った。
今回ばかりは白沢も席についた。
「お嬢様、上下関係なしてしっかり話しましょう」
「・・・・・・分かったわよ。ちゃんと言うわよ・・・・・・」
-
「私のママ、セシリア・シルヴェールは優秀なスパイだった。
白沢聖那(以下白沢さん)とは友達だったらしく、情報屋の役割だったらしいの」
「現在の辺様との関係みたいな物だと考えればよろしいですね?」
「まぁそうね。でも、白沢さんは警察に入った。それはママも知っていた。
ある日突然、白沢さんはママを逮捕した。もちろんスパイ容疑で。
今まで友達で情報屋だった人が、突然警察として動き出したのよ!?
ママは白沢さんを信じていたのに裏切ったのよ!」
「過去については分かりました。では私の誘拐と記憶の件は?」
「だから・・・・・・だから、全てを奪ってやろうと考えた。
ママは私に逮捕されるまでずっと、スパイの基礎を教えてくれた。
それを応用させて白沢さんから大事な物を何か探っていた。
捜索を続けると白沢の子供、つまりあなたを奪えばいいと考えた。
いつも大事そうに育てているあなたを」
「じゃあCyborg Soldierのメイドって話は嘘なのか?」
「半分嘘。私は奪う前にCyborg Soldierに捕まってしばらくそこで諜報を学んだ
みんな人間卒業試験に合格して特別な能力を手に入れていく。
その中に一人、私に能力をみせてくれるって人がいたの」
「話が読めてきましたね。吸収<アブソーブ>のドラインですか?」
「そう。ドライン。彼に依頼したのよ。
学校の帰りに白沢聖那の娘、白沢志月の記憶を吸い取ってなくしてくれと。
能力を手に入れて舞い上がっていたのか、彼は快く引き受けてくれた。
私はその場に居た。あなたから記憶が抜かれる瞬間を見て
それで記憶をなくしたあなたに私は——」
「頭を打って記憶が飛んだのかしら?あなたはCyborg Soldierのメイドよ
って仰いましたね。確かに私の記憶はそこより前がありません。
ですが、どうやら私には感情とやらもないようですが?」
「そうよ。白沢さんの全てであるあなたを奪って
あなたからは人間らしさ、すなわち記憶と感情を盗るようにドラインに頼んだのよ」
これでわかった。
白沢がいつも無表情なのはそもそも感情がないからだ。
「では、お母様が誘拐犯だと言っても仕方が無いのでは?」
「・・・・・・そうね。ごめんなさい。本当はもっと早く言うつもりで、でも——
でも、カズが来たあの日、カズが来る事になっていなければ私はあの日、話していたの」
え?これじゃあまるで俺が悪いみたいじゃないか・・・・・・?
「そうですか・・・・・・話してくださってありがとうございます」
「ごめんなさい!」
アリスは突然土下座した。
-
「今思えば、とんでもない事をしたって反省してる・・・・・・
だから、だからせめてもの償いとして記憶と感情を戻すように頼んでるの!」
「ドラインにですか?どうやってですか?」
「シオンに頼んで次に出没しそうな場所を探し出して
待ち伏せして、本当に来たから交渉したの。そしたら・・・・・・」
「そしたら・・・・・・?」
「戻してほしければ1億よこせと・・・・・・
だから・・・・・・だから一生懸命に依頼を受けて、わざと高めの料金とって・・・・・・
お金ためて・・・・・・一刻も早く記憶と・・・・・・感情を・・・・・・ひっく・・・・・・」
泣き崩れるアリスを白沢はすっと支えた。
「左様でしたか。ありがとうございます。
お嬢様が私のために考えてくださった事もしらず、失礼な発言をしてしまいました。
申し訳ありませんでした」
「もう・・・・・・いいのよ・・・・・・
私にメイドとして仕える必要は無いのよ。
白沢さんの所に戻って・・・・・・。
私なんて、警察にでも出してよ・・・・・・」
「お嬢様、本当にごめんなさい」
白沢はアリスを離したかと思えば、突然殴った。
「ッ!?」
「それはお嬢様とは思えぬ発言ですね。
私はお嬢様の事をこれっぽっちも悪く思っていません。
むしろ、お嬢様と一緒に居られる事こそが記憶と感情の無い私の生きがいなのです。
1億まであと一歩。そこで全てを突き放すのですか?
