ワザップ!フォーラム
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アイマス
のクロスSSです
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「……ふぁ〜あ」
永い夢からやっと覚めて、我が家の天井を久し振りに見渡す。
後5年眠りたい気持ちに負けず、なんとかベッドから身を起こした。
「あら、今年はやけに目覚めが良いのですね?ビルス様」
僕のお目付け役であるウイスも、良くも悪くも相変わらずだった。
因みに、『ビルス』というのは、僕の名前である。
ビルス「僕ね、昨年変な夢を見たんだ」
ウイス「そりゃあ500年も寝てるんですから、変な夢の一つや二つ見るでしょう」
ウイスの声は呆れ混じりだった。
ビルス「僕が見た夢は、今まで見た様なちゃっちな夢じゃ無かったんだ」
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ビルス「僕は見つけたんだ。夢の中で」
ビルス「僕と対等に渡り合う戦士を……」
僕はやや、意味あり気にそう言った。
口も少しにやけていただろうか。
だが、ウイスはその話を聞いてもなお呆れ混じりの溜め息を吐く。
ウイス「ビルス様より強い神様なんて沢山いるではありませんか。ましてや、神でない私も、ビルス様より強いですし」
ビルス「ぐっ……」
心臓に言葉が刺さった時の心の声をうっかり漏らすが、その『戦士』は、神でも、勿論ウイスでも無かった。
僕はその姿を、夢の中でだがハッキリと確認できた。
ビルス「……確か、あの姿は……」
ウイス「?」
よく思い出せ。
あの容姿……とある種族ではかなりタイプが多かった筈だ……。
さ……さ……さ。
……なんだっけ。
ウイス「……やはり寝惚けておられるのですね。目覚めの朝食を摂りましょう」
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ーー腑に落ちず、そのせいで不快な気分のまま、僕は今、食堂の椅子に腰を下ろしている。
……寝惚けなどではなかった。
さっき見た夢は予知夢なんだ。そうに決まっている。
ウイス「あまり深く考えてはいけませんよビルス様」
ウイス「それに、久々にお目覚めになられたのですから……」
ウイス「気分転換に、星の一つでも破壊されてはどうです?」
……惜しいけど、ここはウイスの提案に従うことにしよう。
所詮は夢。
そう考えるんだ……忘れるんだ。
ビルス「……そういえばウイス。今日の朝食は何かな?」
僕はこの気持ちをどこかに逸らそうと、ウイスに他愛の無い疑問を投げ掛けた。
……ところが。
ウイス「はい。今日の朝食は、『地獄野菜とメガロドンダシのスープ』と……」
『地獄野菜』と『メガロドン』のダシか……相変わらず凄い料理だ。
……ん?
地獄……野菜……
野菜……
ヤサ……イ……
ウイス「それと『マンドラゴラパウダーが隠し味の禁断の果実バイ』……」
ビルス「サイヤ!」ガタッ
ウイス「ビルス様?!」
そうだ……サイヤ人!
思い出したぞ!!
立ち上がりに食堂の椅子を倒したがお構い無しだ。
サイヤ人!サイヤ人で間違い無い!
そうだ。
そしてそのサイヤ人は、こう名乗っていた!
ビルス「『超サイヤ人ゴッド』!!」
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ウイス「超サイヤ人……ゴッド?」
そう。
超サイヤ人……ゴッド!
夢の中で出会った戦士はまさしくそれだったよ!
ただの戦闘民族である『サイヤ人』の生き残りが、僕の前に立ちはだかったんだ!夢の中で。
くくく。
こりゃあ、流石のウイスも驚かざるを得ない筈……!
ウイス「『ゴッド』……やっぱり、神様じゃありませんか」
あ、食らい付いたのはそこでしたか。
ビルス「待ってよ!そこじゃないだろ?!」
ウイス「はて?」
くそ、このままじゃ、僕の破壊神としての威厳が……!
