ワザップ!フォーラム
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初めまして。☆★♪★☆です。
ワザップ内に小説フォーラムが出来たとのことで、せっかくなので何か書いていこうと思っています。
とは言え、小説は自分のブログで少し書いた程度の初心者ですので、文章がおかしい場合もあるかと思われますが・・・。
最初の方はパソコンのメモ帳に書き留めてありますが、途中からは多分週一更新になると思います。一週間以上経っても更新が無い場合は、ネタ切れ、もしくは忙しくて更新が出来ない状態だと思ってしばらくおまちください・・・m(_ _)m
出来るだけダラダラと長くならないようには気をつけていますが、時々、どうしてもキリが悪くて長い場合があるかもしれません。
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http://jp.wazap.com/thread/*竜の伝説*/396563/ -
第一章 旅立ち
嵐が吹き荒れる海。小さな船は大風と荒波に翻弄され、今にも転覆しそうになっている。
「本当にこっちであっているのか・・・?」
一人の青年が、船にしがみつきながら言う。荒波は容赦なく船をたたきつけ、青年は頭から水を浴びる。
ーーーーーーーーーーーーーー
「まずいぞライト!昼間、警察のやつらがお前の家に来てた。お前を捕まえる気だ!」
ある日、ライトいつものように仕事から帰ってきたら、近所の人々がライトを見つけるやいなや言ったのだった。
ライトは決して罪人ではない。しかし、少し変わった能力を持っていた。俗に言う魔法というものが、少しだけ使えたのである。とはいえ、少し風を吹かせたり、火をおこしたり、物に触らずに動かすといった程度のもので、大したことはなかったが・・・・・
魔女、悪魔といったものが、徹底的に排除されようとしている時代。ライトが幼いころ、彼の両親もまた、魔法が使えたことが原因で捕まり、それ以来消息は不明なのだ。
両親は近所の人に、まだ幼かったライトを預け、そして謎の地図も一緒に渡していたらしい。
「これはあなたの両親から預かった地図よ。もしライト、あなたが危なくなったとき、ここに逃げるように伝えてくれと頼まれてたの。家の船を貸してあげるから、それに乗って逃げて!私たちは絶対にあなたの味方だからね!」
近所の人皆に手伝ってもらって、食糧を船に積みこんだ。そしてライトは、地図に書かれていた異大陸を目指して船を進めたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライトの場合は本当に魔法が使えるのだが、中には本当にごく普通の人間が魔女の疑惑をかけられ、処罰されているケースもあった。いや、むしろそっちの方が多かった。そして、それを許せないと思っている人々も多かった。ライトをかくまってくれた人たちもその一部だ。
「くそっ・・・。なんでだ。ただちょっとした能力があるだけで、俺だって普通の人間だぞ・・・・。」
ライトは悔しかった。いつか、自分の存在が政府にバレるかもしれないと覚悟はしていたつもりだったが、あまりにも突然すぎる出来事で、まだ半分信じることができない。親切な人々との別れもつらかった。そして何より、罪のない人間が当然のように処罰される事への怒りが込み上げてきた。
その時、船の下を何かの影が通り過ぎるのが見えた。
「何だ?」
ライトは警戒し、船の縁から離れる。ちょうどそのとき、狙ったかのようなタイミングで大波が船をたたきつけた。船の下の影に気を取られていたライトは船から投げ出され、海に落ちてしまった。すぐに船に乗り込もうとするが、荒波がライトの手をはじくかのようにたたきつけ、それを邪魔する。水が何度も口に入り、息も苦しい。
謎の影は船の下から出てきて、ライトに近づいてきた。長いベールのようなものが2本見えた。そして丸みを帯びた体から上に突き出た鋭いヒレ、丈夫そうな太い尾・・・。
「この海域で嵐に遭うとはなんと運の悪い事でしょう・・・。でも大丈夫です。あなたが目指す大陸はもうすぐです。」
声が聞こえた。それと同時に、ライトは大きな泡につつまれた。水は入ってこないし、ちゃんと空気もある。荒波の激しさは相変わらずだが、泡は少し宙に浮いており、波の影響を受けていない。
先ほどの声は一体何だったのだろうか。泡の中から外をのぞきこむと、熱帯魚のように美しい、長いヒレを持ったサメのような生物が、ライトの方を見ていた。サメらしい鋭い歯はあるのだが、金色のその瞳はとても優しく、美しい女神を連想させる。
「あなたは、あの大陸に必要とされているのです。私が案内しましょう。海の上は、嵐でこのような状態ですが、海の中は平穏ですので、潜っていきますよ。」
サメのような生物は、ベールのような2枚のヒレで泡を抱えると、そのまま海の中へもぐった。
確かに海の上とは違い、海の中は平穏で、嵐など関係なかった。
「(大陸に必要とされている・・・?どういうことだ・・・?)」
ただの逃亡者であるはずの自分が、なぜ必要とされているのか、そしてこの不思議な生物は何なのか・・・。
ライトはまだ何も知らなかった。自分の正体も、自分の運命も。
改行ミスを発見したのでちょっと修正。
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第二章 出会い
いつの間にか嵐は止み、波が静かに漂っている。サメのような生物は浅瀬まで来ると、ライトを包んでいた泡を割った。
「私はこれ以上陸には近づけません。しかしこれだけは言っておきます。海岸から西へ少し行ったところに、人間の村があります。まずはそこへ向かったほうがいいでしょう。」
そういうとサメのような生物は、身を翻し、沖の方へ泳いで行った。ライトは腰まで海に浸かっていたが、そこから砂浜を目指して歩く。
浜に付き、もう一度海の方を見たときにはもう、先ほどのサメのような生物はいなくなっていた。
ポチャン
「おっと!」
ライトがポケットに入れていた、白い宝石のお守りが落ちた。少し砂に埋もれてしまったようだが、紐が見えていたので、ライトはその紐を掴み上げた。すると、宝石と一緒にオレンジ色の何かがくっついてきた。
「何だ?」
星型の姿から、ヒトデのように見えたが、少し違う。足と足の間にはモモンガのような皮膜、そしてネズミのような耳とクリクリした目。
「人間だ!久しぶりに見た!」
「喋った!?」
よくよく考えれば先ほどのサメもなのだが、このヒトデとモモンガが合体したような生物は、人間の言葉を喋っている。
「最近、村の人達、この海に来ないけど何で?」
「えっと・・・俺は今初めてここに来たから、ここの村のことは何も・・・・。」
ライトは戸惑いながら言った。
「あれ?そうだったの?じゃあ僕の仲間は見たことないんだね?」
「あぁ・・・初めて見たよ。」
「僕達のことを人間たちはホシモモンガって呼んでるみたいだよ。この大陸には、ほかの所にはいない動物がいっぱい居るんだよ。」
ホシモモンガと名乗った生物はそう言った。
「そうか・・・。あ、その石返してもらえる?とても大事なものなんだ。」
ライトは、石のお守りにくっついたままのホシモモンガに言った。
「あ、ごめんなさい。でも僕、白い宝石のお守りを持つ人間を保護するように言われてるの。」
「え?」
ライトは突然のことで戸惑った。いったいそれは誰に言われたのか、というのもあったが、さすがにライトの住んでいた国の者も、ここまでは追ってこないだろう。ライトはこのまま村へ行き、普通に暮らすつもりであったが、保護するように言われているという事は、これから先、まだ何かが起きるのだろうか・・・。
「まぁ詳しいことはあとでわかると思うから、まずは人間の村に行こうよ!西方向だよ!」
ホシモモンガは西を指さすと、ライトの肩に飛び乗った。ライトは戸惑いながらも頷くと、言われた通りの方向へと歩き始めた。
砂浜を出て、小さな草原に踏み込んだとき、
ドンッ!
「わっ!」
何かが勢いよくライトの足にぶつかった。そこにいたのは、角の生えたウサギだった。軽く跳ね飛ばされたライトはすぐに起きあがった。ウサギは可愛らしくも獰猛な目つきでライトを睨みつける。
「やあツノウサギさん。君も人間を見たのは久しぶり?」
ホシモモンガは言う。ウサギは、もう一度突進するタイミングをうかがうかのように、ライトの周りをウロウロしていた。地面を蹴り、ライトを睨みつけるその姿は、小柄ながらも猛牛のようだった。
「ちょうどいいや!これからは魔獣と戦う事もあるだろうし、君も練習練習!これを持って!」
ホシモモンガはライトの肩から降りると、ライトに雫の形の青い石を投げ渡した。
「えぇ?一体何だ?魔獣って?」
ライトは何が何なのか分からないまま、青い石を持ち、ウサギと向き合った。
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第三章 小さな襲撃者
「本当に何も知らないんだ・・・。でも魔法は使えるんでしょ?とりあえずやってみてよ。」
「魔法?使えることは使えるけど・・・・。わっ!」
ライトはウサギの突進を間一髪回避した。
「向こうの大陸じゃ、どうだったのかは知らないけど、こっちじゃ戦えないと生きていけないよ!今渡したのは水の石。水属性の魔法を使ってみて。攻撃出来そうなものなら、なんでもいいから!」
ホシモモンガは言った。
「(水属性・・・・?これか?)」
ライトは水の石を握りしめ、自分の目の前に水の弾を思い浮かべる。ライトがウサギの方向を指さすと、水の弾は猛スピードでウサギへと向かっていく。ここに来る前は、せいぜい暖炉の火が消せる程度のものだったが・・・
ドンッ!