警察に捕まることで全ての罪が許されると思っているのですか?
お嬢様、今の発言は撤回してください」
アリスは当然驚いていたが俺も驚いた。
なぜか白沢まで驚きだした。
「・・・・・・あなたがいいなら撤回はするわ。
でも、白沢さんにはどういうのよ?」
白沢は再び無表情に戻った。
「私にまかせてください」
白沢が先頭に立ち、2階への階段を上る。
会社のドアの前までくると、白沢はアリスの方を向いた。
「お嬢様、私はどこまでも、いつまでも、お嬢様のメイドです。
そこはしっかりと理解してくださいましたよね?」
「ええ。しっかりと分かったわ」
白沢はやはり無表情で
「では行きましょう」
と言ってドアを開けた。
-
「どう?話はまとまったの?」
「はい。しっかりとまとまりました。
あなたは私のお母様である事も判明しました」
「ほら。分かったでしょ?アリシア、貴様を誘拐犯として逮捕する」
「お母様、それはいけませんね」
「なんだと!?」
「確かにあなたは私のお母様です。ですが、今の私はHuman Alive社の社員であり
アリシアお嬢様に仕えるメイドです。それに——」
「ふざけるな!私から娘を・・・・・・あなたを奪って、あなたは記憶まで盗られたのよ!?
それにあなたの運命まで変えて・・・・・・!」
「運命?私はこの仕事を誇りに思っています。
それに、裏切り行為の方がよほど酷いと思いますよ?お母様」
「アリシア!私の娘を洗脳したのか!?
ふざけるな!この子は私の娘だ!決定権は私にある!」
「お嬢様は洗脳などしておりません。
決定権はあなたにある?
お母様こそふざけないでください。
決定権はあなたではなく、私本人にあるはずです。
私ももうすぐ20歳ですよ?いつまでもあなたの元に居ると勘違いしないでください」
「な・・・・・・!?・・・・・・だが、誘拐したのは事実だ!そうだろう!?」
「私は誘拐されたというよりは助けてもらったと思っていますが?」
「助けてもらっただと!?どういうことだ!」
「先ほどいったように私はこの仕事を誇りに思っています。
こんな世界に連れて行ってくださったのは他でもない、アリシアお嬢様です。
本人がうれしがっている誘拐などありますか?」
白沢さんは震えていた。
そしてポケットから銃を取り出し、アリスに向けた。
「なんでもかんでも貴様の思う通りに行くと思ったら大間違いだぞ!
アリシア!よくも私の娘を・・・・・・!
ここで殺してやる!」
「お母様!今すぐ銃をおろしてください。それが警察の行動ですか?」
「警察なんて関係ない。
志月・・・・・・あなたはもう、私の子じゃなくていいのよ・・・・・・
だから、お前も・・・・・・こいつの次に殺してあげるわ・・・・・・」
「お嬢様に手出しはさせませんよ!」
「アリシア!ここで死ね!」
社内に銃声が響き渡る。
だが、白沢さんの持っていた銃が突然はじき飛んだ。
白沢さんは白沢の方を見た。
俺も白沢の方を向くと、白沢は銃を構えている。
どうやら白沢は白沢さんの銃を打ち落としたようだ。
・・・・・・ややこしい文章だ。
「志月・・・・・・これで終わりだと思うなよ・・・・・・私は警察だ」
白沢さんは会社を出た。
社内の空気は重く、みんな黙っていた。
ただ、アリスが白沢に「ありがとう」と言ったぐらいだった。
-
白沢の母登場の次の日。
いつものようにベッドから起きる。
いつものように朝食を取る。
いつものように今日の依頼を探す・・・・・・はずだ。
だが、今日は違った。
アリスはまだ昨日の件を引きずっているようだった。
「お嬢様、いつまでもくよくよしていられません」
「白沢さん、あなたの事を公務執行妨害で逮捕するつもりかもしれないのよ?」
「いい度胸ですよ。私を逮捕だなんてできるものならやってみてほしいですね。
それに逮捕されるのはお嬢様ではなく私です。お嬢様はご心配なさらずに」
「本当に私に忠実なのね・・・・・・安心したわ」
「おお!神は言っているぞ!