ビルス「そこじゃなくて……ほらっ」
ビルス「サイヤ人!ウイスも、サイヤ人は知っているだろう?」
ウイス「ええ。知っていますよ」
ビルス「凄いと思わないか?ただの戦闘民族の奴らが、破壊神である僕と対等に渡り合うなんて!」
ウイス「……でも、所詮は夢ですよね?」
ぐぅ……このお目付け役。
ウイス「それに、『超サイヤ人ゴッド』なんて……安っぽいネーミングです」
ビルス「……それは言えてる」
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地獄野菜などを食べ終えた僕は、ある惑星へ飛び立つ準備をしていた。
ウイス「本当に行かれるのですか?」
ウイス「地球へ」
そう。
僕は今から地球へ向かう。
『予言魚』の予言によれば、超サイヤ人ゴッドになりえる人物は『地球』という星に住んでいる……とのこと。
そして、改めてウイスに確認をさせてみたら、地球にはサイヤ人の生き残りが5人程居たようだ。
そして、その内の3人は、サイヤ人と地球人のハーフ。
となると、超サイヤ人ゴッドは、純血のサイヤ人である二人に絞れるというわけだ。
ビルス「因みにウイス、僕の家から地球まで、一体どれくらいかかるんだい?」
ウイス「はぁ……約30分程でしょうか」
ビルス「テレビアニメ一本分か……」
……長いな。
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30分程宇宙を辿ると、宝石の様に美しい星が見えてきた。
ウイス「地球が見えて参りました」
地球は青かった。
蒼海に混じる白雲と、広大な大地。
味気も女気も無い僕の家とは、天と地程の差である。
ビルス「この星を破壊するのは惜しいなぁ」
他愛なく発した言葉だが、頭の固いウイスのことだ。
『破壊をしなければ、世界のバランスは崩れる一方ですよ?』
とかなんとか、面倒なプチ説教を聞かされるに違い無い。
ウイス「私も、ビルス様の意見に同感です」
ほーら……えっ。
ウイスのその反応は、僕の予想を裏切った。
ウイス「地球にはどの様な食べ物があるのか……せめて、破壊するのはそれらを食べ終わった後からでも……」
ああ……なるほど。
そういえばウイスは、プロレベルのグルメだったなぁ……。
……やっぱり、少し永く眠り過ぎたか?ボケてる気がするな。
いやあ、年はとりたくないねえっと。
遠くを見つめてる間に、目的の地球に着いた様だ。
というわけで、地面に足を着いてみる。
スタッとね。
ビルス「おお……」
辺りを見渡すと、そこは荒野だった。
吹き荒れる砂が、僕の足にまとわりついてるのが分かる。
ウイス「外は綺麗でしたけど、中はそうでもないですね」
ビルス「そうだなぁ……」
何にしても、超サイヤ人ゴッドは必ず見付けてみせるよ!
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ーー他の星に来たからには、『出会い』というモノは必然的に発生するのだろう。
だが、僕の場合、そこに来た目的に全く関連性の無い出会いをしてしまった。
僕は今、こじんまりとした建物の二階に居る。
革製のソファに腰を下ろし、目の前に居る男の話を聞いていた。
一方ウイスはというと、建物の一階にある飲食店で食事を摂っていた。
僕がここに着くまでのプロセスは、面倒だから説明しない。
自分で勝手に想像してくれ。
さて、話を戻すがその僕の目の前に居る男は、僕を勧誘しようとしていた。
「アイドルのプロデューサーになってみないか?」
ビルス「アイドルのプロデューサーだって?」
アニメ並の急展開に、僕も、そして読者も、驚きを隠せていなかっただろう。
『アイドル』って、アレだよね?
今流行りの、『DBZ48』とかだよね?
アレのプロデューサーになるの?僕が?破壊神である僕が?あり得なくない?
「……私はね。君を見た時ティンと来た」
ティン?ティンって何?