「キュン!」
水の弾がウサギの脇腹を直撃した。ウサギは跳ね飛ばされながらも素早く立ち上がる。
「その調子!さぁもう一度!」
ホシモモンガに言われ、ライトはもう一度水の弾を用意する。ウサギは危機を感じたのか、ライトの狙いを定めにくくする為か、素早くジグザグに走り続ける。
「大丈夫、相手の移動先に撃っちゃえばok!」
ウサギは走りまわりながらも攻撃のタイミングをはかっているようだ。さりげなくライトに近づいてきている。ウサギが攻撃を加えようとしたその瞬間をねらって、ライトは水の弾を発射した。
「キュイン!」
ウサギは今度こそ耐えきれなかったらしい。二回も水の弾の直撃を受け、もう立ち上がれないようだ。
「やっぱり君は出来るんだね!最初は本当にこの人が、白い石のお守りの人なのかって疑っちゃったけど(笑)」
ホシモモンガは言って、再度ライトの肩に飛び乗った。
「し、失礼だな・・・・。これはちゃんと親から貰ったものだぞ?」
「大丈夫、わかってるから。さ、村に行こう!」
ホシモモンガに言われ、ライトは先に見えている村に向かって歩くが、先ほど倒したウサギの様子が少し気になる。向こうから襲ってきたのは確かだが、ウサギは無事なのかが気になる。死んではいないようだが・・・・。
ライトが何度かチラ見している事に、ホシモモンガも気づいたようだ。
「あ、この大陸の魔獣達は回復力がすごいから、心配しなくても大丈夫だよ。人間が使う魔法や武器ぐらいではそう簡単には死なないからね。」
ホシモモンガが言った直後、先ほどのウサギはゆっくり立ち上がり、ライトの方を一瞬見た後、草むらのなかに消えていった。
「例外も居るけど、何故だか最近、皆人間を見ると攻撃的になっちゃうからね・・・。まぁ、魔獣の攻撃も、人間がギリギリ死なない程度だから、大目に見てあげて。僕も魔獣のうちの1種だしね〜・・・。」
ホシモモンガは言う。先ほどの言葉通り、どうもこの大陸では戦えなければやっていけないようだ。ライトは、すぐそこに見えている村を目指して歩みを進めた。
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第四章 海辺の小さな村
村に着いた。ほんの少しの家や店がある程度の小さな村だ。広場の噴水に腰かけ、ライトはホシモモンガを肩から降ろす。
「旅人か?初めてみる顔だな。」
噴水の裏側にいたらしい人が話しかけてきた。30代ぐらいの男性だった。牧場でもやっているのか、少し獣臭い臭いがする。
「いえ、旅人というか・・・・この辺りで住むところを探しています。」
「そうか。一応村にいくつか空き家があるが・・・。とりあえず寄ってみるか?」
男性は言った。
「ありがとうございます。でもお金がないもので・・・・。」
「お金?俺の馬たちの世話を手伝ってくれたら、バイト代出すぜ?ってか、明日は神龍祭りだから、まぁとりあえず荷物はこぶのを手伝ってくれよ。」
男性に言われ、ライトは半強制的に荷物運びを手伝う事になった。ホシモモンガは後から滑空して二人についていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「紹介がおくれたな。俺はサザンって言うんだ。この村で馬とか育てて、旅人に売ってるんだ。よろしくな。」
「俺はライト。よろしくお願いします。」
二人は一緒に馬小屋に入った。いろんな毛色の馬たちが出迎えてくれた。一番奥にいる茶色い仔馬が、ライトとずっと目を合わせている。よく見ると、足は樹皮のようなもので覆われ、背中から小さな葉っぱが芽を出している。
「そいつはモクバって種類だ。この大陸に住む魔獣の一種だが、親を失ったようでな。とりあえず俺が育ててるんだが・・・・まだ子供のはずなのに大人の馬と同じぐらいの力があるから、蹴られないように気をつけろよ。」
サザンは言った。モクバはまだライトの方を見ている。
「よし、じゃあこの麦を広場に運んでくれ!・・・・その前に、神龍祭りについて説明した方がいいよな?」
「お願いします。」
「この大陸には、白い翼をもった龍がいるんだ。それは神のような存在で、すべての命に祝福を捧げると言われている。年に一回、その龍に感謝するのが神龍祭りだ。まぁ明日になればよく分かるだろ。
さぁ、荷物持った馬を広場まで誘導してくれ!場所は分かるだろ?」
5頭の馬の背に荷物をくくりつけながら、サザンはそう言った。そのうちの1頭は先ほどのモクバだった。ライトが先頭の馬の手綱を引くと、あとの4頭はそのあとを自分からついてくる。
小屋を出て、先ほど自分がいた広場の方を確認し、ライトは歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先ほどは気付かなかったのだが、すでに広場には色んなものが置かれていた。採れたての野菜や魚の干物、小さな木の実が箱に詰められている。ライトは馬の背中から麦の入ったかごを下ろし、木の実の箱の横に並べて置いた。
「おーい!まだほかにも色んな人が来るだろうから、かごは全部積んで置いといてくれ!」
後ろからサザンの声がした。青毛の馬に乗ったサザンがこちらへ走ってくる。ライトは並べた3つのかごを縦に積みなおし、残りの2つはさすがに上には乗せられなかったので、その横にぴったりくっつけて置いておいた。
サザンも、つれてきた7頭の馬から荷物を下ろし、ライトが置いたかごの横に荷物を置いていく。
「こんなもんだな。よし、お前、今日は俺の家に泊れ。街中で野宿するわけにもいかないだろ?」
サザンは言った。
「それもそうかも・・・・。」
「よし、じゃあ帰るぞ!適当にどの馬でもいいから乗れ!」
サザンはそう言い、自分自身も先ほどの青毛の馬に乗った。ライトが自分のつれてきた5頭の馬の方を見ると、モクバが近づいてきて、ちょうどライトの目の前で座り込んだ。
「お、モクバは乗れって言ってるぞ。めずらしいな、初対面の人を乗せようとするなんて。」
モクバは座った体勢のまま、ライトの方をじっと見る。
「よし、それじゃ行くか!って言ってもそんなに距離ないけどな(笑)」
サザンが言うと、サザンの乗った馬が走り出した。それに続き荷物持ちの馬が走り、ライトを乗せたモクバが、最後尾をつけて走る。ホシモモンガはモクバの尻尾にしがみつき、風に揺られている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほら、入りな。」
数分もしないうちに、サザンの家にたどり着いた。馬たちはサザンが馬小屋の扉をあけると、皆素直に入っていく。一番最後にいたモクバは、一瞬だけライトの方を見てから、小屋へと戻っていった。
「じゃあ、お前はこっちだ。あいてる部屋があるから、遠慮なく使いな。」
サザンはライトを自分の家に入らせると、空き部屋に案内した。
「ここだ。10年ぐらい人が来てないからちょっと古いが・・・・あ、掃除はしてるから大丈夫だぜ?ちなみに、神龍祭りの前日には夕飯は食べないのが決まりだ。腹へって寝れなくなる前に、さっさと寝た方がいいぞ。」
サザンはそう言って部屋から出ていった。ライトは辺りを見回してみる。ベッド、タンス、小さな暖炉・・・・生活に必要なものは一通りそろっている。ふとタンスの上を見ると、写真が立てかけてあった。
にっこりと笑う少女と、その横に両親と思われる男性と女性が写っている。3人とも、ローブに身を包んでおり、少し不思議な雰囲気をかもしだしている。誰なのかは分からないが、この男性はサザンでは無かった。
次にライトは、ベッドのかけ布団をめくってみた。少し端が破れてはいるが、寝るのには問題なさそうだ。
「お腹すいた・・・。何かないかな〜・・・。」
ホシモモンガは暖炉の上で伏せっている。ライトは、自分の荷物の中からオレンジを取り出して言った。
「これいる?」
そして、そのオレンジをホシモモンガに差し出した。
「わー、ありがとう!初めて見る果物だけど、君が住んでた所のものなの?」
「うん。オレンジっていうんだ。ちょっとすっぱいかもしれないけど俺は好きだよ。」
ライトはホシモモンガの問いかけにそう答えた。ホシモモンガはオレンジの皮をむいて少し齧ってみてから言った。
「うん、おいしい!ありがとう!」
喜ぶホシモモンガを見ていると自然と笑顔になれた。
「さて、サザンに言われた通り、早めに寝るかな・・・。」
ライトはベッドにもぐり込んだ。旅の疲れからか、意外とすぐに眠ることが出来た。
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第五章 夢の中の龍
(白の魔術師よ・・・・世界中の人間に危機が迫っています。今日の夜、祭りの後・・・村の北西に位置する山でお待ちしています。救えるのは貴方だけなのです・・・・。)
背中から純白の羽を生やした白い龍は言った。エメラルドグリーンの瞳がまっすぐこちらを見据えている。
「人間に危機が・・・・?どういう事か詳しく教えてくれないか?」
(これ以上、あなたの夢の中にはとどまれません・・・。今日の夜お会いしましょう・・・・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ライト、起きてるか?もうそろそろ祭りが始まるぞ。」
扉から差し込む光とサザンの声で、ライトは目を覚ました。
「(夢・・・?)」
まだ眠い目をこすり、サザンの方を見る。
「集合場所は広場だ。立食パーティーも後であるからな。もたもたしてたら、また夜まで飯抜きになるぞ!」
サザンに言われ、ライトはベッドから降りる。暖炉上で、ライトと同じように目をこすっていたホシモモンガも、ライトが部屋から出ようとすると、滑空してライトの肩に飛び乗った。
昨日と同じように、サザンは青毛の馬に、ライトはモクバに乗り、広場を目指して走っていった。たどり着いたときにはすでに、たくさんの人が集まり、昨日集められたお供え物を、龍の石像の前に並べていた。
「そろそろはじまります。みなさん少し後ろへさがってください!」
誰かの声が聞こえた。その場にいた人たちは皆、言われた通り後ろにさがった。あいた道を、ローブを来た人が4人、並んで歩いていく。その4人の後ろにもう一人、老人が歩いていく。
「あの方はこの村の長だ。無礼の無いようにな。」
サザンは、老人が目の前を通り過ぎてからライトにそう言った。
「それでは始めよう。今年も神龍様の御加護がありますように・・・・。」
村長が言うと、4人のローブを着た人は、それぞれが1つずつ持った水晶玉を、龍の石像を囲むように置いた。そして、祈るように手をあわせ、何かをつぶやいている。
ライトはふと龍の石像を見て思った。この龍に見覚えがある。背中の大きな羽と、巨大なヘビのような体はまさしく、夢で見たあの白い龍だった。
4人の呪文のようなつぶやきが止まった。村長は龍の石像のちょうど真ん前に、白と黒の2本のロウソクを立てた。ロウソクの火が水晶玉に映り込み、神秘的に輝く。
「今年も、立食パーティを始めたいのだが・・・・実は、今日はまだ料理が完成していない。料理班は残って作っていただきたい。みなさんは11時頃にもう一度集合をお願いします。」
村長が言った。すると、鍋などを持った料理人らしき人たちが、石像の前のお供え物を順に運び出していく。
「さて、まだ1時間ぐらい時間があるな。どうする?」
サザンが言った。ライトはポケットから懐中時計を取り出した。今は10時10分。11時はまだ50分も先だ。
「あ、少し相談が・・・・。」
ライトは小さな声でつぶやくように言った。今日ライトが見た夢と、白い龍の関連を、この村の住民であるサザンなら知っているかも・・・。そう思っての事だった。