今日の夜の10時に電子レンジを8分まわせと言っておるぞ!」
「なぁ、こういう空気でどうしてそんな中ニ発言をするんだ・・・・・・」
「な!?我は聞こえたのだ!神が言っていたのだ!」
「シオン、レンジを回せとか馬鹿な発言をする神がいるか?」
「シオン、とりあえず空気を壊した事を謝ったほうがいい」
「辺様、流石に今のは酷すぎます」
アリス、俺、白沢が順番にシオンを叩く。
「な・・・・・・!なぜだ・・・・・・神は言っていたのに・・・・・・」
「神は神はってお前は何者だよ!巫女じゃねぇのかよ!」
「我は巫女だ!神のお告げが聞こえる巫女だ!
この猫耳で神の声を——」
「はいはい。ネコちゃんは引っ込んでろ!」
アリスがシオンを蹴った。
「このクソアリス!痛い目に合ってもしらないからなッ!」
シオンはダンボールに隠れた。
ってあれ?あんだけ批判して結局気に入ってるのか・・・・・・
「今日の依頼は特に無い。今日は休みにするか・・・・・・」
「確かに私たちにも休養は必要ですからね」
「白沢、こいつの弾が欲しいのだが・・・・・・」
俺はGSRを白沢に見せた。
「.45ACP弾ですね。こちらへどうぞ」
-
俺は白沢と共に1階へ行って弾を探した。
「前嶋様、冷やし中華始めましたの反語って
ラーメン止めましたで正解なのでしょうか?」
「!?またとんでもない質問を・・・・・・
そんなの知るかよ!というかそれある芸人のネタだろ!」
「おっと、そうなのですか。こちらが.45ACP弾です。
お嬢様と相談した結果、弾は社内費で負担する事に決めました」
「そうか。ありがとう」
弾を装填した後2階の会社に戻ると
アリスは机に突っ伏して
シオンはダンボールで寝て(完全に気に入ってるだろ・・・・・・)
白沢はアリスの机の横で電子タバコを吸っている
という完全リラックスモードだった。
驚いた事にこの状態が続き、夜を迎えてしまった。
「我はそろそろ寝るぞーおやすみー」
「私も失礼させていただきます」
シオンと白沢は次々と会社を出た。
「ん?残業か?」
「まぁね。昼やるべきだったけどすっかり寝てしまった。
もう10時だ。カズ、電子レンジを8分まわしてくれ」
「結局やるんかい!」
「あいつ、結構ふざけた事を言っておきながらそれが正しくなるから困るわ」
俺も1階に降りて着替えようとしたまさにその時だった。
2階から何かが倒れるような音が聞こえ、戻る事にした。
会社に戻ろうとしたのはいいのだが、どうやら鍵がかかっていて中に入れない。
会社の中からは聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「アリス、久しぶりね」
「久しぶりも何もまだ1ヶ月くらいだろ」
「あなたも私の彫刻コレクションの一つにしてあげるわ」
「気持ち悪い。まだその性格直ってないのか」
「抵抗できないからって暴言はよくないわよ」
「はぁ?死ねば?」
なんというか・・・・・・
アリスの対応がシオンの対応とそっくりなのだが・・・・・・
「あなたがここで死ぬのよ。その後はゆっくり観賞してあげるわよ」
「このっ!近寄るな!」
「ほら、やっぱり抵抗できないんじゃない!