男は、真剣な眼差しで僕を見つめる。
「君のその溢れるカリスマ性、そしてオーラ!」
僕のカリスマ性は否定しないけど……。
ビルス「それらが、アイドルのプロデューサーに何の関係があるんだい?」
「……実はな、うちのアイドル達は、数ヵ月前のデビュー以来、どうもパッとせんのだよ」
「恐らくその原因は、頼れる人材が居ないからだろう」
ビルス「なぜ、そんなことが分かる?」
「彼女達も、アイドルである前に一人の女の子だ」
「年頃だし、一人での活動は、肉体的にも、精神的にも堪えるだろう」
ビルス「君じゃ駄目なのか?」
「私は駄目だよ君ィ。言ったろ?彼女達は、アイドルである前に一人の女の子。それも年頃の、な」
ううむ……よく分からなんな。
「私の様な老い耄れ風情が彼女達に気をかけた所で無駄だろう」
「そこで、君の様なカリスマ的人材が必要、というわけだ!」
ビルス「……まあ、言いたいことは分かったよ」
いや、本当は殆ど分からなかったけど。
これ以上話が長引くのは困るので、適当に分かったふりをする。
ビルス「でも悪いけど、僕にも急ぎの用事があるんだ。失礼させて貰うよ」
「えぇ?!そ、そんな。困るよ君ィ!」
困っているのは此方の方なんだがな……まあ良いだろう。
無視だ無視。
僕は、ソファから身を起こし、階段の方向へと向かって行こうとした。
だが、そこに……。
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ウイス「あっ!ビルス様!いやあ、地球の食べ物は本当に美味しいのですね!……あ、もうお話とやらは済んだのですか?」
いや、お前かよ?!
前回から引っ張っておいて、階段を上がってきたのはウイスかよ?!
ウイス「ビルス様、次のお店へと参りましょう。店主曰く、この星にはB級グルメなるものが」
ビルス「少し黙ってくれないかな?!」
余りの苛立ちに感情を晒してしまった。
……うん?
トットッ
足音が聞こえてくる。
この階段を上っているのか?
足音は徐々に音量を増している。
「ただいまでーーすっ!」
軈て姿を現したのは、可愛らしいリボンをショートヘアに結ぶ美少女だった。
その手には、何やら甘い匂いがするバスケットが。
「社長〜!私、新しい試作クッキーを……あれ?」
男から目を放した少女。
どうやら、少女は僕達の存在に気付いた様だ。
「あの、貴方達は……」
ウイス「もし。貴女に訊きたいことがあるのですが?」
少女が話すより早く、ウイスが質問を投げ掛けた。
少女は、少し苦い表情を浮かべるが……
「は、はいっ!」
素直に、元気良く応えた。
ウイス「その箱の中に入っている物……教えて頂けないでしょうか?」
それは僕も気になっていた。
ウイスも相当グルメだが、かくいう僕もグルメなのだ。
なので、地球の食べ物には興味深々なのだ。
箱から滲み出るこの甘い匂いからして、中に入っているのは、僕の想像を絶する美味いものの筈だ!
「これですか?これは……」パカッ
少女がバスケットを開封する。
中に入っていたのは……なんだこれ?
丸っこく平べったい物体が、箱の中からこんにちは。
中に黒い何かが埋め込まれてる物もあれば、こげ茶色と白が入り交じってる物もある。
ウイス「はて……?この物体は一体?」
僕の台詞を代弁する様にウイスが訊く。
すると少女は、『えっ、知らないんですか?』と言わんばかりの表情を浮かべ、ウイスの質問に答える。
「これはクッキーですけど……」
『クッキー』?なにそれ美味しいの?
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ーー美味しい食べ物に勝る釣り餌などあるのだろうか?