「相談?いいぜ。ここは人多いし・・・公園に行こうか。」
サザンは言った。噴水の向こう側に、一面の芝生が見える。2人は馬の手綱を引き、芝生の公園へと歩いていった。
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第六章 神龍祭り
2人はベンチに腰かけた。比較的広い公園なのだが、子供が4人ほど遊んでいるだけで、静かな場所だった。
「で、相談って何だ?」
サザンはライトの方を向き、言った。
「あの石像の龍・・・・今日の朝、夢で見たんだ。」
「おぉ!それはいいじゃないか!神龍祭り前日に龍を夢で見た人は、なんか良い事があるって聞いたことがあるぜ。まぁ本当がどうかは知らないがな。」
ライトが話し終わると同時に、サザンは間髪入れずにそう言った。
「でも、『人間に危機が迫っている。詳しいことを教えるから、今日の夜、村から向かって北西の山に来てほしい』って・・・・。夢の中でそう言われたんだ。」
ライトは、これをただの夢と受け取ればいいのか、龍からのメッセージと受け取り、夜に山に行くべきか、ずっと迷っていたのだ。だからサザンに相談したのだが、サザンも初めて聞く話らしく、首をかしげながら口を開いた。
「う〜ん・・・それは俺も初めて聞いたな。神龍が人の夢に出てメッセージを残していくなんて・・・。ただ、神龍はすべての生命に祝福を捧げる者、と言われている。つまり、本当に人間に何か危機が迫っていて、それを感知して教えてくれたのかもしれない。だとしたら怖いな・・・いったい何が起こるんだ・・・?」
サザンが言った後、少しの間沈黙が訪れた。
「とりあえず俺、山に行ってくる事にするよ。」
ライトが沈黙を打ち破り、言った。やはりあれは龍からのメッセージで、絶対に山へ行かなくてはならない。何故か、そんな気がしたからだ。
「そうだな。行ってこい!そんなに高くない山だし、そんなに強い魔獣もいない。と言ってもやっぱり夜は危険だ。モクバ連れて行っていいから、出来るだけ早く帰ってこいよ!」
「ありがとう!」
「でもまだ夜まで時間があるし、まずは立食パーティだ!せっかくの祭りなんだ。祭りが終わるまでは、思いっきりはしゃいだっていいんだぜ。」
サザンは少し笑いながら言った。
「それもそうだな。考えるのは夕方になってからでいいか・・・。」
しばらくすると、広場に集まるようにとアナウンスが流れた。大きなテーブルの上には、立派な料理がたくさん並べられていた。かなりの短時間で作った為だろうか、横に疲れ切った料理人達がいるが・・・。
「お皿とコップはこっちですよ〜。」
エプロン姿の女性が、テーブルの右端からそう言った。すぐ近くにいたサザンは2人分の皿、コップを受け取り、ライトに渡してくれた。
「それじゃ、好きなもの取れよ。俺は先にあっちの取ってくるから。」
そう言ってサザンは、魚料理の並べられているスペースに向かって歩いていった。それを見届けたライトは、目の前に置かれているスープやパンと、ホシモモンガのためにフルーツをいくつか取り、サザンを追いかけた。
「それでは乾杯。神龍の御加護がありますように!」
サザンと合流したちょうどその時、村長の声が響いた。
それからの時間はとても楽しかった。用意されていた料理はかなりの量だったので、たくさん食べても無くなる心配がないほどだったし、初対面の人達も皆関係なく、ライトを迎え入れてくれた。
村人達は皆、1年に一回の行事にはしゃぎ、パーティーを楽しんでいた。
「よし・・・。そろそろ帰るか。あ、今日も夕飯は用意してないが、大丈夫だよな?」
サザンは笑いながら言った。
「もちろん。いくらなんでも、これからまだ食べるなんて言わないよ。」
ライトも笑いながら言う。
「そりゃそうだな!お、持ち帰り用を貰うの忘れてた。」
サザンはそう言いながら料理人の所へ行き、袋を1つ貰って戻ってきた。
「よし、じゃあ帰るぞ!」
サザンは馬に乗った。ライトもそれに続いてモクバの背に乗る。2頭の馬が走りだそうとしたその時だった。
「お前さん。明日の朝頃、わしの家に来てくれぬか?大切な用事があるんだよ。」
村長が、人ごみをかき分けながらライト達の前に出てきて、そう言った。ライトが突然の事に戸惑っている間にも、村長は続けた。
「そうそう、サザンも一緒に来てほしい。詳しいことはまだ言えないが、必ず伝えねばならない事なんだよ。」
「それでは・・・・明日の10時でいいですか?ライトも10時なら大丈夫だよな?」
「うん、大丈夫。」
「では、10時に家で待っておるぞ。帰り道には気をつけてな。」
村長はそう言うと、龍の像の横まで戻っていった。
「用って何だろな・・・?ま、とりあえず帰るぞ!」
サザンの馬が走りだした。その後を追って、モクバも一緒に走りだした。
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第七章 白き龍
サザンの家に戻ってからは、意外とすぐに外は暗くなり、ライトは山の上に行くための準備に追われていた。サザンに貸してもらった防寒用のコートを着て、白い石のお守りを首から下げる。
「くれぐれも気をつけろよ。まぁモクバとホシモモンガがいれば大丈夫だとは思うがな・・・。」
サザンは馬小屋からモクバを呼び出し、その手綱をライトの手に握らせた。
「いってきます。」
「おう!行って来い!」
ライトがモクバの背に乗り、ホシモモンガがモクバの尻尾に掴まると、モクバは勢いよく、山の方向へと走り始めた。
新緑のような柔らかな鬣と背中の新芽が風に揺れる。すっかり暗くなった夜の村を走り抜け、村の周りを覆う柵の外までやってきた。すぐそこには山が見えている。
この山は人が登ることが少ないのか、整備されておらず、ほとんどが草木に覆われていた。
「大丈夫だ、進んでくれ。」
ライトが言うと、モクバは頷き、斜面を駆け足で登り始めた。モクバはホシモモンガと違い、人間の言葉は話さないものの、人間の言葉は理解出来ているらしい。生い茂った木の葉がライトの頭をかするたび、モクバは心配するかのように、足を止め、ライトの方を振り向く。
「俺はこれぐらい大丈夫だ。心配しなくて大丈夫だよ。」
「そうそう。ライトはツノウサギの突進受けたって大丈夫だったんだから!」
ライトに続けてホシモモンガは言った。モクバはその言葉を聞いて、安心したかのようにまた走り始めた。
「まぁたしかに大丈夫だったけど、でも結構痛かったんだぞ?」
「分かってるって。そりゃあツノウサギに突進されてまったくダメージ受けない人なんて、聞いたことないからさ!」
急にモクバが立ち止った。数メートル先にある木の幹をじっと見続け、姿勢を少し低くする。
「何か居る・・・気をつけて!」
ホシモモンガが言うと同時に、木の穴から淡い紫色の何かが飛び出してきた。モクバは咄嗟に方向転換し、距離を置いた。
ライトとホシモモンガはすぐにモクバの背から降りる。
「クラゲタケだ!魔獣の中では弱い部類だけど、毒を持ってるから気をつけて!」
紫色のキノコから細い足が2本が生えたような、人の手のひら程の小さな魔獣だった。クラゲタケはモクバのちょうど真上にくると、膨らんだ体から紫色の粉を吹き出した。
「鼻と口を押さえて!あの粉吸っちゃったら、しばらく体がしびれるよ!」
ホシモモンガに言われ、ライトはポケットに入っていたハンカチを取り出して鼻と口を押さえた。風に乗って粉が地面を這ってきたが、ホシモモンガは上手く上空に飛び上がり、粉の届かない所まで上昇した。
モクバの方はと言うと、素早い動きで粉を避けると、大きくジャンプして、その硬い蹄をクラゲタケの頭に直撃させた。クラゲタケは地面に叩きつけられ、どうやら観念したようだ。それ以上はライト達に攻撃を加えようとはしなかった。
「ヒヒン!」
モクバはクラゲタケに向かって、どうだ!とでも言っているかのように鳴いた。そしてライトに向かって少しだけ走って着て、また背中に乗るように目で合図を送ってきた。
それからは魔獣の襲撃もなく、ただモクバの蹄の音と、風に揺れる葉の音が聞こえてくるばかりだった。ただ、少し上に来たためか、寒くなってきた。ライトはコートの前のボタンを閉め、帽子を深くかぶる。
「そろそろ頂上だよ〜!」
ホシモモンガが飛びながら言った。それから数分後、またモクバが立ち止った。頂上だ。
「おぉ〜・・・・村が見えてる。」
ライトは下を見降ろした。村の民家の明かりが暗闇の中に輝き、地上に現れた星空のようだった。
その時、空が一瞬だけとても明るくなった。そして、細長い光の筋が上空から降りてくる。その筋はライトの目の前に落ち、輝きがより一層強くなった。あまりの眩しさにライトは目をつむる。
「来てくださったのですね。ありがとうございます。」
ライトは目を開けた。目の前に居たのは、純白の龍だった。背中には白鳥のように美しい羽を生やし、後ろ足の代わりについた水色のヒレは、絹の織物のようだった。
龍は地面に降り立ち、前足でしっかりと地面を掴むと、そのまま巨大な細長い体を地面につけ、体を休めた。
「あなたの夢の中で、少しだけお話しさせていただきました。このままでは、人間は世界から消えてしまいます。それを防ぐことが出来るのは貴方だけ・・・・。」
龍が話すと、ライトが首から下げていた白い石のお守りが、龍の声に反応するかのように輝き始めた。
「それは貴方の正体を証明するもの・・・白龍石です。数百年前にあなたの先祖が作り、代々守られ続けた物です。その石を持つ者だけが、私の持つ光のエネルギーを使う事が出来る。そして、光のエネルギーを使う者だけが、ブラックドラゴンの闇を止められる・・・。」
白い龍はそう言ったが、ライトには何が何なのか理解できなかった。白い石も、親に大切にするように言われていつも持っていた、ただのお守りのはずだった。
「今はまだ・・・すべてを理解する事は出来ないかもしれません。ですが、すべての命の終わりを見届ける者・・・ブラックドラゴンは、人間という存在を消そうとしている。そして、それを防ぐ事が出来るのは、白の魔術師の血を引く貴方だけだという事・・・。必ずあなたが、ブラックドラゴンに立ち向かわなくてはならない・・・それだけは忘れないでください。」
白い龍は言い終わると、巨大な羽をはばたかせて宙に浮くと、また一筋の光となって空へと帰ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰り道、ライトはずっと考えていた。何度も何度も、白い龍に言われたことを頭の中で整理した。言われている事はだいたい分かっているのだが、本当に突然の事なので、どうすればいいのか分からない。白い龍が言っていたブラックドラゴン、それがとても恐ろしい存在だという事は分かったのだが、かと言って自分に何が出来るのか・・・・。
モクバもライトが悩んでいるのを察し、ただずっと前を見続けて斜面を駆け降りる。ホシモモンガも、ライトの横に寄り添い、ただずっと静かにライトを見守っていた。
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第八章 村長の家へ
「おかえり。意外と早かったな。まぁ寒いから早く家に入りな。」
「ただいま。」
ライトはコートを脱ぎながら、サザンの家に入った。
「じゃあ、さっさと風呂入って寝る準備だな。俺は後でいいから、先に風呂行ってこい。」
サザンはライトを浴室に案内した。サザンが何も聞かないのはやはり、ライトが何か考えているのを察しての事だろうか。
ライトは早めに風呂を出ると、すぐに寝る準備を始めた。ホシモモンガは今日もまた暖炉の上に登り、一足先に眠りについていた。