やっぱりこの力の前ではどんな武器も無力ね」
俺は思いっきりドアノブをガチャガチャ回した。
だが、開かない。
「外で誰かがいるみたいね。でもこれで終わりよ。アリス」
「そうか。幼馴染だろうがお構いなしで殺すか・・・・・・残念だ」
「クライアントには忠実に。それはなんでも屋として当然でしょう?」
「Human Aliveはなんでも屋だがCyborg Soldierはただの殺し屋だろうが」
突然、8分間まわしていたレンジがチン!となった。
ただそれだけである。それだけなのに・・・・・・
「な・・・・・・うわ・・・・・・いや・・・・・・やめてぇ!」
突然叫びだすレイ。
しかも後ろから誰かが・・・・・・!
「前嶋様、私です」
白沢だった・・・・・・
「常識的に考えて鍵を使えば簡単に開きますよ」
白沢は鍵で普通に開けた。
・・・・・・俺は馬鹿だな。
「お嬢様!ご無事で?」
「ええ。私は大丈夫よ」
アリスの前には頭を抱えて倒れこんでいるレイがいた。
「いやあああ!殺さないで!誰か助けて!」
「な・・・・・・なぁ、アリス、こりゃどういうことだ?」
「過去のトラウマですね」
-
「すこし長くなりますが説明しましょうか。
人間卒業試験ではある寄生虫を脳に植えつけるのです。
その寄生虫が覚醒して人間卒業試験は合格するわけです。
ただ、その寄生虫が成長するのには成長ホルモンと
何かしらのトラウマが必要なのです。
人間卒業試験に合格した人が皆、
体格が子供なのはその寄生虫に成長ホルモンが奪われているからです。
お嬢様が酒を飲んでいるのは成長ホルモンが出ないようにするためです」
「なるほど・・・・・・それなら納得だな・・・・・・」
「ただ、過去のトラウマですから何かが原因で
フラッシュバックが起こる可能性があります。
彼女の場合、電子レンジに関係するトラウマがあったのでしょう」
「補足説明するわ。
その過去のトラウマと関係のある特殊能力が手に入るわけなの。
レイの場合、電子レンジに氷結技・・・・・・」
ってゆっくり話している間にレイは転げまわり始めた。
「とりあえず、精神安定剤を打ちましょう。
あ〜、押さえてもらえますか?針が折れたら大変なので」
「だがこいつに触れるのは危険じゃないか?」
「今の彼女はフラッシュバックで弱っています。
特殊能力も弱っているかと」
言われたとおり押さえつけ、
白沢はレイの首に注射を打った。
やがてレイは落ち着きを取り戻し、あたりを見回した。
「なぜ助けた?
ここで殺せばよかったものを・・・・・・」
「さぁね。敵だとしても幼馴染は幼馴染だからじゃない?」
「・・・・・・!?」
「どうしてこうなったんだろうね。
昔はあんなに楽しかったのに」
「アリス・・・・・・?」
「人殺し、楽しいか?
昔より楽しいか?」
「あ・・・・・・アリ・・・・・・ス・・・・・・」
突然会社のドアが勢い良く開いた。
そこには白沢さんが・・・・・・
「氷結<アイス>のレイ、ようやく見つけたぞ。
お前らを監視していて正解だったな。
ここで逮捕する。逮捕状もあるぞ」
逮捕状をレイに見せた。
だが、レイはアリスを見たまま動かない。
「ほら、さっさと来い!
さて、前回の件だがこれでなかった事にしてやろう。
だが志月、お前はもう私の娘じゃない。いいな」
「こちらから願い下げです」
白沢さんはフンと鼻で笑い、レイを連れて行った。