破壊神である僕でさえ釣られたそれに勝る釣り餌など、あるわけが無かった。
魚だって、ミミズだの食パンの欠片だのに釣られて陸に打ち上げれるわけだし、うん、食べ物最高。
と言うのも、だ。
単刀直入に言うと、僕はアイドルのプロデューサーになった。
なんでって?お前乗り気じゃなかっただろって?
僕に訊かれても困るなあ。
だって、全てあの『クッキー』とかいう食べ物のせいだもん。
「えっと……『ビルス』君といったかな?」
この男は、前回僕をスカウトしようとした身の程知らずの男である。
この男の名前は『高木順二郎』。
小太りではあるが、その辺のデブとは違い、自分の会社のためにせっせと働くしっかり者の社長なのである。
因みに、その会社というのは、『765プロダクション』というらしく、アイドルが沢山所属している事務所だそうだ。
そして、プロデューサーとしての僕の役目は、アイドル達ををその道の頂点へと導くこと。
それで、僕が導くアイドルは……
「プロデューサーさん、レッスンですよ!レッスン!」
前回僕とウイスをクッキーの甘い誘惑で誘った、このいやらしい少女だ。
彼女は『天海春香』。
プロフィール曰く、『普通っぽさ』が魅力で、ちょっぴり(重要)ドジっ娘。
まあ、そこら辺はどうでも良いわけで。
それよりも僕が着目した点、それは……。
特技が、『お菓子作り』である点だ。
……あー、君ら、画面の向こうで『やっぱり』って顔をしてるだろ?
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というわけで、レッスンスタジオに到着。
今日のスケジュールは
ボーカルレッスン
↓
レコード会社の挨拶回り
である。
営業の前のレッスンなので、力を入れすぎて疲れない様にしたいところだ。
……え?超サイヤ人ゴッドはどうしたって?
それはウイスに任せたよ。
お目付け役の有効活用だね。
対して、主人である僕は、春香に歌唱力の稽古を付けていた。
春香「ららら〜♪……こうですか?プロデューサーさんっ!」
うむ。
『プロデューサーさん』と呼ばれるのは悪くないものだな。
ん?
なんでお前がアイドルのレッスンを出来るのかって?
……神の脳というのは、スゴく御都合主義……いや、便利に出来ていてね。
破壊神でも、やっぱり神は全知全能なんだ。
アイドルに関することまで、不思議となんでも分かるものだ。
ビルス「ここは半音低く」
春香「はいっ!」
我ながら微笑ましい光景だ。
春香はハキハキとした声と表情で、ひたすらに喉を奮わせている。
そしてその歌声は、まあ……音程がまだ合っていないかな。
でも、春香の歌唱力ならのびしろは充分あるし、神である僕の指導があれば、あっという間にレベルアップしていくだろう。
トップアイドル、楽勝だね!
春香「ららら〜♪……って、あら?きゃあっ!」ドテーン
……ただ歌っているだけなのに転ぶってどういうことなの?
前言撤回。
トップアイドルの道……まだまだ長そうだ。
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さあ、歌を高めたら次は営業だ。
春香に最高のデビュー曲を歌わせるため、僕は今レコード会社の……前に来ている。
春香「うう……やっぱり緊張しちゃうなあ」
中々一歩を踏み出せずにいた。
だが、アイドルは歌が命と言っても過言では無いと思う。
それなのに、こんな所でモタモタしていたら……あっという間にトップアイドルへの道は遠退いていくのは見えている。
なんとしてでも、春香の緊張を解かなければ。
ビルス「この営業が上手くいったら、一緒にケーキ屋とやらに行かないか?」
若干、僕の願望も混ぜて提案する。
だが、春香は頬を膨らませて、
春香「どうせ、私がプロデューサーさんに奢るんでしょう?!」
いけね、バレたか。
不味いな……春香を怒らせてしまった様だ。
こうなったら……
ビルス「トップアイドルになりたくないのか?」
春香「!」
プライドを擽る作戦。
逆に言えば、この作戦に乗らない様であれば、やる気が無いと見なせる。
この業界は厳しいと、社長さんも言っていたしね……少し試させて貰うよ。
春香「……」
暫しの沈黙。
恐らく、今春香の頭の中には天秤が垂らされていて、プライドと恥ずかしさが乗っかっているのだろう。
どちらを選ぶかな……?