ライトもすぐにかけぶとんをかぶり、ベッドにもぐり込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ライト、そろそろ起きろ。10時に村長に所に行く約束してあるからな。」
サザンの声でライトは目を覚ました。昨日の疲れからか、意外とぐっすり眠っていたようで、もう9時40分だ。ライトはすぐに着替え、出かける準備をした。ホシモモンガは水の石をこすって、汚れを落としている。
「準備終わったか?それじゃ、村長の家はすぐそこだから、今日は徒歩で行くぞ!」
サザンは靴を履きながら言った。その間に、ホシモモンガも水の石の手入れを終えたようで、ライトの肩に飛び乗ってきた。
全員が外へ出ると、サザンは玄関から向かって左側にある、3軒先の家を指さして言った。
「あれが村長の家だ。他の家よりでかいし、見た目も豪華だからよく分かるだろ。」
確かに、他の家がごく普通の木で出来た茶色い家なのに対し、白い壁と赤い屋根がかなり目立った大きな家だった。
ほんの数歩歩くと、すでにそこは村長の家だった。
「おはようございます。父さんは自分のお部屋ですでにお待ちしてますよ。サザンさんと、えーっと・・・・」
「ライトです。」
「失礼しました、ライトさんですね。お上がりください。お部屋までご案内しますね。」
「村長の娘さんだ。すげぇ美人だろ?」
サザンはライトの耳元で、ほんの小さな声で言った。村長の娘に案内され、家の中の奥の部屋の前にやってきた。
コンコン
「父さん、サザンさんとライトさんがいらっしゃいましたよ〜。」
カチャッ
「おぉ、約束通り来てくれたのか。とりあえず上がってくれ。カレン、2人に紅茶を。」
村長は言った。
「はーい。」
村長の娘、カレンはそう返事して、キッチンの方へと駆けていく。
「ちょっと長くなるかもしれないお話だ。ソファーに座ってくれ。」
2人がちょうど座れるぐらいの大きさのソファーが2つ、机を囲むように置いてあった。村長が右側のソファーに座ったので、2人は左側のソファーに腰かけた。
「紅茶をお持ちしました。ごゆっくりどうぞ。」
クレアはライトとサザン、そして村長の分も用意した紅茶を机の上に置いて、また部屋を出ていった。
村長は紅茶を一口すすると、話し始めた。
「おととい、神龍のお告げがあったのじゃ。人間の滅亡の危機を救える唯一の人物が、この大陸にやってきたと・・・・。おととい、それはお前さんがこの村に来た日で間違いないな?」
おととい、それはライトがこちらにやって来た日、そして、夢で白い龍を見た日だ。
「はい。間違いありません。そして俺もおとといの夜、夢で白い龍を見たんです。昨日は、夢の中での会話の続きを話したいと言われ、村のすぐ横の山の上で、直接龍に会いました。」
「そうか・・・差支えなければ、詳しく聞かせてくれぬか?」
村長は言った。ライト自身もまだ完全に頭の中の整理がついたわけではないのだが、夢の中で言われた事、そして昨日山の中で言われたことを、起こった順番に話した。
「ですが、白の魔術師が何の事なのか分かりませんし、その血を引いているという事も、俺は本当に何も知らなかったんです。
そして、ブラックドラゴンという存在がなぜ人間を消すつもりなのか、それも分からないんです。」
ライトは言った。自分はただ、自国の政府に追われて異大陸へ向かった、ただの逃亡者のはずだった。それが、今まで物語の中でしか聞いたことのなかった「龍」が自分の前に現れたり、突然人間を救うように言われたり・・・・・。
「うむ・・・。この大陸の伝説を知らなければ、理解するのは難しいだろうなぁ。あまり詳しい事はわしも知らないのだが、大雑把でよければ話そう。」
村長は言った。ライトは静かに頷いた。
今更脱字を発見したので修正。
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第九章 大陸の伝説
500年ほど前、まだ人間に知られていなかったある大陸に、10人の漂流者が流れ着いた。
漂流者たちは、その島に住んでいた7種類のドラゴン達と仲良くなった。そしてまた新たな船を作った。頑丈で、荒波程度では壊れない、ドラゴンの魔法がかかった船。
その船で10人の漂流者はまた、遥か遠い自分たちの大陸へと帰っていった。
しばらくしてその大陸は、たくさんの人間に知られ、ドラゴンの居る大陸として有名になった。
しかし、間もなくドラゴンは絶滅した。初めてドラゴン達が目にした人間は、あの10人の漂流者。優しくて、自分たちと仲良くしてくれた、親切な人間だったのだ。
ドラゴン達は、その人間たちとは似ても似つかない、悪い人間たちの攻撃を、まったく予想もしていなかった。ドラゴンは皆、人間は優しいものだと思っていた。
噂を聞きつけた10人の漂流者たちは、慌ててドラゴンの住む大陸へと戻ってきた。変わり果てたドラゴン達の姿を見て、漂流者は嘆き悲しんだ。
10人は5人ずつに分かれ、白と黒、2頭のドラゴンを魔術によって作り出した。その2頭は、生と死の象徴となり、大陸を支配する新たな存在となった。
そして今も2頭のドラゴンは今も、人間の住む場所から遥か遠く離れたところで暮らしている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・以上がこの大陸の伝説だ。白の魔術師というのは、お前さんが昨日会ったという神龍を作り出した5人の事ではないだろうか。
そしてブラックドラゴンは、おととい来たばかりのお前さんは知らないだろうが、この村の人なら皆知っている、死の象徴の竜だ。サザン、お前さんなら知っているだろう?」
村長はサザンの方を向いて言った。
「えぇ・・・それはもちろん知っています。」
「今とは言わないが、いつか、ライトさんに話してやってくれ。お前さんとわしだけが知っているあの出来事をな・・・。」
「はい・・。分かりました。」
ライトは2人を交互に見ながら、2人の会話を聞いていた。村長とサザンだけが知っている出来事・・・一体何なのだろうか。
「お前さんも、まだすべてを理解する事は出来ないだろうが、しかし、神龍に認められた存在として、ブラックドラゴンに立ち向かわなければならない時が来るだろう・・・。」
「・・・・・・。」
ライト自身も薄々感づいていた。自分の意思とは関係なく、大きな運命に正面から立ち向かっていかなくてはならない。しかし、ほんの数日前までごく普通の一般人だった自分に、出来るのだろうか。
「まぁそんなに焦らなくてもよい。今すぐにブラックドラゴンを倒しに向かえなんて誰も言っとらんし、お前さんにはその白龍石によって、神龍の守護がかかっておる。そして、肩の上にいるお前さんの相棒、見た目によらず強く、心強い魔獣なんだよ。」
村長が言うと、ホシモモンガはそっちを見た。
「そのホシモモンガは、海で出会ったのかい?」
「はい。」
「そうかそうか。名前はなんていうんじゃ?」
「名前は・・・まだつけていません。」
言われてみれば、2日間ずっと一緒にいたが、まだ名前はつけていない。
「まだつけとらんか。まぁ、これから先ずっと仲良くしていくんだから、つけてやるんじゃぞ。では、これでわしが話したいことはすべて終わった。突然呼び出してすまなかったな。」
村長はそう言いながら、部屋の扉を開けた。
「カレン、玄関まで2人を案内してくれ。」
「はーい。」
2人は村長にお辞儀をして部屋を出た。カレンに案内されて村長の家から出ると、サザンの家につくまで、ライトもサザンも一言もしゃべらなかった。とはいえ、ほんの数歩歩いただけなのだが。
「・・・ブラックドラゴンのこと、話してやるよ。リビングに来てくれ。」
家に入るとすぐにサザンは言った。ライトはサザンの後ろについて歩いていった。
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第十章 嵐の夜の訪問者
「あれは、俺が農場を経営し始めたばかりの頃・・・13年前だな。」
サザンは話し始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
風が激しく吹き荒れる日だった。風が激しくドアを叩きつける中、かすかに聞こえてきたのは、たしかに人がドアを叩く音だった。
「夜中に申し訳ありません。泊めていただけませんか?この嵐では、外で寝ることも出来ません。」
それは子供の声だった。サザンは眠い目をこすりながら、ドアを開けた。そこに居たのは、灰色のローブを着た、まだ10歳にも満たないであろう少女だった。雨風をしのぐため、フードを深くかぶっている。
「大丈夫か?ほら、入れ。」
サザンは少女を家に入れ、タオルを手渡した。
「あいてる部屋あるから、そこを使ってくれ。」
サザンは少女を空き部屋に案内した。少女は、びしょぬれになった顔をタオルで拭く。
突然の訪問客に一瞬戸惑ったものの、この村に宿泊施設はない。そのため、旅人は大概、どこかの家に泊めてもらっているのだが、サザンの家は村の一番手前にあるからか、よく旅人が訪ねてくる。そのために、昔は物置として使っていた部屋を一つ空け、旅人が泊る事の出来る部屋にしたのだった。
サザンは自分の部屋に戻ると、またすぐにベッドにもぐり込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
朝が来た。サザンは起きて着替えると、部屋から出た。ちょうどその時、少女が昨日使ったタオルを持って、部屋の前にやってきた。
「タオル、ありがとうございました。申し訳ありませんが、こちらで用事があるのは今日の夜なんです。今日一日の間泊めていただけませんか?お仕事のお手伝いならやりますので・・・。」
「あぁ、構わないよ。別に仕事っていっても、たいした事はないから、何もしなくて大丈夫だ。それに、まだ疲れてるだろ?夜までゆっくりしてくれよ。」
サザンは少女からタオルを受け取り、窓を開けてそこにかけておいた。そして靴を履き、馬小屋へと向かった。
まだ当時4頭しかいなかった馬を外に出し、自由に歩かせる。その間に井戸で水を汲み、バケツ一杯の水を畑に向かって大雑把に撒く。
いつの間にか少女も外に出ていた。少女が一頭の馬を撫でると、不思議なことに、サザン以外にはあまりなつかない馬たちが皆、少女の周りに集まっていく。
「すごいな。ここの馬たち、まだあんまり人に慣れてないのに。そうだ、乗ってみるか?」
サザンは言った。
「・・・乗ってみたいです。」
少女はそう答えた。サザンが少女を抱きかかえ、馬の背に乗せる。
「意外と高いんですね・・・。」
少女は馬の手綱を、しがみつくように握っている。馬はゆっくりとサザンの農場の敷地内を歩き回る。
「そうだ、名前はなんて言うんだ?」
「私の名前はビアンカです。」
「そうか。馬乗るのは初めてか?」
「はい。動物とあまり触れあったことなくて・・・・。」
サザンとビアンカは、馬が歩き回っている間ずっと、何気ない会話を続けた。
その後もビアンカは、色んな事を手伝ってくれた。馬小屋の掃除も、暖炉用の薪運びも。夕方の畑への水やりも、ビアンカが代わりにやってくれた。
「今日は助かったよ。どうせならずっとバイトとして働いてもらいたいところだ。」
「・・・ありがとうございます。」
夕飯のシチューを飲みながら、2人はゆっくりくつろぐ。
「ところでお前はどこから来たんだ?」
「海の向こうからです。」
「別の大陸から、一人で来たのか!?」
「はい。」
遥か遠い海の向こうから、こんな小さな子供が一人でやってきた。どう考えてもおかしいのだが、ここは何か事情がありそうだ。サザンはあえてそこには触れず、会話を進めた。
「そう言えば、夜に用事があるって言ってたけど、何をしに来たんだ?」