春香「……私、頑張ります!」
うん、当たり前だね。
まあ、失望しなくて良かったよ本当に。
ビルス「じゃあ、行こうか」
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レコード会社への挨拶も、なんとか無事に終えたので一休み。
僕と春香は今、約束のケーキ屋さんに居た。
春香「なぁ〜にが、『約束の』ですよ!全くっ」
ビルス「奢ってくれると、確かに約束したじゃないか」
と、僕は恐らくゲス顔で言った。
周りからの視線が痛いが、僕はお金を持っていないのだから仕方無い。
仕方無いだろう?
春香「ふんっまあ良いですけど……早く社長から給料貰って下さいね?」
ビルス「頑張るよ」
ただし、それまでは春香に集るつもりの僕だった。
ウイス「ビルス様」
ぐわっち!
何の前触れもなく現れたウイス。
僕の分のモンブランを当たり前の様に貪っていたが、今それは気にしない。
それよりも、『例の件』だ。
ビルス「見つかったのかい?」
ウイス「ふぁい、ひふふはほうほはへはひゲフッ」
モンブランを食いながら喋るな!咳するなッ!
モンブランの破片が僕の顔に飛び散った所で話を戻すが……。
ウイスの報告によれば、超サイヤ人ゴッドになりえる存在は、一つは山奥に、もう一つは大都会に家を構えているらしい。
そして、後者の方は、サイヤ人としては超エリートで、超サイヤ人ゴッドになれる可能性が高いとのことだ。
ビルス「じゃあ、僕はその大都会のサイヤ人を探せば良いわけだね?」
ウイス「はい」
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春香「大都会ですよ!大都会!」
ビルス「ここかな?」
僕達の目の前には、巨大な球体状の建造物が堂々と構えていた。
この家に、ウイスの言っていたエリートサイヤ人が住んでいる。
……それにしても、本当にでかい家だ。
周囲の平凡な家と比べると、その何倍も誇っている。
僕は、家のインターホンを鳴らした。
ピンポーン、と、聞き慣れた音が、車が道路を走行する音に紛れて鳴り響く。
すると、
「はあーい」
銀髪のスレンダーボディな女性が対応した。
ドアを開ける音と共に返事を返す。
春香「綺麗な人……」
小声で敬意を表する春香。
春香の言う通り、その人はとてつもなく美人だった。
前述の銀髪スレンダーに加え、深紅に染まる上品な唇は、世の男共を糸も簡単に虜にできてしまいそうな、そんな雰囲気を漂わせていた。
「あの……どちら様?」
ビルス「ん、ああ、ちょっと君に尋ねたいことがあってね」
見とれていたせいか、妙に返事が遅れてしまった。
恥ずかしい限りである。
「おい、ブルマ!!」
突然、ドスの効いた男の声が轟く。
『ブルマ』というのは、この美人さんのことだろうか?
ブルマ「なによベジータ、今お客さんが来てるの。邪魔しないでくれる?!」
……ん?
ベジータ……?
ベジータ「客だと?知ったことか!!」
ベジータ「それより、重力室が壊れた。とっとと直しやがれ!」
ベジータは怒号を鳴らす。
随分と前に聞いた名前だった様な気がしたが、それにしても身勝手な男だな。
ベジータとブルマがどういう関係なのかは知らんが、少々頭にきた。
少しお仕置きしてやるか、と、僕がベジータににじり寄ろうとしたその時。
ベジータ「なんだ貴様。文句があるならハッキリと言ったらどうだ」
やべ、感情を悟られたか?
神たる者、感情は余り表に出さない様にしているのだが……気が緩んだが?