「私も、はっきりとは伝えられていないんです。ただ今日の夜12時に、そこの海岸に行くように、親に言われました。待っていれば、待ち人は来ると・・・。」
「そうか〜・・・。子供に夜12時ってのは大変だよな・・・今から少し寝ておくか?」
今は9時過ぎだ。仮眠をとる時間はあるだろう。
「それでは、少し仮眠をとらせていただきます。」
ビアンカは言うと、夕飯のお皿を全部重ねてから、部屋へと戻っていった。
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第十一章 黒竜の闇
サザンは食器洗いを終えると、暖炉の前で紅茶を飲みながら読書を楽しんだ。窓辺に干してあったタオルも、もう乾いている。サザンはタオルやその他洗濯物をタンスにしまい、また時計を見た。そろそろ11時半になる。
カチャッ
ドアが開く音が聞こえた。
「お、起きたか。そろそろ準備始めた方がいいぞ。」
「はい。準備といっても、持ってきた荷物はそのままなので・・・これをそのまま背負って行くだけですが。」
「そうか。あ、外は寒いだろうから、暖炉で暖まっていくか?」
「はい。ありがとうございます。」
ビアンカは少しだけ微笑んでそう言った。ビアンカの笑顔を見たのは、今のが初めてかもしれない。
「その首飾り、綺麗だな。宝石でもなさそうだが、何で出来てるんだ?」
サザンはビアンカがつけていた首飾りを見て言った。赤、オレンジ、薄茶色、緑、群青色、水色、白の7色の、キラキラと輝く物が順に並んでいる。
「私も分かりません。母から貰ったんですが、何かは聞いていないので・・・。」
ビアンカは言った。しばらく何気ない会話を続けているうちに、また少し時間が経つ。
「それでは、そろそろ行ってきますね。」
「いってらっしゃい。またここには戻ってくるのか?」
「・・・用が済んだら出発するつもりだったんですが、やっぱり夜中の海は危ないので・・・また今日の夜もお世話になります。」
「分かった。俺は先に寝てるかもしれないけどな。」
サザンは、ビアンカを玄関まで見送った。ビアンカは荷物をリュックのようにして背負い、海をめざして歩いていった。
「よし、そろそろ寝る準備するかな。」
サザンは暖炉の火とリビングの明かりを消した。そして自分の寝室へ入り、さっき読んでいた本を棚の中にしまう。そしてまくらを定位置に置き、かけぶとんをかぶる。
その時、外で大風が吹いた。ほんの十数秒程なのだが、昨日の嵐がまた戻ってきたかのような、強い風だった。風が通り過ぎた直後、小屋の馬たちが急にざわめきはじめた。
サザンもまた、妙な胸騒ぎを覚えていた。窓を開け、ビアンカが向かった海の方を見る。ちょうどその時、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「わしじゃ。開けてくれんかの?」
村長の声だった。こんな時間に村長が一体何の用事だろうか。
「村長、どうしました?」
「ここに・・・異大陸の少女がいなかったか?」
「えぇ・・・さっきまでいましたが、用事があると言って、海の方へ・・・・。」
サザンが言うと、村長はすぐに言った。
「大変じゃ・・・後を追うぞ!」
サザンは村長に言われ、何が何だか分からないまま、村長と一緒にビアンカの後を追って走った。
「村長、一体何が?」
サザンは走りながら聞いた。その直後、2人は同時に立ち止った。
「何だ・・・邪魔者が現れたか。」
闇の中に溶け込む漆黒の鱗。燃え盛る炎のような赤い瞳は、しっかりとサザンと村長を見据えていた。
「やはりブラックドラゴン、おぬしだったか。異大陸の少女を狙う邪な気の正体は・・・。」
村長は一歩前に進みながら言った。
「お前たちに言われたくはないな。竜族を滅亡に追い込んだ、野蛮人の血を引く者たちよ・・・。」
ビアンカは、気を失っているのか、目を閉じたまま動かない。
「待ってくれ!なぜビアンカを・・・その子が何をしたって言うんだ?」
サザンは言った。もちろん、初めて見たブラックドラゴンへの恐怖は大きかった。しかし、サザンの心の中では、その恐怖よりも、今日一日一緒に過ごしてきたビアンカを守りたい気持ちの方が大きかった。ただ、ビアンカは相変わらず、ドラゴンの尻尾にもたれかかったまま動かない。
「一つだけ言っておいてやろう。この少女は我輩の存在に深く関わっている・・・。お前たちとは相成れない存在だ。」
ブラックドラゴンはそう言うと、ビアンカを支えていた尻尾を一瞬離した。そしてすぐに両手でビアンカを掴み上げると、そのまま羽ばたいて上空へと舞い上がった。その羽ばたきによって、海辺の砂が一緒に舞い上がる。
「ビアンカ!」
ブラックドラゴンはそのまま遥か彼方へと飛び去っていった。死の象徴であり、死を支配するブラックドラゴンを前に、ごく普通の人間であるサザンは、どうする事も出来なかったのだ。
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第十二章 出発の時
「思えば、なんだかお前に似てるんだよ、ビアンカは。嵐に導かれたかのようにこの大陸にやってきたわりには、この大陸の事は何も知らないくてな・・・。
まぁ、長々と昔のことを話して悪かったな。俺は馬に餌やってくるぜ。」
サザンはそう言うと、外へ出ていった。ライトも部屋に戻ろうと、イスから立ち上がった。
「僕も初めて聞いたよ。ブラックドラゴンが人間の女の子を連れ去ったなんて。ブラックドラゴンの目的は何だったんだろう・・・?」
ホシモモンガは言った。
「ビアンカって子が、ブラックドラゴンの存在に深く関わってるって言うのは、どういう事だろうな・・・。」
「分からないなぁ・・・。ブラックドラゴンが少女に危害は加えていないと信じたいんだけどね〜・・・。」
死の象徴、ブラックドラゴンについては、ライトにはもちろん、ホシモモンガにも、まだよく分からない事が多かった。
「ただ、ブラックドラゴンが人間を消そうとしているのが本当で、立ち向かえるのが本当に俺だけだっていうなら、やっぱり早めに出発しないといけないのかな・・・。」
ライトはつぶやいた。
「そうだね。あんまりゆっくりしてたら、間に合うものも間に合わなくなるかもしれないし。だけど、準備だけは怠らないようにね。凶暴な魔獣だっているんだから。」
「そうだった・・・・。」
すっかり忘れていたが、ツノウサギやクラゲタケのような魔獣があちこちに居るのだ。魔獣を倒せなければ、ブラックドラゴンに立ち向かう以前の問題になってしまう。
ガチャッ
玄関の扉が開いた。サザンが馬小屋から帰ってきたようだ。
「サザン・・・急で悪いけど、俺は早いうちに出発しようと思ってるんだ。まだ準備とかは全然出来てないけど・・・。」
サザンがイスに座るのとほぼ同時に、ライトは意を決して言った。
迷った所で、どっちみち自分が行くしかない。それならやはり、間に合わなくなる前に行こう。そう思っていた。
「そうか・・・。まぁ、なんとか出来るのはお前しかいないみたいだもんな。せっかく仲良くなったのに別れるのもつらいが、俺は応援してるぞ!」
サザンはそう言うと、またすぐに立ち上がり、棚の引き出しを開けた。一番上を開けて閉め、二番目の引き出しを開けて、サザンは言った。
「これやるよ。ちょっとした武器にはなるだろ。」
サザンが持っていた布の中から出てきたのは、少し古そうな短剣だった。
「村の外に行けば魔獣がうじゃうじゃ居る。まぁそれはお前も知ってるだろうが、こういうのはちゃんと持っとかないとな。俺のお古だが、もうずいぶん使ってないやつだから、お前にやるよ。」
ライトはサザンから短剣を受け取った。一応ツノウサギの時のように、魔法を使って戦う事は出来るが、それなりに集中力を要する魔法だけで戦い続けるわけにはいかない。
「ありがとう。」
「あ、出発の時は俺を呼んでくれ。村の外まで見送りたいんだ。」
ライトは頷いた。その後すぐ、準備のために部屋へと戻った。
「いよいよこれからだね。僕も出来る限りの事はするよ!」
ホシモモンガはライトの肩に飛び乗りながら言った。
「ありがとう。あ、そうだ、名前・・・ちゃんと考えておくよ。」
「わーい!楽しみに待ってるよ!」
ホシモモンガの笑顔に、ライトもつられて笑顔になる。ライトは机の上に、サザンから貰った短剣と、水の石、そして白い石のお守りを置いた。
ここに来てから3日の間に、色々な事がありすぎて、まだ頭の中で整理が出来ていない事もある。
しかしはっきりした事は、白い龍を生み出した人達の子孫が自分で、その血を引く自分にしか、ブラックドラゴンを止めることは出来ない。だから拒むことは出来ない。迷っている場合でもない。ライト自身がやるしかないのだ。これは、逆らう事の出来ない宿命なのかもしれない。
カバンの中に短剣と水の石を入れる。そしてお守りは帽子と一緒に置いておいた。
ふと、タンスの上の写真立てに目が行った。灰色のローブを着た少女・・・。これはビアンカが置いていったものだったようだ。
それからしばらくの間ライトは、ずっと考えっぱなしだった頭を休める為、ぼーっとして過ごした。ただ、こういう時はなぜか、時間が過ぎるのがとても速い。すぐに昼は過ぎ、日はもう西側にあった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それじゃ、村の外まで送ってくよ。来い!モクバ!」
サザンが呼ぶと、モクバは馬小屋の中から勢いよく飛び出してきた。モクバはライトを背中に乗せ、サザンの後をついてゆっくりと歩く。
立ち並ぶ家々の前を通り抜け、神龍祭りがおこなわれた広場を通り過ぎる。ライトの事はすでに村中に知れ渡っているのか、ちょうど横を通った人達は皆ライトに、頑張って、と声をかけていく。そして村の出口に近づき、少し大きな建物の前を通った時だった。
「ライトさん・・・ですよね?お渡ししたいものがあります。少しだけお待ちください。」
白衣を着た女性だった。女性は建物の中に入っていったが、ほんの数十秒ほどでまた戻ってきた。
「私は魔獣の研究をしている者です。この付近に棲む魔獣の図鑑が完成したので、何かの役に立てればと思い・・・。あ、地図も一緒に入れています。」
ライトは、魔獣研究の女性が持っていた本を受け取った。本の間には地図が挟まっている。広げてみると、この大陸全体の地図のようだ。
「それでは頑張ってください。応援していますからね。」
ライトは軽くお辞儀をして、またモクバの背に乗った。ライトもサザンも何も喋らず、モクバの蹄の音だけが辺りに響く。
「それじゃ、気をつけろよ。」
ライトはモクバの背から降り、ホシモモンガを肩にのせた。モクバは黙ってライトの事を見ている。
「サザン、モクバ、ありがとう。行ってくるよ!」
ライトはそう言うと、村を覆う柵と柵の間を通り、村の外に出た。そして、もう一度だけサザンの方を振り返ってから、広い草原へと飛び出していった。
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第十三章 冒険の始まり
「そうだ。名前・・・コメットっていうのはどうだ?」
ライトはホシモモンガに言った。
「お!いいね!じゃあ、これからはコメットって呼んでね!」
ホシモモンガの名前は、思っていたよりあっさりと決まった。ダメだしが出た時用にいくつか候補はあったのだが、それは必要なかったようだ。
「そうだ、さっきもらった図鑑で、この辺りに出る魔獣を調べておこうよ!いざ出会ってから焦るのもよくないしね。」
コメットに言われ、ライトはカバンの中にしまってあった魔獣図鑑を取り出した。1ページ目を開くと、さっそくそこには、この草原に棲む魔獣が載っていた。
「えっと・・・ツノウサギとライレオン、夜にはシャドウキャットが出るらしい。」
「あ〜シャドウキャットね。人間に直接危害は加えないけど、寝ている人の持ち物をこっそり盗んでいくから、夜になる前にこの草原を抜けるのが無難だね。」
コメットが喋っている間も、ライトは図鑑を眺め続けた。シャドウキャットは、見た目は普通の黒猫とたいして変わらないのだが、鮮やかなオレンジ色の瞳が印象的だった。
ツノウサギは一度見たことがあるので分かるが、ライレオンとは何なのか。ページをめくると、首に稲妻模様のあるトカゲのような生物が描かれていた。しかし、説明によると2,5メートル程あるらしい。想像してみると、ずいぶんと大きなトカゲだ。よく見ると、トカゲというよりもカメレオンに近いかもしれない。
「ライレオンは、そんなに攻撃的じゃないけど、もし戦う時は、鱗が固くてなかなか攻撃が効かないから、ちょっと注意した方がいいかもね。」
コメットはライトの肩から降りると、皮膜を広げて空を舞う。近くに魔獣が居ないかどうか探してくれているらしい。
「何か居るか?」
「ううん。今のところ大丈夫だよ。」
コメットはまたライトの肩の上に戻ってきた。
しばらく歩いていると、さっきまでは一面が草原だったのだが、この辺りはまばらに木が生えている。小鳥が木から木へと飛びまわり、さえずっている。
その中に一本だけ、違う種類の木があった。幹はずいぶんと太く、葉っぱは尖っていて細長い。ライトが何気なく近づくと、首からさげた白い石が光り、それと一緒に木の葉が光る。
「何だ・・・?」
「それは魔術の木ですよ・・・。」
声は上空からだった。遠くからだんだんと近づいてくる大きな白い姿。あの白い龍だった。
「私はホワイトドラゴン、ツィエーロです。紹介が遅くなり申し訳ございません・・・。
あなたの先祖である魔術師達は、大陸間の移動を楽にするため、一部の木に魔法をかけたのです。それが魔術の木です。魔術師の血を引くものだけが、魔術の木と木の間を、自由にワープする事が出来るのですよ。」
ツィエーロは言った。
「だったら、ここからもっと遠い所まで一気に飛んでいけるって事なのか?」
「いいえ、魔術の木は一度見つけたものしか使えません。ですので・・・どこかで魔術の木を見つけた時、またすぐここに戻ってくる事なら出来ますが、今ここからどこかへ移動する事は出来ませんね・・・。」
「まぁ、いきなり遠くに行ったところで、強い魔獣にあっさり負けちゃうだろうし、ゆっくりしすぎない程度にゆっくり行った方がいいよね!」
「まぁ・・・そうだな。でも、俺たちは結局どこへ向かえばいいんだ?」
コメットの言うとおり、いきなり遠くに行ったとしても危険が伴うだけだ。さらに、村から出たのはいいが、ブラックドラゴンの居場所もはっきりしていない為、結局どこを目指して歩けばいいのか分からない。
「実を言うと私も、ブラックドラゴンの居場所は知らないのです・・・。彼は出来るだけ人間を避け、冥界に最も近い場所からほとんど出てくることはないと言われています。ですが、その手掛かりを持つ魔獣や、他の村の人間はきっと居るでしょう。一度、地図を見てください。」
ライトは地図を広げた。すると、ところどころに村のマークがあり、今ライトが出てきた村以外にも、人が住んでいる事が分かった。
「人が居れば、きっとそれだけの情報が得られるでしょう。人間の村を目指すのもいいかもしれません。
私はそろそろ戻らねばなりません・・・。あなたが私を必要とするとき、その白龍石に向かって念じてくだされば、私はすぐに向かいますので・・・。それでは。」
ツィエーロはそう言うと、大きな羽を羽ばたかせて空へ舞い上がると、そのまま垂直に、天へと昇っていった。
ライトはカバンを持って、また歩き始めた。遠くを眺めると、遠くへ行くにつれて木の数がだんだんと増えていっている。
「この草原の向こうは森になってるんだよ。そこを超えると風の渓谷。そこに僕の知り合いがいるし、何か手掛かりがつかめるかもしれないから、とりあえず森を越えて、風の谷を目指そうよ!」
「そうだな!」
とりあえずシャドウキャットに遭わないためにも、夜までには森にたどり着きたい。ライトは歩く速度を速めた。
森に近づくにつれ、生えている木も、細く縦に長いものから、太くがっしりとしたものに変わっていく。鳥でも居るのか、木の葉がガサガサと音を立てている。
「あれ?ライト、さっきまでかぶってた帽子は?」
「ん?」
ライトは頭に手をあててみる。すると、帽子がいつの間にかなくなっている。
「どっかで落としたのか?」
ライトは来た道を振り返ってみるが、この辺りには落ちていない。だとしたら、もっと遠くで落としてしまったのだろうか。
「でも、ついさっき僕が話した時はかぶってたよね?」
コメットは言う。草原の向こうの森と谷の事を話していた時には、まだあったという事だ。という事は、まださほど歩いていないが、その間のどこかで落としたのだろうか。
「!・・・ライト!犯人見つけたよ!」
コメットが上を見上げて言うので、ライトも上を見た。葉と葉の間で、緑色の何かが動いた。
「あれは・・・ライレオン?」
ライトは言った。しかし、図鑑で見たのは全身が茶色かったのだが・・・。
「ライレオンは体の色を変えられるんだよ。僕も忘れてたけど・・・。」
「ケケケッ!」
ライレオンは帽子に長い尻尾を巻きつけながら、挑発的に笑った後、木から飛び降り、生い茂る草むらの中に身を潜めてしまった。
「シャドウキャットじゃなくてライレオンに物を取られるとは・・・。」
ライトもこればかりは予測していなかった。もう森はすぐそこなので、すっかり油断してしまっていた。
「取り返しに行こう!相手は子供だからそんなに怖くないはず!」
コメットは言い、ライトの肩から地面に降り立った。そして、そのまま草むらの中に飛び込んでいった。ライトもそれに続き、生い茂る草の中に踏み込んだ。
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第十四章 魔獣のイタズラ
「どこだー!出てこーい!」
「声出すと、逆に逃げられるんじゃないか?」
「・・・しまった!」
ライトとコメットは、帽子を盗んだライレオンを探して、草の中を駆け回った。しかし、体の色を変えて隠れるライレオンを、どう探せばいいというのだろう。
「まったく・・・子供ってのは、人間に限らず、イタズラが好きなのか?」
ライトはつぶやく。その時、わずかに向かいの草むらが揺れた。
「僕が行ってくるよ!」
コメットはとても小さな声で囁いた。そして静かに宙へ舞い上がると、勢いよく草むらに向かって突進していった。
ドスッ!
「ミギャア!」
「・・・ごめんなさい。」
コメットが突進した草むらから出てきたのは、黒いネコだった。シャドウキャットだ。
「ニャッ!」
シャドウキャットはコメットに向かってネコパンチを繰り出す。しかしコメットは、軽々しく攻撃を避け、宙に舞い上がる。
「フニャ〜・・・。」
シャドウキャットは不機嫌そうに鳴くと、草むらから飛び出し、今ライト達が来た方向へと走り去っていった。
「う〜ん・・・。何を手掛かりに探せばいいんだろ。今みたいにむやみに攻撃して、ツノウサギの大群にでも当たったら怖いよね〜・・・。」
ライトとコメットは、辺りを何度も見まわしながら、歩き続ける。その時だった。
パシッ!
「痛っ!」
ライトの足を、何か細長い鞭のようなものが叩いた。
「あいつだ!」
コメットが言った時、草の中に黄色い目が見えた。帽子に巻きつけた尻尾を揺らし、先ほどの子供のライレオンが、伸ばした舌をしまいながらこちらを見ている。ライトの足を叩いた物の正体は、ライレオンの舌らしい。
「ライレオンは全身から電気エネルギーを放出してるから・・・痛かったでしょ?」
「うん・・・結構・・・。」
そう言った時、ちょうどライレオンと目があった。すると、ライレオンは尻尾を高く上げ、帽子をライト達から見えやすい位置に持ってきた後、また草むらの中に姿を消した。
「あれは間違いなく挑発してるな・・・。」
「そうだね。なんか腹立つけど、ここは落ち着かなきゃ・・・。」
コメットはそう言って、少し上昇し、高い位置からライレオンを探しはじめた。しかし、ライトは、ライレオンを見失わないよう、しっかりと目で後を追っていた。
「そこだ。」
ライトは小声でコメットに伝えた。
「ほんとだ!僕があそこに突進してくるから、すぐにライトは魔法を打ってくれる?」
「ok!」
ライトが言うと、コメットは音を立てないようにゆっくりと近づいていく。そして、草むらに向かって急降下する瞬間、ライトに目で合図を送った。
ライトはその合図を受けて、すぐに魔法を唱えた。水の弾がライトの手の周りを回る。
コメットの急降下は、たしかにライレオンを直撃した。その瞬間、ライトの放った水の弾がライレオンに追撃を加える。
「クルル・・・。」
ライレオンは痛そうに唸った後、反撃をしようとしているのか、ライトに向かって走ってきた。
「待て!」
コメットが素早い動きでライレオンの前に立ちふさがり、両手から青い光を放つ。その青い光は高波へと変化し、ライレオンを強く叩きつける。
「クルッ!」
高波をもろに受け、倒れたライレオンから、コメットが素早く帽子を奪い返す。
「投げるよ!はい!」
コメットが投げ渡した帽子をライトは上手く受け取ったした。その時、ライトから向かって右の草が大きく揺れた。
「クルルル・・・。」
草だと思っていた物は、大人のライレオンだった。緑色だった体色を茶色に変え、ライトに向かって歩いてくる。ライトはこれはまずいと感じ、咄嗟にその場から離れようとした。
「大丈夫だよ!敵意はないみたい!」
コメットはそう言って、大人のライレオンの頭の上に乗った。
「キュン!」
「クルル・・・。」
コメットとライレオンは、魔獣の言葉で何か話している。しばらくしてコメットがライトの肩の上に戻ってきた。
「翻訳するねー。『うちのイタズラっ子が迷惑かけてすまなかった。あとできっちり叱っておくよ。シャドウキャットの真似はするなってね。』だってさ!」
ライレオンはコメットの翻訳を聞き届けると、尻尾で子供を掴んで背中に乗せると、草原の方へと去っていった。
「さて、森へ向かおうか。あんまりゆっくりしてて、今度はシャドウキャットにでも盗られたら、シャレになんないからね(笑)」
「それもそうだな。」
旅の開始直後に少しバタバタしてしまったが、もう森はすぐそこだ。ライトはコメットを肩に乗せ、森へ向かって歩いていった。
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作者のつぶやき
大学の入学式からさっそく忙しい・・・><
小説を書き溜めておいて正解でした。一週間かけて、一話書けてません(笑)
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第十五章 森を狙う者
森についてからライトとコメットは、テントを張り、そこで夜をすごした。
「ライト!朝だよ!」
コメットの声でライトは目を覚ます。朝日が木々の間から漏れ出ている。
森の中は静まり返っており、ライトが踏んだ落ち葉が音を立てるだけだ。時々、かすかに鳥が鳴く声が聞こえてくるのだが、またすぐに静かになってしまう。
「この森は魔獣があんまり居ないのか?」
「いや〜そんな事もないと思うんだけどね〜・・・。まだ森の入口だからかな?」
コメットは言った。ライトもそう思ったのだが、なぜだか妙な予感がする。
「(何かが起きてるんじゃないだろうか・・・。)」
ライトは、一切物音はしないにも関わらず、辺りを見回しながら歩く。その時だった。
ドサッ!