などと考え、ベジータの顔をふと見やると、なぜかベジータの目は、僕ではなく、春香の方を捉えていた。
次に僕は春香に目をやる。
すると……
春香「ちょっと、さっきから聞いていれば!貴方!」
-
ベジータ「中々良い度胸だなクソガキ。このベジータ様に逆らえるとはな」
春香「なんなんですか、自分のことを様付けしちゃったりして。何様のつもりなんですか!」
ベジータ「俺はサイヤ人の王子、ベジータ様だ!!」
サイヤ人の王子……!?
そうか、思い出した!
僕がずっと前に訪れたサイヤ人の星……『惑星ベジータ』。
ベジータは、その惑星の王様の名前だったんだ。
となると、そこに居るのはそのベジータ王の息子……。
なるほど、ウイスが言ってたエリートってのは、このことだったんだ。
……それにしても、その風貌は、父親譲りだな。
あの頃のこいつは、まだガキンチョだったんだけどなあ……いやいや、今はそんなことで感動している場合では無かった。
どうしよう、うちのアイドルとベジータ王子が喧嘩しちゃっている。
できれば仲裁に入りたいけど……面倒だなあ。
春香「サイヤ人ってなんですか?妄想も甚だしいです!」
ベジータ「何だとクソガキ!この誇り高き戦闘民俗を愚弄するかぁ!」
二人の喧嘩は益々ヒートアップしていく。
春香の口調も、何時もと違って荒々しい。
いい加減暑苦しくなってきたなあ、あー、あーぁぁ!
春香「一々怒らないで下さい!そんなんだから、そんな残念なM字ハゲになるんですよ!」
ブチッ
あっ、これは地雷確定ですわ。
M字ハゲ……ぶほっ、笑いが止まらんが、相当ヤバイ状況なんじゃないかこれ?
ベジータ「このオチビちゃんがぁぁぁぁ!」
春香の暴言により、案の定ベジータの怒りのボルテージは頂点にまで達した。
ベジータの怒りの鉄拳が春香に振り降ろされる……っつ、やべぇ!
ビルス「ふんっ!」
ベジータ「がっ……」
僕は、ベジータの首に手刀を打った。
ベジータの目に光が失われる。
気絶し、そのままその場にパタンと崩れ落ちた。
春香「……はっ!」
絶体絶命のピンチに晒されたせいか、春香は我に返った。
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アイドルは顔が命……間一髪である。
それにしても、女に手を上げるって、王子としてどうなの?こんなことだから、フリーザに『猿』だの『野蛮』だのと罵られるんだよ?
春香「あ……」
我に返った春香だが、先程までの怒った形相とは打って代わって、物凄く申し訳なさそうな表情を浮かべた。
……ああ、成程、僕がこいつに危害を加えたから、春香は
『私のせいだ……私が、この人と喧嘩したから……』
などという罪悪感を覚えたのか。
そもそもはベジータが悪いのだから気にすることなんてないのになぁ……え?なんでそこまで分かるのかって?
そりゃあ勿論、ご都合主……神の脳の賜物だよ。
ビルス「あー、えっと、ブルマさん?さすがにちょっとやりすぎたか……」
な、と言いかけたその時、ブルマの口から予想外の言葉が飛び出してきた。
ブルマ「凄いじゃない!」
『何が?』と訊きたかったが、言ったら春香のためのフォローが台無しになることを何となく悟ったので、黙ってることにした。
ブルマ「あのベジータを一撃で倒すなんて!」
ああ……成程、そういう?