「!」
ライト達の前に突然倒れ込んできたのは、背中にバラが咲いたカマキリのような魔獣だった。
「ローズカマキリだ・・・。どうしたんだろう?」
コメットはライトの肩から降り、地面に降り立った。それと同時にローズカマキリは、ライトの身長と変わらない大きさの体を引きずりながら、立ち上がった。
その鋭い目つきに、ライトも思わず後ずさりをする。
「早くこの森から離れなさい。死んでも知らないわよ!」
人間の言葉が話せるようだ。ローズカマキリは人間の言葉でそう言うと、また森の奥深くへと飛び込んでいった。
「結構ひどい怪我してたよな・・・。」
「あ、ライトも見た?」
あのローズカマキリの羽はボロボロで、深く傷ついた足と胸には血痕も見えた。この森で一体何が起こっているのだろう。
「よく分からないけど、早く森から離れろって言ってたよな。まだ入口は近いし、一回森から出るか。」
「それもそうだね!」
ライトは来た道を引き返しはじめた。しかし、つい先ほどまではなかったはずの、毒々しい色の花が道を塞いでいる。それどころか、花は自ら動き、トゲのついた葉を振り回し、ライトに迫ってくる。
「あれは何だ?あんなの図鑑に載ってたっけ?」
「僕も見てないけど、まだ人間が見つけてない魔獣かもしれないし・・・。でも、植物型の魔獣なんて、僕も聞いたことないよ!」
幸い、花の動きはさほど速くない。ライトは後ずさりしながら、花の様子をうかがう。その時、先ほどのローズカマキリが木々の間から飛び出してきて、のこぎり状の腕で花を切り裂いた。
「ギュアア!」
花は痛々しい悲鳴をあげた後、葉を散らして地面に倒れ込んだ。
「遅かったみたいね・・・もう逃げることは出来ないわ。」
ローズカマキリが言った直後、木々の間、草むら、木の葉の中、さまざまな所から、大量の毒花が飛び出してきた。20匹は越えているのではないだろうか。トゲ付きの葉を鞭のように振り回しており、花びらの鋭いトゲは、まるで牙のようだ。
ライトはとっさに、魔法を唱える準備をする。水の石を握りしめ、水の弾を自分の目の前に浮かびあがらせた。
「待ちなさい。相手は植物。水属性の技は効き目が薄いわ。別の魔法は使えないの?」
ローズカマキリは言ったが、ライトに使えるのはこの魔法1つだけだ。
「俺が使えるのはこれだけだよ・・・。」
「その魔法だけで戦えば、間違いなくやられるわよ。剣でも槍でも弓でもいい。死にたくなければ武器を持ちなさい!」
ローズカマキリが言った直後、毒花のうちの1匹が飛びかかってきた。ローズカマキリは一歩後ろにさがって攻撃を避けると、強烈なカウンターを毒花に浴びせた。
その間にライトは、サザンから貰った短剣を取り出した。コメットも宙に浮きあがり、トゲ付き葉の攻撃を素早く避けると、爪で毒花を引っかき、暴れる毒花を押さえつける。
「こっちの方が・・・動きやすいわね。」
ローズカマキリが言うと、その体が緑色の光に包まれた。その光の中から出てきたのは、長身の痩せた女性だった。イバラが巻きついた大鎌を手にし、その鋭い目つきと、頭の触覚から、ローズカマキリが変化した姿だという事がすぐに分かった。
「人間に変身できるのか・・・。」
「ほんの一部の魔獣にしか無理なんだけどね。さて、北側は貴方達に任せたわよ!」
毒花は単体ならそれほど強くはなかった。まだ剣を使い慣れていないライトにも、なんとか対処する事が出来たのだが、何といっても数が多い。同時に数匹が攻撃してきた場合はさすがに避けきれず、足や腕に鋭いトゲを刺されてしまい、所々から血がにじむ。
「どこからこんなに湧いてくるんだろう・・・!」
コメットは息を切らしながら、ライトの肩の上に戻ってきた。その瞬間、毒花のトゲの葉が、ライトの肩の上のコメットを狙って振り下ろされた。
コメットは、毒花のトゲの葉を両手で受け止めた。毒花が次の攻撃に移ろうとしている間を狙って手を離し、花の茎に噛みつく。
「こっちは大丈夫!ライトはそっちの2匹をお願い!」
暴れる毒花を強く押さえつけながらコメットは言う。
「ありがとう!」
ライトが剣を構えると、一方の毒花がトゲを飛ばしてきた。今のトゲは毒を含んでいたのだろうか。手の甲に刺さったトゲの周辺が、燃えるように痛む。
しかし、ひるんでいる場合ではない。ライトは、飛びかかってきた毒花に剣を突き刺し、もう一方の毒花の攻撃を剣で防いで、その花びらを切り裂いた。
「そこをどいて!」
ローズカマキリの声が聞こえた。その直後、ライトの目の前ギリギリを、大鎌から発せられた衝撃波が、地面を滑るように飛んでいった。その衝撃波に巻き込まれた毒花が、次々と吹き飛ばされていく。
ギリギリ衝撃波をまぬがれた毒花もいたが、ライトも剣を振り、自分の近くにいた毒花に攻撃を加える。
「これで最後のようね・・・!」
ローズカマキリが、ライトの剣が突き刺さった毒花を押さえつけながら言った。毒花は葉を振り回し、なんとか逃げ出そうとしている。
「あなた達がどこから来たのか知らないけど、この森と魔獣を傷つける存在なのはよく分かったわ。」
ローズカマキリはそう言うと、大鎌を一振りし、毒花にトドメを刺した。
「ギュアアッ!」
毒花が痛々しい叫びをあげると同時に、紫色の花びらとトゲが舞い散った。
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第十六章 新たな魔法
「この花は一体なんだったんだ・・・?」
ライトは、もう動かない毒花を見おろしながら言った。植物のはずなのに自由自在に動き回る・・・。不思議で仕方がない。
「あたしにも分からないわ。最近突然現れ始めて、森の魔獣を襲うんですもの。人間は、この大陸外の植物の種が、魔獣の持つ魔力の影響で変異したものだって、言ってるみたいだけどね。でも、魔獣の持つ魔力は、植物に影響なんて与えないはずなのよ。だから、他に何か大きな原因があると思うわ・・・。」
ローズカマキリも、困ったという表情でそう言った。その直後、ローズカマキリは、ライトの手の甲が毒で腫れているのを見ると、足元に生えていた白い葉っぱを鎌で刈りとった。
「解毒草よ。使いなさい。」
「あ、解毒草ってこんな所にも生えてたんだ〜。」
コメットが解毒草を受け取り、ライトの手の甲に乗せた。不思議と手の甲の痛みが取れていく。それとほぼ同時に、唐突にローズカマキリが言った。
「ところで貴方達は何故、この森に来たの?テントまで張ってた辺り、旅人なのかしら?」
「旅人・・・と言えば旅人なんだが・・・。」
どこから話せばいいのだろう。ライトはとりあえず大雑把に、ブラックドラゴンが人間を消し去ろうとしている事、それを防げるのが魔術師の子孫である自分だけだと言う事を話した。
「へぇ、その首からさげてる白い石、まさかとは思っていたけど、本当に白龍石だったとはね・・・。そしてブラックドラゴンは、死にゆく命を見届け、冥界に連れていく者・・・。なのに、わざわざ人間を滅ぼそうとしている・・・謎ね・・・。」
「僕もそこが引っ掛かってるんだ・・・。ブラックドラゴンは直接手出しはしないはずなのに。でも、ホワイトドラゴン、ツィエーロが言っていたから、間違いないはずだし・・・。」
比較的物知りなコメットにも分からない事。ローズカマキリにもやはり分からない事のようだ。
「とにかく、ブラックドラゴンの住み処は、人間の住む場所から最も遠い場所って言うわよ。果てしなく遠く、そして長い旅になるでしょうね。」
「・・・そうだな。」
ライトは、村を出発してまだ1日も経っていないのに、早々の大きな戦闘で疲れを感じていた。しかし、これはまだ旅の序の口に過ぎないと思うと、なんとも言えない気分になる。
「そう言えば貴方、水属性の魔法しか使えないって言ってたわね。『イバラの呪縛』・・・。草属性の技を1つ教えてあげるわ。」
ローズカマキリはそう言うと、再び緑色の光に包まれたかと思うと、人間の姿から元の虫の姿に戻った。そして、背中に咲いたバラの花を1つだけ取ると、それをライトに手渡した。
「それを持って、練習してみなさい。相手は木でも岩でもなんでもいいの。慣れれば、その花が無くても自由に使えるようになるわよ。」
ローズカマキリは見本として、近くにあった小岩に向かってイバラの呪縛を放つ。緑の光は細く伸びると、イバラに変化した。トゲのついたイバラの茎が小岩に絡まる。
「こんな風にうまく使えれば、相手の動きを封じられるわ。あんまり強い相手には効果無いかもしれないけど・・・。」
ローズカマキリが小岩に向かって手を伸ばすと、イバラは緑の光に戻り、その手に吸い込まれるように消えていった。
「ありがとう。ちゃんと練習しておくよ。」
ライトは言った。受け取ったバラを、つぶさないようにそっとポケットに入れる。
「それじゃ、あれだけ倒したから大丈夫だとは思うけど、あの毒花はどこに潜んでいるか分からないから、油断せずに森を抜けるのよ。」
ローズカマキリはそう言うと、羽を広げて空へと飛び立った。巨大な羽が起こした風で、木の葉がザワザワと音を立てるが、まもなくその音も聞こえなくなった。
「あ、こっちにも解毒草が!これからの事も考えて、採っておいた方がいいよね!」
コメットが、新たな白い葉っぱを地面から引き抜く。とても小さい葉っぱだが、色が目立つおかげか、森を歩いていると、意外とたくさん見つかった。
「5,6・・・7枚か。これだけあれば、ある程度は大丈夫そうだな!」
「そうだね!でも油断はしちゃダメだよ〜。」
「うん。分かってるよ。」
ローズカマキリと別れた後は、再び毒花に遭遇する事もなかった。毒花の襲来で森の外に逃げ出したのか、凶暴な魔獣に出会う事もなく、森の出口にたどり着くまで、さほど時間はかからなかった。
「おぉ〜。中々綺麗な景色だな。」
森を出るとそこは、両側に大きな山がそびえる谷だった。強い風が吹き、狭い空と空の間を、雲が流れていく。山の斜面を流れてくる小さな川が、勢いよく水しぶきをあげていた。
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第十七章 風の渓谷
上空を、鳥のような、翼竜のようでもある何かが飛んでいく。
「あれはスワローワイバーン。僕の知り合いもあの種族なんだけど・・・どこに居るんだろう?」
ライトとコメットは、川辺に沿ってずっと歩いていった。川は途中で2つに分かれ、一方が泉を作っていた。
「この泉の水はおいしいんだよ〜。ちょっと汲んでいこうよ!」
コメットは言った。ライトがカバンの中を見てみると、ビンがちょうど2本あった。ビンが満タンになるまで水を入れ、こぼれないように蓋をしっかりと閉めた。そしてまた出発しようとしたその時だった。
「グアアッ!」
ライトの頭の上すれすれを、スワローワイバーンが飛んでいった。二又の尻尾がライトの肩をかする。スワローワイバーンは一度通り過ぎたが、また戻ってきてライトを睨みつけてきた。刃物のような鋭い歯が口から見え隠れする。ライトを敵視している事は間違いない。
「ライトは疲れてるんだ!あっちいけ!」
コメットが泉の水を操り、水はヘビのようにうねる。コメットが手を上にあげると、水が上空のスワローワイバーン目がけて、生きているかのように迫っていった。
「グルル!?」
スワローワイバーンもこれには焦ったようだ。全身を叩きつけられた勢いで、一度地面に落ちてきたが、またすぐに羽ばたいて、山の向こう側へと消えていった。
「コメット、ありがとう。」
「ううん。無事でよかった!疲れが取れるまで、しばらくは僕に任せておいて。」
コメットは言った。上空を見上げれば、まだたくさんのスワローワイバーンが飛び交っている。いつ、どの個体が襲いかかってくるかも分からない。ライトもコメットも、気を抜かないようにして川沿いの道を歩き続けた。
その数分後の事だった。上空を飛んでいた1匹が、急降下してくるのが見えた。コメットはすぐに身構え、ライトも念のため魔法を唱える準備をした。
「あ、あれは!」
コメットは戦闘態勢を解いた。スワローワイバーンは、激しく羽ばたいて急降下をやめると、地面に降り立った。
「グアッ!」
「キュン!」
挨拶だろうか。スワローワイバーンとコメットは短く鳴くと、次は人間の言葉で言った。
「こっちはライト。僕のパートナーだよ!」
「そうかー。僕はそのホシモモンガの、昔からの知り合いさ!よろしくな!」
スワローワイバーンはライトに向かって言った。コメットが言っていた知り合いは、このスワローワイバーンらしい。
「で、ホシモモンガ。久しぶりに来たけど、何か用か?たまたま通っただけか?」
「僕達、ブラックドラゴンについての手がかりを探しててね・・・。」
「ブラックドラゴンについて?ん〜・・・まぁ、とりあえずこんな所で立ち話もなんだし、ちょっと来てくれよ!」
スワローワイバーンはそう言うと、岩肌の穴の所まで飛んでいった。
「okー!・・・って、ライトは飛べないよ?どうしたらいい?」
穴は上空10メートル程の所にあった。登ろうにも少し高い。
「そうか・・・。よし、僕に乗ってくれ!」
スワローワイバーンはそう言って地面に降りてくると、ライトの目の前でしゃがんだ。
「人間乗せて飛べるの?」
「まぁなんとか頑張ってみるさ!・・・でも出来るかな・・・。」
本人も少し自信なさげなのだが、言われた通りライトは、スワローワイバーンの背中に乗った。スワローワイバーンは全力で羽ばたいて、ライトの乗せたまま宙に浮きあがる。
「おぉ〜!やれば出来るじゃん!」
「なんとか・・・!それじゃ、しっかり掴まっててくれよ!・・・重い・・・。」
ライトを乗せたスワローワイバーンは、なんとか岩肌の穴までたどり着く事が出来た。スワローワイバーンを気遣い、ライトはすぐにその背から降りた。
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第十八章 ワイバーン達の事情
「散らかってて悪いな。さて、ブラックドラゴンの手がかりが何とかって言ってたが・・・結構前だけど、ここの渓谷に来てたぜ?」
「そうなの?何で3年前に会った時に話してくれなかったのさ!」
「だって何も聞いてこなかったじゃないか・・・。」
スワローワイバーンは困ったようにそう言ったあと、話をつづけた。
「ブラックドラゴンは古代の七竜の伝説を、僕らスワローワイバーンの一族に話してくれたよ。僕らは、古代の七竜とは直接関係ないけど、竜族の一員だからな。ただ、それからだよ。一部の群れの連中が人間を襲うようになったのは。」
スワローワイバーンは言った。
「人間に滅ぼされた古代の竜の話を聞いて・・・人間が怖くなってしまったのか?」
「多分そうだろうなー。でも、それって大昔の話じゃん?今この大陸に住んでる人間は別に、無意味に魔獣傷つけたりとかしてないしさ・・・。なんか難しい問題だよなー。」
スワローワイバーンの言う通りだ。しかし、人間が古代の竜を傷つけたのは事実。そして今生きている竜族が、その話を聞いて不安になってしまうのも無理はない。
「なんか悪いな。たいした情報が無くて。とりあえず、この渓谷を越えたら、しばらく荒れ地が広がってる。そこに、リザードマンの一族の地下街があるから、行ってみたらどうだ?あの一族は人間とか昔の伝説に詳しいから、その辺の魔獣よりかはいい情報掴めると思うぜ。
ところで、何のためにブラックドラゴンの情報探してるんだ?」
そう言えば、まだ理由を説明していなかった。ライトは、先ほどローズカマキリに話した内容をそのまま、スワローワイバーンにも話した。
「なるほど、そんなすごい事情が・・・。でもなんかカッコイイな!人類を守るために立ち上がった、伝説の勇者って感じがさ!」
「そうだよね!ライトはカッコイイよ!」
スワローワイバーンとコメットは勝手に盛り上がっている。ライトが自身は、まだかなりの不安を抱えているのだが・・・。
「それじゃ、下に降りようぜ。風の渓谷を抜けるまで、僕も一緒に行くよ。人間を襲う連中も、手出ししにくくなると思うからさ。」
スワローワイバーンは言った。そしてライトを背中に乗せて、岩肌の穴から飛び出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まだ結構距離はあるぞ。でも川沿いを進めば絶対たどり着くからなー。」
スワローワイバーンが、ライトとコメットのちょうど上を、ゆっくりと飛び続ける。
「そろそろ暗くなってきたし、渓谷を抜けたらテント張るか・・・。」
「それもそうだね!ライトも、今日は疲れてるだろうし、ゆっくり休んでね!」
「うん。」
ライトとコメットが話している間、上空では数匹のスワローワイバーンが激しく鳴きたてていた。ライト達を警戒しているのだろうか。しかし、様子を見ているだけで、実際に襲いかかってくる事はなかった。
「僕のガードが効いてるみたいだな!」
スワローワイバーンは少し得意げに言う。
「たまには役に立つことやってくれるじゃん!」
それに対してコメットは、少しからかうように言った。
話しながらも歩き続けると、まっすぐ流れていた川は、ある所で二手に分かれていた。こちらから向かって右側は緑あふれる野原。そして左側は、細い木がぽつぽつと生えているだけの荒れ地。
「それじゃ、ここでお別れだな!リザードマンの地下街の場所は知らないから、頑張って探してくれよー!」
スワローワイバーンはそう言うと、元来た道を引き返していった。風に乗り、空を滑るように飛んでいく。
「またねー!」
コメットは空に向かって手を振った。スワローワイバーンの姿が見えなくなってから、ライトとコメットは荒れ地に向かって歩き始めた。
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第十九章 対立
薄暗くなってきた空を見つめながら、ライトはカバンから折りたたんだテントを取り出し、その場で組み立てる。
「見晴らしがよすぎて危ない気がするけど、この荒れ地じゃあどこ行っても同じだろうしなぁ……。」
ライトはテントに入りながらつぶやいた。ここにはどんな魔獣が生息しているのか、確かめるようと思い、図鑑を取り出した。その時だった。
「助けてくださいニャ!」
図鑑を広げたのとほぼ同時に、テントに黒い何かが飛び込んできた。
「何だ!?」
「ケットシーだ! どうしたの? 何かあったの?」
二歩足で立ったネコの姿をした魔獣、ケットシーは、コメットの問いかけにも答えず、テントの隅で震えている。
何かがあったのは確かだ。ライトはテントから出て、辺りを見回した。
「いたか?」
「悪い。この辺りで見失った。あのネコめ、一体我らの王国に忍び込んで何をする気だったんだ?」
「しかし、なんだか人間っぽい匂いがしないか? 匂いがまぎれて、あのネコがどこに居るのか分からなくなっちまった。」
声が聞こえてくる。薄暗い中、目を凝らしてよく見ると、それは二本足で立ったオオカミ、ワーウルフだった。
「ケットシーもワーウルフも、実在してたのか……。」
物語などでよく聞く獣人達。この大陸には本当にそれが住んでいたのだ。
「お願いします……かくまってくださいニャ……!」
ケットシーは震える声でそう言った。ライトは頷くと、テントの入口を閉め、ケットシーにテントのカバーをかぶせた。
「仕方ない。今日の所は戻ろう。明日から城の警備を強化し、ネコが忍び込んだらとっ捕まえてやればいい。」
ワーウルフ達の声はだんだん遠ざかっていく。完全に声が聞こえなくなった所で、ケットシーはテントのカバーの中から、ゆっくりと出てきた。
「助かったニャー……。突然飛び込んじゃって申し訳ないですニャ。」
ケットシーは頭をさげながらそう言った。
「いったい何があったんだ? 追われてるみたいだったが……。」
ライトが言うと、ケットシーは頭をあげて、話し始めた。
「最近、ワーウルフ一族が、我々ケットシー一族の街に攻めこんで来たんだニャ。だから仕返ししようとして忍び込んだら……」
「見つかったってわけか。」
「そうですニャ。だけど僕達は何も悪いことしてないですニャ! 向こうが突然攻撃してきたんだニャ! それにしても、一緒に忍び込んだ仲間は無事だろうか……。心配だニャ……。」
ケットシーは少し怒ったような口調なのだが、それ以上に、仲間を心配している様子だった。
「とりあえず、一度街に帰ったらどうだ? 仲間も先に帰ってるかもしれないし……。」
「……それもそうだニャ。ありがとうございましたニャー。」
ケットシーはテントから顔を出し、辺りをうかがった。そして、ワーウルフ達が居ない事を確認した後、テントから出ていった。そのあと、もう一度ライト達に頭をさげてから、テントから向かって右側に歩いていった。
その後は何事もなく、静かに夜は更けていった。
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