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ブルマの賞賛を頂いた僕は、春香と一緒にブルマの家に上がっていた。
春香「本っっ当にごめんなさい!」
深々と頭を下げる春香。
リボンもだらーんと垂れ下がる。
ブルマ「良いのよ気にしなくて。私のために怒ってくれたんでしょ?寧ろ、私が謝らなくちゃ」
とても器が大きいお人である。
それにしても、今の春香の表情は可愛いなあ、今度お得意先でも使おうかな。
そんな邪なことを考えていたその矢先、ベジータが目を覚ます。
ベジータ「おいブルマ!」
春香「っ……」
春香はベジータに怯えている。
僕が履いてるズボンをぎゅっと握り締めていた。
可愛い奴め。
と、そんなことより、この王子に訊きたいことがあったんだ。
ビルス「ベジータ君、ちょっと良いかな?」
僕がそう言った瞬間、ベジータはギロリと睨み付ける。
流石と言ったところか。
僕の言いたいことを瞬時に理解、そして把握した様だ。
ベジータ(……場所を変えるか)
ベジータ「着いてこい」
ビルス「ああ」
ベジータの要求に応え、僕達はブルマの家を飛び出し、遠い所へと飛んで行った。
ブルマ「あの二人……また喧嘩する気なのかしら?」
春香「うう……プロデューサーさん……」
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ベジータ「貴様とはどこかで会った気がする」
人も動物も居ない荒れ地での、ベジータの第一声。
やはり、あの時のことを曖昧にだが覚えているらしい。
ビルス「そう……あの時はまだ君は子供だったかな」
『あの時』。
…………
……
…
破壊を司る神である僕は、宇宙のバランスを保つために、星を破壊していくのである。
そしてここ『惑星ベジータ』も、例外無く僕の標的となった。
そして、ここの王様であるベジータ王に一応の挨拶をしにきた僕だったのだが……。
ベジータ王『ビルス様!どうか、この星だけはっこの星だけはッッ!』
神とは常に平等であるべき存在なのである。
それ故に、ベジータ王の懇願を叶えることは出来なかった。
しかし、それでもベジータ王は破壊させまいと、僕に精一杯尽くしたのだった。
美味い飯に酒。
なんか、ここまでしてもらって
「そういう訳には行かないよ」
とは言えなかったので、僕は特別に撤退し、代わりに他の星をドッカーンしたのだった。
……そして翌日、惑星ベジータはフリーザによって粉々に吹き飛ばされていた。
…………
……
…
ビルス「『破壊神』……といえば、分かるかな?」
-
ベジータ「……っっ?!」
どうやら、完全に思い出した様だ。
あの日の彼は、自分の父親が僕に虐げられるのを壁の向こう側でずっと見ていた。
子供の教育にはよろしく無かった景色だったからかな?あんな出来の悪い夫に育ってしまったのは。
ベジータ「ビルス……様……っ!」
ベジータは、かなり狼狽えた様子で僕を凝視してきた。
彼の髪の毛の隙間から多量の汗が流れ出る。
その勢いは留まることを知らない。
そんなベジータの状態を僕は無視し、本題に入ることにした。
ビルス「君の実力……試させて貰うよ」
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ベジータ「試す……?」
ビルス「そう。君が、『超サイヤ人ゴッド』になれる存在か、ね」
ベジータ「超サイヤ人、ゴッ……」
ドゴッ!!
ベジータ「ぐっ……はっ……!!」
僕はベジータの不意討ちをした。
彼が着用していた戦闘服の強度を空気にするが如くのダメージを与えたつもりだ。
ベジータは腹を抱え、ぼろぼろと地面に倒れそうになる。
だが、ベジータは手を伸ばし、着地。
必至に痛みを堪えてるのが分かる。
それでもベジータは、地面を蹴って、軽やかに飛んで後退した。
ビルス「言っておくけど、僕はまだ全然本気で戦ってないよ?」
戦闘が始まってからものの5秒で息切れしているベジータを刺激してやった。
これで少しは本気になってくれるだろう。
過去の因縁なんて関係無い。
相手が破壊神でも果敢に挑む君の姿を、僕は見たいんだ……!
ベジータ(くそったれ……まさか、あの破壊神と鉢合わせするとはな……)